第20話 シンワザデンジュ
「はい、注目ー」
そうあけぬけに水無月アリアは俺たちの意識を向けさせる
「なんだ?」
「何でしょう…?」
「いやーさっきの戦闘見事だったよ。エライエライ。私が介入する必要なかったくらいにさ☆」
そういって俺たちに向けて大げさに拍手をする
「それはありがとうだけど…どうしたの急に?」
「それはね~。さっきも言ったように私が戦いを教えてあげるってコト☆
戦い方自体は良かったんだけどね~。雄一君。君体にガタが来てない?」
「う…」
どうやら俺の必殺技『
「どういうことですか…?」
花道さんは首をかしげる。あまり心配を掛けたくなかったが白状する
「アリアの言う通りだよ。あの技は体に多大な負荷がかかる。正直今のレベルで使う技じゃないんだ。それを二回。多分次は放てないと思う」
「使ったら即座にぶっとばすからね☆」
「それしたら本当に俺が死ぬよ…」
「だから死なせないために使おうとした瞬間に
死にたくないっていうんだったらもう少しリスクの低い技を考えなきゃだね」
「つってもリスクが低くて相手に痛打を与えられる技ってあるかな…?」
そんな都合のいいものあれば使っているのだが…
「あるよ」
「あるの!??」
マジであるらしい。素っ頓狂な声を上げる。どうやら俺が知らないだけで剣術というものはかなり豊富でアリアはそういった技を数多く会得しているらしい
「本当はあの
まさか二回も使うとは思わなかったよ」
また無茶をするとはとさめざめとした顔で頭を押さえて首を振るアリア。申し訳ない
「すんません…」
「ま、だから教えるってワケ。私の我流だけど見て覚えてね。そぅいッ!!」
そんな掛け声をして見せてみた技を俺は注意深く観察する
アリアは直剣を引き抜き俺にも見えるような速度に抑えて。それを見せた
「一の型。
揺れる刀身は残像を描き実体のある剣を叩き込んだ後。ありえないことに
続いて残像となった剣身がさっきと同じ軌道を描いて実体剣と同じように同じ個所へ向かい連撃が放たれた
「え…え?」
あまりに不可解な剣で理屈がわからない。魔法を使ったのか?それともスキル?
そう困惑したのを見越したようにアリアは言う
「ニャハハ☆いいリアクションアリガトー☆これは
まず緩急をつけて実体のない残像の剣を見せて相手の意識を向けさせて
剣で切った瞬間引き戻して残像剣と同じ動作で攻撃を与える技だよ☆」
「滅茶苦茶ムズイじゃないですかー!!!!」
残像はともかく残像に合わせて連撃を放つって難易度高すぎる
というかどういった意図なんだこの剣。残像と合わせるのは何か意味が…?
「今のは分かりやすくしただけで、本当は、こう」
すると次に見せた技は明らかに用途が理解できる内容だった
残像の剣と実体の剣。それを微妙にずらしたタイミングで打ち込むことで残像と実体の攻撃の見分けがつかない。残像の剣がくるのか本当の剣が来るのか俺には判別できない
なるほど。フェイントをかける技か。残像と実体を区別させず相手に確実に攻撃を与える剣技
というかコレ…どうみても…
「対人用。だよねこの技…?」
「ニャハハー☆でも結構モンスターにも有効なのよね☆警戒心が強い敵に有効だよ。剣に意識が向くからね」
まあその辺は詮索しない形で新しい技。
「と言っても俺は大剣だし使えるかなぁ…?」
「何言ってんの☆適正武器は重さを感じないから関係ナイナイ☆」
そうかなぁ…なんて考えていると
「雄一さん!!私も何か教える事ありませんかッッ!!!」
突然声高に花道さんが割って入る。どうしたんだろう
「いやーごめんごめん☆雄一君独占しちゃって☆」
「そうですよ!年上でも貴女は新入りさんです!!距離感考えてください!!」
とプンプン怒っている。そしてその矛先は俺にも向けられ
「そして雄一さん!!私を呼び捨てにしないくせにアリアさんは呼び捨てってどういうことですか!!!!!」
今までにない怒りっぷりにたじろいでしまう俺。そういや気にしてなかったがアリアの事たしかに敬称呼びしてないな…
「あー、まあアリアは一度敵対した身だし何か敬意を払う必要がないっていうか…」
「ひどーい☆」
とまんざらでもなさそうな反応で花道さんの怒りは激化する
「じゃあ私と戦ったらさんをつけずに呼んでくれますね!!」
「いや…別に佳夕さんと戦う理由は…」
「じゃあどうしたら呼んでくれますか!!!?」
ウーム困った。すでに花道さんは佳夕さんで定着しているし
正直呼び捨ては気恥しい…。そして思わぬ助け舟が来る
「え?ヴィクター君……うんうん……え?そうなの!??」
俺にはヴィクター君が見えないので何を話しているのかわからない
突然のことでチャット機能を使っていないので花道さんの声だけ聞こえる
そしてさっきと打って変わりニコニコと笑顔で花道さんは
「それなら嬉しいです。では今まで通りでお願いします」
怒りは収まったようで何事もなかったかのように嬉々として上機嫌。矛を収めてくれたようだ。何を言ったか気になるのでフェアリー同士聞こえるらしいのでキャシーに尋ねる
『ねえキャシー…あんまりプライバシー詮索は良くないってわかるけどさ…
ヴィクター君は何て言ったの?』
≪えーとね。『アリアの事は何も思っていないから呼び捨てで佳夕の事は特別で苗字から名前で呼んでくれたという段階は近しい間柄だけだ。近いうちに敬称なしで呼んでくれる。今は照れているだけだ』・・・だってさ≫
『ちょっと違うけどまあそうだな…ていうかヴィクター君俺の事嫌いじゃなかったっけ?』
≪嫌いではあると思うけどその反面認めてるわよ?佳夕ちゃんを二度救ってるし恩があるんでしょ≫
意外な評価でかなり驚いた。ヴィクター君は基本俺を花道さんと引き離したいと考えていると思っていたので助けてくれるとは夢にも思わなかった
『なるほど…』
話せるスキルがあったら是非ヴィクター君と語り合いたいものだと思う
そして横でアリアは呟く
「ちなみにさー、ぜーんぶ聞こえてるからねフェアリーの声とチャットは」
不服そうだが律儀に空気を読んでいたアリアはやはり悪い人間には思えない
なので謝る。俺としてもアリアと険悪にはなりたくない
「あー悪い悪い…。悪い気分にさせてごめん」
「良いよ良いよ☆私も雄一君を殺しかけたし何言われても文句は言えないよ
まーそれよりも、マジ?私の事なんも思ってないの?」
ズイズイっと俺に接近してくるアリア。近い!!幸い花道さんは上機嫌にスキップで先へ向かっていたので気づいていないのが救いだ
「いや、そうじゃなくてさ…なんつーかアリアはすごく話しやすいっていうか親しみやすいっていうか…頼りになる御姉さんポジ?みたいな」
よくどういった感情かはわからないが素直にそういう。まだそういった距離感かはまだつかめていない。それほどアリアとの付き合いはまだ日は浅いのだ
「それはそれでなんかフクザツー。でもまあいいや☆お姉ちゃん頑張って雄一君を立派にしてみせるぞー!」
良かったと安どする。なんというかこのパーティー一触即発しそうでなんかこわい。
ヴィクター君のフォローもあって助かったがなんというか同性のハンター欲しいなと素直に思った
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