思い出が見えるレジンネックレス
第19話 隣のクラスの人気者
月曜日。いつもだったら教室に
「藤咲さんのお店、おしゃれだったよね!」
「うん!ヘアゴムとか、マスコットとか色々買っちゃった」
「私、今日そのヘアゴムしてきた!」
楽しそうなクラスメイトの話を聞きながら僕は羨ましく思った。
僕だって土曜日、お店に行きたかったさ……。塾の特別講習があって行けなかったんだ!巧も野球クラブの練習で参加しなかった。
楽しそうな皆の笑顔を見て、一人で
「お……おはよう。水上君」
「あ。おはよう!木村さん!」
今日も藤咲さんと作ったヘアゴムでポニーテールにしている。気にいるのも良く分かる。木村さんにとっても似合っているから。
他の子達とも楽しそうに会話できるようになったみたいで良かった。
「そういえば昨日、木村さんは行ったんだよね?『ウィステリアショップ』」
「えっと……うん。行ったよ」
「いいな~。僕塾で行けなかったんだよね。何か新しい物作った?」
「……ううん。人数が多かったから、えっと……お店を見て回るぐらいだったんだけどね……」
木村さんが声のトーンを落とす。
「何かあったの?もしかして……ノアがなんかした?」
「あの……えっと、ノアちゃんはいなくって……」
「ノアがいない?珍しいね」
「隣のクラスの……」
木村さんが言いかけた時だった。
「藤咲……真歩さん?はいるかな?」
聞きなれない声が藤咲さんを呼ぶ。クラスのみんなが一斉に教室の出入口に注目する。
「あー!
「おはよう!昨日は楽しかったね!白金君!」
「昨日は突然お店に来てびっくりしたよー」
女子達のテンションが一気に上がるのが分かった。僕は目が飛び出すんじゃないかってぐらい目を開けた。
あれは……カッコいいことで有名な
学校内の人間関係に
ど……どどどうしてそんなすごい人が藤咲さんを呼ぶの?平静を装いながらも僕の心は穏やかではなかった。
「少し話したいことがあって……」
そう言って白金君は周りのクラスメイトの女の子たちを見渡す。察した藤咲さんが席を立った。
「廊下で話す?」
2人が廊下に出て行くのを教室の僕を含め、みんなが見守る。
「いいなー!藤咲さんもう白金君と仲良くなったんだ!」
「なんだかあの2人お似合いじゃない?」
本人不在の恋愛話が盛り上がりを見せると共に僕の心もざわめきはじめた。
「えっと……昨日ね、突然お店に……白金君が来たの」
木村さんが先ほど言いかけていたことを慌てて言葉にする。
「なんで?突然、隣のクラスなのに……?」
「なんでって……。あんなおしゃれなお家を見かけたら……気になる、と思うよ」
木村さんが困った表情を浮かべながら当然のことを言う。理由も何もない。
藤咲さんのハンドメイドショップが目に入って足を踏み入れただけだ。
「そうだよね。あははは……」
だとしてもだ。藤咲さんと2人きりで話す必要があるだろうか?お店の感想だとしたら人前で話してもいいはずなのに……。
気になる。
藤咲さんの机の上に乗っていたランドセルにはノアが不機嫌そうにぶら下がっている。そしてその隣には僕が作ったヘアゴムが結びつけてあるのが見えた。
僕と目が合うと、ノアは不機嫌そうに廊下の方角を
「僕が行けって?全く……人使いが荒いなー……」
木村さんもノアと僕のやり取りを察して、困った笑みを浮かべた。
直接二人の間に割って入るのも感じが悪い。かと言って「何話してるの?」と気軽に入れる雰囲気でもなさそうだ。
教室の後方のドア近くで会話している2人を、僕は教室の前方のドアから様子を伺っていると……。腕にふわふわした何かが当たるのを感じた。
「ひよこ……!」
ランドセルに付けていたひよこが僕の二の腕の後ろ辺りにタックルしていたのだ。僕がランドセルを下ろすと、ひよこは短い羽を懸命に動かし始めた。
「もしかして……話、聞いてきてくれるの?」
小声で問いかけるとひよこは体全体で頷いた。
すごい!まさかひよこが情報収集できる有能な奴だとは思わなかった。僕は心の中でひよこに感謝しながらランドセルから取り外してやる。
間もなく朝の会が始まる頃なので廊下に人通りは少ない。僕はそっとひよこを廊下に放した。
ひよこは器用にその丸い体を生かして廊下を転がる。その姿が何だか面白くて、くすくす一人で笑った。
すぐに2人の近くの柱に隠れると顔を上げ、2人の会話を聞いているようだ。
いいぞ!ひよこ。その調子で2人が何を話しているのか探るんだ!
僕が心の中で盛り上がっている時だった。
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