第6話 ボッチザブレイク(メンバーカクトク)
「た、助けていただきありがとうございます…」
「いえいえ、ハンターは競争率が高いですが助け合いも大事だと思います」
「まさかモンスターの群れに遭遇するとは夢にも思わず驚きました
ここってまだ初心者の仮想ダンジョンですよね?」
「そうそう、でもそれほど本当のダンジョンは過酷ってことを教えてくれる教訓だね」
「それもそうですね。ハハハハハハ」
「そうですよ。ハハハハハハハハ」
そんな和気藹々と。ダンジョンの入り口であるリスポーン地点に強制的に移動させられたのだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ち、沈黙が痛い…
フィクションなら追い付いたのち丸岩を大剣で一刀両断し二人でモンスターを迎撃したのだろう
だがそんなうまいことはなく現実は助けに入った瞬間モンスターの雪崩と丸岩に潰されて最初の場所に戻ったのだった
つまりこの助けてくれたというのは完全な皮肉である。
「・・・すみません」
素に戻り頭を下げる俺
「いえいえ!私と同じ初心者ならだれでもある失敗ですよ…た、多分…」
目をそらしながら告げるフォローが辛い…!
まあそうだよね。数あるハンターと言えどもMMOゲーム内で大岩で見知らぬ人を潰したりなんて経験あるはずないよね!!
「いや本当にすみません!罠の直線状に貴女がいるとはつゆ知らず!!」
「済んだことはもういいですよ。お気になさらず、貴方は私を助けようとしてくれた。それでいいと思います」
・・・天使かな?この子。俺だったらふざけんな!って切れているが寛大。女の子って優しさで出来ているんだなぁ…汚物を見る目で俺を見るどこかのフェアリーとは大違いだ
≪なんで私を見てうなずくのですか…?≫
「べ、別にィ…」
まあ自ら死にに行くバカである俺の反応ゆえにだろう。そうなれば普通あんな態度をしてしまうだろうけどな!!
「あ、貴方もフェアリーを連れているんですか?私も格好いいフェアリーがいるんですよ。やはり初心者には妖精が付くんですね」
「え?俺の妖精が見えるの?」
「いえ、私以外の誰かと話しているそぶりを見たので…確かフェアリーはその個人のプレイヤーにしか見えませんですよね?」
そう、アドバイザーであるフェアリーはゲームをプレイしているプレイヤーにしか認識できず他の人のフェアリーを見ることはできない。これは確か他のが見えると自身のと混同することを回避するためだったか。ハンターは基本パーティーで戦うので互いのフェアリーの誤認が連携に亀裂を走らせるので見えない仕様になっているらしい。そしてMMOでのフェアリーは実はダンジョンでも運用可能で慣れない間は重宝されていると聞く。だがフェアリーの指示に気を取られリーダーの言葉が聞こえなかったりなどの弊害もあるのでパーティーには不向きとされている。のでダンジョンでフェアリーを使役している物好きは少なく大半は初心者ダンジョンでお別れをし中級からはフェアリーなしで仲間と行動する方が建設的だ。
「そうそう。パーティーだと邪魔になるからね」
≪ふーんだ。どーせ邪魔者ですよ≫
「あ、そういうつもりじゃ…ごめんごめん」
「ふふ…楽しそうですね」
楽しそうなのは良いがハンターとしてはダメな行動のひとつ。
物好きがフェアリーを手放さない理由として子離れというか愛着がわきすぎてフェアリー離れできないことがある。
AIが発達しすぎた為にフェアリーをあたかも相棒と認識してしまい手放すことを放棄する人も存在する。
普通ならただのAIだろ?で切り捨てられるがフェアリーと相性が良すぎた場合放棄をためらい実力があるのにフェアリーの為にパーティーを作らずに唯一の相棒としてフェアリーを使う人もいる。
これはダンジョン攻略の不安要素となったためにフェアリー廃止をゲーム関係者は思案したが一部の反発がすごかったために却下されたと一昔前にそんなことがあったらしい。といっても一部にすぎず大部分は切り捨てておりフェアリーを使役する上級ハンターは一種の風物詩として語り草や飯のタネとしてネットを騒がせる程度に収まっていて不安は杞憂に終わったという結論だ。
「それより自己紹介がまだだったね。俺は鹿目雄一。貴女は?」
「わわっ、私も忘れていました。花道佳夕(はなみち かゆ)っていいます。フェアリーは男性型の『ヴィクター』くんです」
見えないのだから紹介しなくてもいいと思ったが俺も
「俺のフェアリーは女性型の『キャシー』っていうんだ」
「わあ、素敵なお名前。よろしくねキャシーちゃん!」
と屈託ない笑顔で見えないキャシーに向けて挨拶すると照れたように顔を背けながら
≪い…良い子じゃない≫
と頬を赤らめていた。
「良い子だってさ花道さん」
「わあ、嬉しいです!」
≪伝えなくていいわよ!!≫
嬉しさを表現したように易しく手を合わせる花道さんに俺に対しビシィ!!と力強く突っ込むキャシー。面白いなこの構図
「でも残念、ヴィクターは鹿目くんを警戒しているみたい…」
伏目がちに残念そうなリアクションをしている花道さん。まあヤローには警戒しておくのは正解だな。ヴィクターの反応は正しい。女性ハンターをナンパするのはザルだ。
「良いと思うよ。男に警戒はしておいた方がいい」
「鹿目さんはそんな人には見えないんですけどね…あ、そうだ。鹿目さん!一緒にパーティー組みません?私一人だったので攻略が難しくて…」
・・・一人?・・・俺と…同じ(ボッチ)っっ!!!!!??
「是非っっっ!!!!」
脊髄反射で花道さんの両手を握ってその妙案を快諾する。
「キャッ!??」
「いやぁもうね!!!!!!会った時からもう友達(パーティー)かなって俺思っちゃったんだよね!!!!!!!!!俺たち運命共同体(パーティー)だよね!!!!!俺たちもうぼっち(ソロ)じゃないよね!!!!!!!!!!」
「え?え?え?」
もう自分でも何言ってるかわけわかんないくらいハイテンションで初めての友達(パーティー)に感極まってしまう俺。困惑している花道さんをよそに手をブンブン振り回して歓喜に震えている
やった…ボッチ卒業がハンター前初日にあるなんて…。ここから俺の冒険がやっと…
≪離れなさいよヘンタイ≫
キャシーが俺の頬目掛けて突進。強めのビンタを喰らって花道さんから引きはがされてしまう。というかそのおかげで冷静になって人生初めての女子の手を俺自らが握っている事実を認識しやべーことをしていると自覚し平謝りしまくった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます