第27話 型から取り出す
「取り出しやすくなるようにレジンクリーナーを塗っておこうか」
そう言って藤咲さんが新たに液体の入った容器を取り出して、型に流し込む。綿棒を使って型に染みこませると、僕達の手元に返してくれた。
「じゃあ、裏から型を押して取り出してみて」
僕はドキドキしながら、裏から型を力強く押した。一体どんな風になったんだろう。
「……!わあー!すごーい!」
僕はポンっと飛び出てきた球を見て歓声をあげた。
海がガラス球の中に閉じ込められてるみたいな……きれいな作品に仕上がっていたのだ。斜めに配置したヒトデも良い味を出している。
あのドロッとした液体だったレジン液が、独特の固さをまとった物質に変わるなんて不思議だ。本当に魔法みたい!
「うわー!すげえー!嘘だろ?こんなになるのか!」
隣で白金君の弾けた声が聞こえる。
「何?どんなふうになった?」
僕は慌てて白金君の手元を覗き込む。
「わあー!すごくいいじゃない!」
あまりのきれいさに僕は目を輝かせた。夏の青空を思わせる、淡い水色の中にひまわりが浮かぶ。
白金君はガラス球の中に夏を閉じ込めたように思えた。絶妙な位置に浮かぶひまわりがまた見事だった。
「うんうん。2人とも素敵な作品に仕上がってるね!」
藤咲さんが嬉しそうに手を叩く。
「2人ともよくここまで頑張ったね!仕上げは私に任せて。ネックレスの金具を取り付けるのってちょっと難しいから」
そう言って可愛らしいガッツポーズをしてみせた。
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