第25話 デッドゴード

キャシーに料理を教える約束をしたのち。しばらく探索をしていると

≪レベル41 デッドゴード≫

大斧を持った黒いヤギみたいな怪物と遭遇エンカウントした。


「うはー…デッドゴードかぁ…さすがに私も戦わなきゃ不味い相手だね…」


そういって珍しく自分から戦線に出るアリアに少し驚く。普段は経験値阻害を防ぐために静観していたアリアが手伝うのではなく本格的に戦闘に参加することがだ


「アリア。あいつの事知ってるの?」


「え?雄一君は知らないの?」


「流石に何でもは…」


確かに調べれば出てくるだろうが俺にだって知らないダンジョン知識くらいある。

デッドゴードという存在は初耳だ。それをどうやらアリアは知っているらしい


「あいつはあらゆるデバフを無効化しこっちのバフを無効化する

『天魔の威圧フィアウォード』を使ってくる

それだけならいいけどさらにアイツ魔法使ってくるんだよね

斧撃もかなり強いし厄介な相手だよ…よく戦わされたなぁ…」


と組織の暗殺者時代を振り返り遠い目をしているアリア

うん、そんな闇聞きたくなかった!!政府が秘密裏にモンスター飼っていて実験とかしてそうなそんなニュアンスは!!!


「アリアでも苦戦したんだ」


意外というかレベル差で埋めれそうな気がするが

その返しに逆にこっちも意外?と疑問を浮かべるように返答が返ってくる


「そりゃね。見てわかる通り私はデバフとバフがメインだからさ。あーいう相手が天敵なの。レベルがあっても強み殺されちゃ戦いようがないし」


「でもアリアは何度も戦ったんだろ?今回余裕じゃない?」


加勢してくれるなら心強いのだがそれを否定するようにブンブンと思いっきり

アリアは首を左右に振る


「い~~~~~や!!!もうアイツのツラは二度と見たくないって程トラウマなのッッ!!?

マジ強いんだよアイツ!!もうほんと嫌!!!でも戦わなきゃね」


実際かなり嫌な記憶らしい。だけどまあそれでも一緒に戦ってくれるという事に感謝する

そして励ますように俺は


「ま。大丈夫じゃない?今回は一人じゃないし」


アリアを見た後俺は自己をアピールするように大剣を振るって見せて

花道さんを見る。一人ではないと教えるように

そう、ひとりではない。ならば勝算は確実に存在する


「・・・そうだね☆あー…じゃあ、昔のトラウマ払しょくしますか!!!」


≪GAAAAAAAAAAAAAAAAAAGGGGGGGGGGGGGGGRRRRRRッッッ!!!!!!!!》


咆哮を吐きデッドゴードは天地を揺るがすほどの声量で威嚇をする


いや、これは示威行為デモンストレーションだ。強者の余裕の表れ

俺達三人取るに足りないと宣言するように高らかに雄たけびを上げたのだ

咆哮の後大斧に向け息を吹きかけ大斧に炎が灯る。炎のブレスか魔法付与か分からないが手心を一切加える気はないらしい

というか…こいつって…


「この階層ででるレベルじゃなくない…?」


「うん☆大抵出会ったら死ぬ鬼門だよ☆」


…最悪致死を癒す病≪ダメージオブランゲージ》と起死退転を使うことを考慮する

奴が放った暴風のような斧の斬撃に対し俺は同じく暴風である斬風バニッシュを用い相殺。

ガキンッと力強い金属音が響いて俺の方が吹き飛ばされる。

当たり前だ。体格差と重量は俺の方が圧倒的に軽い。

だがそれで分かったことがある


「こいつ…俺と同じタイプだ」


ならば話は早い。バフは一切用いず武器の技量差で埋めていくしかない

斬風バニッシュは防御のみ。下手をすれば相手の炎を激化させる恐れがある


雷旋風魔法ウィアーズケレシス!!」


花道さんの魔法の組み合わせは驚嘆に値し奴はバフ魔法デバフ魔法や状態異常は無効化できるが瞬間的に放たれる魔法は無効化できないようだ

雷撃と風の刃がデッドゴードを襲う。それに対し花道さんへ攻撃するも俺が盾になって攻撃をはじき返す。だが


「っつ…!」


奴自身のバフによって出来た炎の戦斧によるやけどを負ってしまう

先ほどは風を障壁にしていたがガードのさいは何の付与もなく緩和剤がないためにもろに炎を受けてしまった


回復魔法ヒアリー。雄一さん大丈…」


とやけどの回復と共にそう花道さんが言い切る前に


≪GOGGSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSSAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!≫


「え?回復が…え?」


奇怪な嘶きと共に回復魔法が打ち消されてしまった。花道さんは動揺を隠せず俺の回復は中断されてしまう


「あれが…」


俺の言葉を弁明するようにアリアは言った


「そう。天魔の威圧フィアウォード。あらゆる魔法を無力化する『叫び≪ウォークライ≫』しかも状態異常も打ち消すんだから厄介この上ないスキルだね」


「マジ厄介な相手だな…」


しかも回復中の治癒魔法でさえ打ち消す。やはり瞬間的な魔法でしか攻撃は与えられない。詠唱などもってのほかだ。使用すればその間無効化される


だが勝機がないわけではない。


そう、だって

戦法はただ一つ。本当にシンプル極まりない戦法。奴にとっての決定打は…


「回復なしの持久戦。どっちかが倒れるまでやるかアイツが弱ったら逃げるかだな…」


だが後者の選択肢はあり得ない。逃げる?まさか。ありえない。だってそうだ

─魔素の油は骨髄に流れ込み、水のようにはらわたに浸透する。

魔素洞調律シンクロニシティが上昇するのがわかる

─纏う力は俺を真綿のように締めつける帯になる。

だがそれが心地よい。上昇と共に心が充実していく

ああ、本当に溺れてしまいそう。酸素を求めて喘ぐことがこんなに気分がいいなんて

酸欠による快感は麻薬やたばこに似ている。

呼吸音が聞こえる。だが俺のではない

肺に酸素がいきわたらない。だがそれは他人事だ

脳内麻薬が分泌される。俺はここに【生きて】いる

呼吸をしている獣は俺であって俺ではない。

魔素洞調律シンクロニシティ励起

内なる獣が檻を噛んで引きちぎろうと暴れだしている

―そう、俺はいつだって…強敵を求めていた…!!!

そう聞いた瞬間。冷静になる。

俺は今、何を考えていたんだ…?

それは数秒にも満たない刹那だったようで状況はまるで一転していない

呼吸を整える。脳と肺に酸素を行き渡せる。

低下していく魔素洞調律シンクロニシティ。ダメだ。ここで解き放ったら取り返しがつかない。

俺が破滅するのは良い。だがもし解き放てば花道さんやアリアが危険だ

呑まれるな…。相手の力に誘惑されるな…俺は俺でいたい。戦闘狂になんてなりたくない!!冷静になった頭で血が通った脳を回し発案する


「アリアはその素早さでアイツを撹乱して。でも無理はしないでくれ

佳夕さんは俺の後ろで魔法を打ち続けて。アリアには当てないように

俺は佳夕さんを守りつつ攻撃に専念する」


「はい!気を付けます!雄一さんも気を付けて!」

ラジャーとジェスチャーをする花道さん


「大丈夫よ佳夕ちゃん☆絶対当たらないから」

戦いの最中だというのになぜか余計なことを言うアリア


「むー!それはそれでなぜか悔しいですね」

そうやって怒らせる二人は見ていてほほえましいが今は戦闘中だ。

余裕の表れという意味では良いのだが油断は禁物だ


「煽らない煽らない。あと回復魔法は極力使わないこと。あいつに無効化されるなら使うだけ無駄だと思う。もし使うならアイツの隙が出来たら詠唱なしの回復魔法ヒアリーを頼むよ」


「はい!わかりました!」


「ちょっとちょっとぉ~。私の心配はなし~?私も危険なんですけどぉ~~」


不服気にアリアはもっともなことを言うがそんなことわざわざ言わせるのか…?


「何言ってんだアリア。お前プロだろ?信じてる」


言うまでもない信頼の言葉を言った。何度もデッドゴードと戦っているからではない

俺は俺の知っているアリアを信じている。もちろん花道さんも信じている。だからこんな無茶な作戦を立案し信じてくれている二人にこたえたいのだ。


「まったくこのたらしがね~。でも嬉しい。お姉さん頑張っちゃう!!」


そう意気込んでデッドゴードに向かいアリアは特攻する。


呼吸を一拍。怖いのは確か。だが俺には仲間がいる。一人じゃ逃げ出してた

だから


「さあ、行きますか!!」


あるのは恐怖ではなくましてや戦いへの興奮でもない。今俺を突き動かしているのは仲間との絆だ。何も恐れる必要なんてない。死すらも克服できるような心強さで

アリアに続いて俺もデッドゴードの前に立ちはだかった










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