第7話 フォーメーション×レベリング×デート!??
「じゃあまずはレベル上げから始めよう」
「おー!」
俺の提案にノリノリで腕を上げる花道さん。かわいい
パーティーとなって互いのステータスの確認をし花道さんのレベルが低いことが分かった。
花道 佳夕 ジョブ ウィザード
レベル1
攻撃力 5
防御力 2
俊敏 9
魔法力 4
魔法攻撃力 3
魔法防御 3
魔法 火魔法 ヴィリア 回復魔法 ヒアリー
スキル 道具作成
リザドラに追いかけられる前に経緯を聞いてみると宝箱を開けて出てきたミミックに驚きパニック状態で逃げたのちフィールドに出てリザドラの群れに遭遇してさらに逃げることになったということらしい。つまりモンスターは一匹も斃しておらずさらに驚くべきことに
「逃げたのは分かったけど…途中の罠をよく潜り抜けてきたね?」
「え?罠があるんですかダンジョンって!!」
とかなり運がいいのか罠に一度も遭遇していないのか逃げた無意識のうちに罠を突破したのかわからないが一度も引っかかることなくフィールドに到着した驚愕の事実が判明。行きずりでトラップを見た花道さんは驚いて俺の後ろに隠れた辺り本当だろう。
迷宮部分の探索の途中でコボルトと遭遇し難なく倒すことで花道さんのレベルが3になりパーティーによる経験値の分散によりレベルが上がったのだ。
「これがレベル分配かぁ…」
「わわ!レベルが上がっちゃいました!!私戦ってないのに申し訳ないですぅ!!」
「まあコボルトはレベル3だからちょっと苦戦するかもだし…」
なにより罠に巻き込んだ謝礼としてこれくらいはしないとね
そしてフィールドに再び到着。俺みたいにレベル15になるまで隈なくダンジョン漁りは花道さんにはお勧めできないので彼女を守る形で戦闘を行う方針にした
俺が敵を倒せば彼女にレベルがいきわたりいずれ一緒に戦ってもらうということもあるがまだ花道さんとの連携がうまくいく試しがないため俺の戦闘を見て動きをある程度理解してもらう時間が必要だ。それだとお荷物でしかないと花道さんは言うが花道さんには別の役割をやってもらう。
それが彼女のスキル『道具作成』だ
フィールドを探索しさきほどのコボルトの棍棒や罠で倒したリザドラの鱗に周囲にあった毒草を俺の大剣にコーティングしてもらい強化付与と毒属性の武器を作ってもらうことを頼んだ。これは魔石やアイテムなどの武器強化とは違い道具を組み合わせるスキルがなければできない強化法だ。毒を塗布するのではなく毒属性の武器に変えるということはスキルなしではできず俺だけなら不可能だ。塗っただけなら数回切っただけで毒が切れるが毒属性の武器に作り替えたのならもはやそれは改造だ。いくら切っても毒が切れることはない。俺が前線に出て後方支援を花道さんに任せるという形でモンスターとエンカウント。戦闘を開始した
コボルト3匹と数ではこちらに分はないがレベル5三体ならば敵ではない
一匹のコボルトの棍棒が振り下ろされ大剣を振りかぶって棍棒を切り落とす
そしてすかさずコボルトに向け斬撃を放つ。といっても擦過傷程度の攻撃に絞り
コボルトも不信がっている。そして後のコボルト二体は笑う。こいつは大剣を使いこなしていない。そう思わせるのが作戦だが
残り二体も一斉に襲い掛かるも
「燃ゆり萌ゆる火種は芽吹き焔へ昇華。燃えよ≪ヴィリア≫!!」
俺の背後から火魔法が放たれコボルトに衝突。だが威力が低すぎて大したダメージには至っていない。ますますコボルトは口端を上げる。そして同じように俺は大剣にて二体に対し大したダメージにならない攻撃を与える
何でこんなことをしているかは、じきに分かる。
随分と見縊られたものだ。そう言わんとする表情でコボルト三体は互いに顔を見合わせ一斉に攻撃を仕掛けた。振り下ろされる棍棒。だが攻撃が当たる前に
「「「GA!AAAAAAGG!??」」」
体が硬直し口から泡を吐く。先ほども言ったがこの大剣は毒属性を持っている
さっきの大したダメージにならない攻撃を仕掛けたのもそれだ。
相手を油断させるためにあえて不器用に剣を振り回し毒が回るまで待っていたのだ
俺とコボルトには大きなレベル差がある。こいつらを倒すのに毒などいらないし
たった一薙ぎで屠れるほどの攻撃力を持っている。ならなぜ?
それは毒属性の武器はどの程度効くかの検証である。レベル5ならば毒の巡りに一分もかからない。一匹目に比べ後から攻撃した二体との時間差も僅差に近い。
そしてそれだけではない。毒を付与させることで動きを止め、逃げられなくするためだ。その理由は、花道さんにとどめを刺させるためのおぜん立て。彼女には申し訳ないが自分の手でレベルアップをしてもらわないとこの先難航してしまう。モンスターといえどゲームと言えど命を奪う行為に抵抗があるはずだ。自分自身の手での殺害は
その抵抗をなくすための通過儀礼。動けなくなったコボルトを前に花道さんは立って固唾を飲む。そして
「・・・ごめんなさい」
最大威力の火魔法を無抵抗のコボルトへ振り下ろし、彼女は自力でレベルを上げた
「無理を強いてごめんよ花道さん。この先何度も経験することだから」
「いえ…ありがとうございます。私、自分の手でモンスターを倒せました」
その表情に感慨はなく手は震えていた。そしてタイムアップのコールがなり
三時間が経過したことを知る
ログアウトの時間、現実世界に戻る前に花道さんは言う
「もしよければ…リアルで会いませんか?」
その問いかけに動揺する前に、無情にも意識は現実世界へ上昇していった
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いつになく、いや人生においてこれほど恐怖を感じたのはかつてないだろう
ログアウト後チャットで待ち合わせ場所と時間を花道さんは指定してくれて
おしゃれとは無縁であるがいつもより上質な服を選び指定された場所シンシンジュクへ向かった
女の子と待ち合わせ。リアルボッチの俺には生涯ありえないだろうと思っていたイベントが今起ころうとしている…!!
シンシンジュク。人々が行き交う差点を眺めながら待ち合わせの30分前に彼女に会う場所で待っていた。
なぜこんな早い時間かというと部屋で待っているとそわそわして落ち着かない&長めに待つことで落ち着きを取り戻す時間が欲しかったからだ。
落ち着け…これはデートとかそういうのではない…。単純に顔合わせと連携の為のトレーニングだ。だってそうだ。デートなんて俺にはありえない
でもやっぱデートだったら良いな!なんて物思いにふけっていると。
「お待たせしました!友達と会うの初めてだったので着ていく服に時間がかかってしまいました」
「―――――――――――」
「あの…どうかされました?もしかしてお待たせしたことを怒っている…とか?」
「あ…ああ、いや違うよ…」
言えない。あまりにも可愛すぎて息をのんでしまった。なんてこと恥ずかしすぎて言えない。
男友達すらいない俺に女性耐性なんてものは皆無だ。
そんな俺がこんなきれいな子とお出かけに行くなんて夢だと疑わずにはいられない。というかゲーム内と同じ容姿なのは知っていたがじかに見ると動悸が収まらない。
あまりに不釣り合い。俺なんかと花道さんが一緒に買い物とか月とすっぽんなんて例えが生ぬるい。
すっぽんは高級だし俺にそれは当てはまらないし花道さんは月よりきれいだ。
「それじゃ行こっか。俺も買いたいものあったし」
どもらないように喋る。実は買いたいものとかは特にはないが一応言っておく。
花道さんに失礼がないように
「はい!私誰かとお出かけするの初めてで、緊張しますね…。」
照れるように顔を背けもみあげの髪に触れる花道さんかわいい
そして誰よりも緊張しているのは多分俺!!!!!!!!
と取り乱さず平静を装いながら
「いやー俺も初めてなんだよね。だからどこ行けばいいかわかんないんだよね
どこ行きたいの花道さん」
できれば目的地がない俺の行きたいところとか指名しないでほしいなと思っていると
花道さんは不服そうな顔で同じく顔を背けながら
「あのー・・・」
「?」
「せっかくパーティーの仲間になったのですから、苗字ではなく名前で呼んでほしいです・・・」
「え!??」
素っ頓狂な声を上げてしまう。いやいやそれはハードルが高すぎでは…
「いや…それは…」
「私は雄一君と呼ぶので佳夕ちゃんと呼んでほしいです。お友達なのですから」
何・・・だと・・・!?花道さんは俺の事友達と思っていてくれたのか!??俺の一方的な妄想とかではなく!??
でもそれとこれとは違う…女性の下の名前で呼ぶのはその…恋人とかそういう関係が呼ぶ名称だ。だからここはびしっと言っておく必要がある。
「いや!よくない!!なんかそれは色々まずい!!なので花道さんと呼ぶこと続行!!花道さんも鹿目さんと呼ぶように」
「えぇ!!そんなぁ!いえ…やはり譲れません。雄一君とお呼びするので佳夕ちゃんと呼んでください!!!」
「俺のぼっち遍歴をなめないで頂きたい!!俺は誰も名前で呼んだことが無いんです!!なので花道さんと呼びます!!」
「私だって誰かの名前を呼んだことはありません!!ですので名前で呼ばせてください!!いえ!呼びます!!!!」
「花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!花道さん!!!!」
「雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!雄一君!!!!」
互いに譲り合わず名前を連呼し叫び疲れて俺と花道さんはぜーはーぜーはー息切れしてしまう。そんな感じで人生初の女の子とのお出かけが始まったのだ
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