第23話 ランチタイム

「はぁ!!」


剣二斬。振り払い切り伏せる。

酷死剣タナトスをある程度使いこなし数をこなした俺は

着々と技を覚えてきた。

風の魔石もあってか斬鉄嵐ブレイクストームのコストの低い版の斬風バニッシュという技も覚えた。これは連続回転によるものではなく一回転のみの限定技だ

それを見たアリアは感服したように


「んー☆上出来。すっごく強くなってるじゃん☆」

「お世辞どうも。俺はそうは思えないけどね」

「え~?なんでー☆」

「いくら技を覚えてもスキルが乏しすぎる。手数が多くても剣技だけで限界があるよ」

「魔法剣でも~?☆」

「魔法剣でもー」


と口調を棒読みで真似てみる。いや、まだレベル35。展望はあるか。少しマイナスに感じすぎだ。それに引き換え…


雷炎魔法ウィアレージズ!!」


花道さんは合体魔法を一人で会得している天才ナチュラルボーン

雷炎魔法ウィアレージズは炎と雷を融合させた高等魔法で何となく「こんな魔法あるよー」的なことをつぶやいていたら花道さんは秒で使いこなしている…恐ろしい子…。コストが高い代わりにとてつもない威力を誇る魔法でありMPが低い魔法使いはとても扱えない魔法だ


「俺に一体何があるってんだろ…」

「いやいや、前に行ったジャン☆君は魔素洞調律シンクロニシティが異様に高いって。それはほとんどのハンターにはない素養でもしかしたらナンバーワンハンターになれるのだって夢じゃないよ☆」

「流石にそれは大げさ…」


と言いかけたがアリアはぴしゃりとはっきり言うタイプでありえないだろうことは言わない人間だ。ならその言葉を素直に受け取っておく


「いや、ありがとうアリア。どこまでいけるかわかんないけど俺は強くなっていつか異世界に行くよ」

「ふふ☆その調子だぞ少年☆正直それって別に夢とかじゃないんだけどねー」

「え…?どういう意味?」

「アレ?女神様から何も聞いてないの?レベル50以上あれば異世界に順応するレベルに行けるって。まあその代わりレベルは1に逆戻りだけどね☆女神の恩恵がなくなっちゃうの」


つまりそれは…


「異世界に行った人間がいるってこと?」

「そそ。ダンジョンは様々な資源があるけど異世界にも手を伸ばす輩がいるわけよ☆

でも残念ながらレベル1になっちゃうし異世界ではダンジョンと違って蘇生魔法が効かないから生還は難しいのさ☆」


人の欲というのは底がないという事が垣間見えた気がする。まあ確かに異世界という別天地に資源を求めるのはおかしくはない…それは別にいいのだが


「・・・キャシー。俺そんなこと聞いてないんですけど」

≪・・・聞かれなかったからよ≫

「訊いたよ!確かに!??異世界ってどんなとこって!!なんではぐらかしたの!??」


怒気を含む声でつい荒げてしまいそれに対しいさめるようにアリアは俺達にフォローを入れて話に割り込む


「そりゃさ、生還者ゼロのとこに行かせたくないじゃん☆ましてやご主人様をさ☆」


・・・それを言われると。キャシーが俺の身を案じてくれていることがわかり

そして俺自身理解度が低く異世界への先走りから勇み足になっていたことを反省する


「そっか…ごめんキャシー。そしてありがとうアリア」

≪いえ、良いのよ別に。アンタが必死こいて異世界に行きたいって知ってるのに言わなかったの。悪かったわ≫


そしてアリアはパンッと手を合わせて場を改めるように


「それよりもさ、戦い詰めでお腹減ったでしょ?ランチターイムにしよ☆」


そう言ってピクニックセットセットをどこからともなく用意した


今回用意してもらったのは大きな重箱型のお手製弁当。ふたを開けてみるとソーセージやベーコンに大きなハンバーグにから揚げにエビフライ。卵焼きにトマトやチーズのサラダを添えて下の箱にはハート形のケチャップをトッピングしたオムライスが大きく存在感を出して鎮座している。どう見てもひとりで食べきれる量ではない。そして水筒には暖かいコンソメスープが入っている。それを見て次に


「実は私も作ってきたんですよ!アリアさんに負けていられません!」


そういって花道さんもテーブルにドンッと弁当箱を置いた

ボリューミーなアリアと違って小さなサイズの弁当箱であるが

ラインナップは充実していて煮物や保温性の水筒に入った味噌汁に山菜の天ぷらに焼き魚といった和風の弁当でメインのおにぎりは梅やカツオと混ぜ込みおにぎりとこちらも豪華だ。


「あらあら、それは良いね☆腕の振るい甲斐があるよ☆」


宣戦布告と受け取りながらも嬉しそうにアリアは笑顔で花道さんの言葉を受け取っている

どうやら花道さんも用意してくれたようでなにも用意してなかった自分が申し訳ない


「いやー…なんか、滅茶苦茶すごいね二人とも…」


感嘆の声と感想しか言えない自分の語彙力の無さを実感する。これに対するお礼できそうにないぞ…


「何言ってんのさ☆雄一君の料理もおいしかったぞ☆」


「ええ!?雄一さんの料理を食べたんですか!??ぐぬぬ…今度私にもごちそうしてください!!!」


「え、うん。と言っても二人みたいにすごいものは作れないけど…」


せいぜいありあわせのものの中でちょっとした工夫をすることで飽きないようにする程度の料理しかできない。元々一人暮らしだったこともあって料理をするというのは逃れられない課題だったからだ。あまり得意とは言えないし人様に振るうほどのものじゃないがそれでもいいというのなら日ごろのお礼を込めて


「花道さんにも作るよ。あまり期待しないでね」


「はい!約束ですよ!!」


約束っていうほど大げさじゃないし作ってほしいならいつでも作れる。

幸いアリアの舌にはあったが花道さんはどうだろうな…


「むー☆私の特権がなくなっちゃうなー。悔しい」


「いや…別に大したものじゃないんだけど…」


よくわからないが俺以外に料理を出すことが不満なのか悔し気に頬を膨らませるアリア。うまい料理というなら料理店の方がおいしいから何も特別じゃないんだけど…


「へへん!アリアさんだけのお料理じゃないんですよ!」


そして対照的に誇らしげな花道さん。いや、だから大したものじゃないって

ちょっとプレッシャーになってきたな…。そう思いつつも


頂きますと言って手を合わせて二人の許可を取って箸で二人の料理をつまんでみる


・・・やばい。滅茶苦茶うまい…!!なんだこれ!?今まで食ったことないレベルでやばいぞ!!

アリアの普段の料理は俺に合わせてものだと改めて実感する

これは…負けた!!貧乏舌の俺でも理解できるほどに舌鼓を打つほどのおいしさだ

まず食べた卵焼きが良い感じに半熟で焼けた部分と焼けていない卵が絡み合ううまさだ!!そして卵焼きが味付けと甘いものに加えオムレツみたいに具材が入っているものまである!??

そして花道さんの煮つけはいい塩梅の塩加減で口に入れた瞬間食欲がわき箸が止まらなくなる勢いになってしまう。大根がいい具合の煮込み加減で煮崩れせずなおかつほろほろとし繊維が柔らかい触感は感動ものだ


「どう☆」

「おいしいですか?」


二人が感想を聞いてくる。これを不味いという生物がいるはずはない。60億人に人間が全ておいしいと感じるレベルで俺なんかにもったいない!!だが悲しいかな

俺はただの凡人。月並みな感想しか言えず


「おいしいです…!!」


それしか言えなかった!!色々言いたいことがあるけど頭より口の中でいっぱいになって言葉にできない!!ていうか俺涙良いっすか!

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