第24話 思い出話
「じゃあひとつ質問。今、おばあちゃんに素敵な風景を見せたい!と思った時、白金くんはどんな風景が良いと思う?」
白金君はうーんとうなりながら藤咲さんの質問に答える。
「やっぱりおばあちゃんの家の近くの風景かな……。畑があって、自然豊かで。確かひまわりも育ててたっけ……。都会の病院に来て景色が変わって寂しいって言ってたし」
「なるほどね。そうしたら……あれとそれと、これかな?」
藤咲さんは作業台の奥に置いてあった戸棚からいくつかチューブを取り出してきた。
「UVレジン液にも色んな種類があるんだけど……。今回はこれを使おうかな」
「『メモリーレジン液』?」
僕と白金君はパッケージに書かれた商品名を読み上げて、首を傾げた。そんな僕達を藤咲さんが楽しそうに眺める。
「私のお店にしかないレジン液なんだけど……どんな不思議な力はあるかは今はまだ秘密。白金君のおばあちゃんが喜んでくれそうなパーツを選んでいこっか!」
次に藤咲さんが取り出したのは細長く、平べったいプラスチックケースに入った小さなパーツ達だった。どれも小指の第一関節ぐらいの大きさしかないぐらいに小さい。指でつまむのも大変そうだ。
「すごい小さいねー!指でつまむのも大変そう」
僕は顔を近づけてパーツを見る。丸、三角に立方体……花に動物といった様々な形、色をした小さなパーツが正方形の仕切りの中に規則正しく収まっていた。
「それじゃあ白金君、おばあちゃんの家の近くにある風景っぽいものをひとつ選んでみて」
白金君は迷うことなくひまわりのパーツを指さした。
「水上君は何でも。自分の好きなものを選んで」
僕は小くて可愛らしいヒトデのパーツを指さす。こんなに小さくても本物みたいなんだよな。
藤咲さんはプラスチックケースに入れてあったピンセットで器用に小さなシリコン製の器の中にとりわけてくれた。
「次はレジン液の色だけど……白金君の話を聞く限り、空の色をイメージした水色がいいかなと思うんだ」
「ちょうど俺も水色がいいと思ってたんだ。それでよろしく!」
「水上君は何色がいい?」
僕は少し考えた後で「ちょっと濃い青色」と答える。海をイメージしたアクセサリーにしようと思ったんだ。
「レジン液は透明だから、このレジン専用の着色料で色を付けていくよ」
そう言うと藤咲さんはレジン液を別のシリコン製のパレットに出した。ぱれっとには水差しの口みたいなものがついている。
水のりのような、ドロッとした透明な液体が流れ出る。そこに別の容器を開けて水色の色をした液体を少量垂らした。
「着色料は良く伸ばして、色を出し過ぎないようにね。固まりにくくなっちゃうから。はい、続き。白金君がやってね」
「う……うん」
白金君は強張った顔をしながら藤咲さんからパレットと細長いプラスチック製の細長い棒を受け取る。ぎこちないながらもレジン液と着色料を混ぜ始めた。
僕も藤咲さんがやっていたように青色の着色料を垂らしてレジン液を混ぜ始めた。混ぜながらレジン液の感触を確かめる。なるほど……水のりとは違った粘りけを持った液体だ。
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