第11話 フィアウィーゴー ボスバトル!!! 後編

「・・・雄一…さん?生きて…?」

「うん…なんとか」


振り向いて花道さんに向けて一瞥、その後イーヴィルヴァーンに顔を向ける


スキル≪致死を癒す病―ダメージオブランゲージ―≫解禁


メニュー画面にそう表示され俺にスキルが発現したことを理解した



≪心配させんじゃないわよバカー!!!!≫

「痛い痛い!!!さっきまで死んでたこと忘れてない!??」


キャシーが泣きながらポコポコと体当たりしてくる。

弛緩した空気でさっきまでのシリアスはどこへやら

…もう少しそうしていたかったが



『GAAAAAAAAAAGGGGGGG■■■AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!

GAAAAAA■■AAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!』



イーヴィルヴァーンは待ってくれない。バグを交えた嘶きは天を衝く勢いだ。


「待たせたな。・・・イーヴィルヴァーン。お前も開放してやる」


腰を落とし足を後ろに伸ばし前へ屈む。さながら武士の抜刀の構えで奴へ向けて

一陣の風が吹いた。瞬刻、イーヴィルヴァーンの背後に雄一がいて同時に斬撃の嵐が縦横無尽に吹き荒れた。刹那の風は鎌鼬のように過ぎ去り切り裂く


『GAAGGGGGGGGGGGGGG!???』

「驚いたか?俺も驚いてる」

「雄一さん!さっきのは…」


剣撃により遠方まで離れてしまった花道さんに向けて俺は説明した


「どうやらスキルが発現したらしいんだ。≪致死を癒す病―ダメージオブランゲージ―≫。俺のHPが少ないほど相手にダメージを与えられるスキルで相手の体力との差が開くほどにダメージも増大するって書いてある。さらにスペックも同様に上昇するらしい」


そして俺のHPは0。先ほどの起死回生のまま変わっておらず俺の死の代替となってくれたHPの状態だ。

そしてイーヴィルヴァーンのスペックは恐らく


「お前の全ステータスは∞。レベルも同じだ。普通なら勝ち目はない。だが」


その無限に全く引けを取ることなく。いいやその無限を凌駕している挙措で再び視認不可の速度で雄一はまた攻撃を繰り出す


『GAAAAAA・・・・・・・・AAAAAAAAAGGGAGGAGッッッ!!!!!!』

「0と∞。お前のHPと俺のHPは無限の差があり更にその無限の開きがある故に俺の無限は相乗されている!!!!」


いわゆる∞^2というやつか。誰も想像できないスペックが俺の中で息づき呼吸している。

その呼吸が全身に廻り狂奔し励起している。

だが相乗しているところで無限は無限。

削り切ることはできないハズ。そして俺は不意に口角を吊り上げて


「普通ならお前を倒し切ることは不可能。だがな…。無限の攻撃力に無限の速度を乗せて無限に殺しつくしたらお前は耐えられるか…?」


四方八方に自身を展開しダンジョン内の壁と天井、足場という足場を埋め尽くし

イーヴィルヴァーンに向けて強襲、無限の斬撃が雨のように流星のように左右上下に展開、見えるのは暴風、確認できるのは翻弄されるイーヴィルヴァーンだけだ


つまり脳筋のごり押し戦法で無限を重ね続けて奴のスペックを上回ると単純な話。

無限の放たれる連撃はバグすらも食い尽くしついには奴のHPの底が見え始め…

そして


『G・・・・・・・・・GOG・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


相乗した無限がイーヴィルヴァーンを上回り倒れ伏した

決着。イーヴィルヴァーン討伐はこれにてクリアできた


「ゲーム…クリア。お休み、イーヴィルヴァーン…」



無限という途方もない力を手に行使した。その反動で大剣は耐え切れず瓦解

だがゲームという仮想空間であるため無限などさじ加減一つ。スペックのインフレによっての問題はない。

といっても処理数は膨大で限界寸前ではありそうだ。

そして通常耐え切れないほどのスペックを人間が行使すれば無論ただでは済まないのだが…HP表示が壊れた。どうやら保護機能が作用しそれは限界を迎えたようだ。


「・・・・・・・・・・・・」


俺は確実に死んでいた。脳細胞が焼ききれヘッドギアも廃品確定だ。

つまりゲーム内ではなく現実世界で死んでいたはず…。

スキルによるものか…だがスキルは現実世界に適応しない。

かろうじてゲームと繋がっていたからスキルが適応されたか…考えても埒が開かないので当面の心配を口に出す


「ヘッドギア買い換えないとな…でもあれ高いしなー」

≪安心して。今回はゲームの不備が原因で責任は私たち運営にあるわ。新しいヘッドギアは普及するよう担保してあげる。そしてバグの元であるイーヴィルヴァーンを倒した結果サーバーが復旧したみたい。連絡・・・バグはここ以外検知されていないみたい。・・・今回の件は公表しない!?ふっざけんな!!!!下手すりゃ死人が出てたってのに!!!!≫


キャシーが運営にさきほどの騒動を通告している。だがその対応に憤慨してキャシーは連絡を切る。そんな光景にちょっとうれしくなって


「あー良かった。俺まだこのゲームしてたかったんだよね。サービス終了しなくてよかったぁ~」

≪ばっかじゃないのあんた!??その死人があんたじゃない!!!賠償金要求したっていいくらいよ!!!≫

「そりゃ…俺の為にそんなに怒ってくれるのが嬉しいからかな…?」

≪・・・ッ。あんたねえ…≫


キャシーをからかうのも結構飯のタネになるなと思いながら背後から視線を感じる


「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


花道さんがうつ向いて黙している。どうやらかなり心配させたようだ。

俺の勝手とはいえ勝手に死なれるのは後味悪いよな。と思い謝ろうとしたとき



「・・・・・・・ッ!!雄一さあああああああああんっっ!!!!!!!」



泣きながら花道さんは俺に抱き着いてきた


「ばかばかばかぁ!!!本当に死んじゃったと思ったじゃないですかぁ!!私たちどれだけ心配したと思っているんですかぁ!!!!」


嗚咽を漏らし落涙滂沱しながら俺にしがみついて離れようとしない

そんな花道さんにぽんっと頭を撫でた


「まー助かったから良いじゃん。みんな…ね」

「・・・!!」


本来俺だけの死で済むという一縷の望みですら絶望的だったのに今回本当の奇跡が起こり全員帰還出来た

そしてこんどこそ本当にイーヴィルヴァーンを倒したことがわかり



【鹿目雄一様 花道佳夕様 ボス撃破おめでとうございます。レベル20に達しました】



当初の目的を完遂し俺は安堵した。花道さんをレベル20まで上げるというノルマは無事クリアできたのだ。


・・・これで花道さんとお別れか。そこに寂寥感を感じてしまう

短い間だったが花道さんとパーティーを組めて楽しかった。だがそれも今日で終わり

・・・名残惜しいが俺は告げる


「佳夕さん…これでキミも」

「私決めました!!これからはハンターとして戦います!!もちろん雄一さんと一緒に!!」

「え?」

「だって…!!雄一さん無茶しすぎです!!この先どうなるか分かりませんが私、雄一さんのパーティーでいさせてください!!お願いします」


願ってもないお願い。だが


「良いの?せっかく働き口があるのに…」

「はい!私、この冒険すっごく楽しかったです。もちろんモンスターさんを倒すのは嫌ですがハンターのすばらしさを少しだけ理解できた気がします。

ですので…雄一さんのパーティーとしてこれからも一緒にいてくれますか…?」


そんなの愚問だ


「もちろん、俺からも頼みます。俺も佳夕さんと一緒に冒険したいです」


そういって互いに握手を交わしクエストクリアで現実世界へ戻っていく


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る