第17話 サプライズプレゼント

「藤咲、ありがとな。楽しかった!」

「私も。……声、掛けてくれてありがとう。お邪魔……しました」

「楽しんでもらえて良かった。また遊びに来てね」


 僕は何も思いつかないまま玄関口まで来てしまった。


「水上君も。またね」


 藤咲さんに微笑まれて焦ってしまう。


「う……うん。また今度!」

「とっとと帰れー!」


 ノアが藤咲さんの肩の上で両手を挙げてちっとも怖くない威嚇いかくをする。

 巧と木村さんが先に外に出て、アーチ形の門に向かうのを見た。後ろ髪を引かれながらも僕もそちらに向かおうとした時だ。

 ランドセルのひよこが僕の左腕の後ろにタックルしてきた。何事かとひよこの方に視線を向けると……ランドセルにくくりつけておいた黒猫のヘアゴムが目に入る。

 そうか!ありがとうを伝えるのに、これがあった!

 足を方向転換し、僕は藤咲さんと向かい合う。


「どうしたの?水上君?」


 玄関口のドアを押さえて、僕達を見送っていた藤咲さんが瞬きをする。


「これ。よかったら藤咲さんにあげるよ」


 そう言って僕が作った黒猫のヘアゴムを渡した。


「え?」


 どんな時でも落ち着いている藤咲さんの目がまん丸になる。


ありがとう」


 僕の言いたいことが伝わったのだろうか。ふんわりと微笑んでヘアゴムを受け取ってくれた。


「……うん。ありがとう」

「こんのひよこ野郎!帰れーっ!帰れ帰れ帰れーっ!」


 思っていた通り。ノアの怒りが爆発する。僕を蹴り飛ばしてこなかったのは多分、ノアをモデルにしたヘアゴムをプレゼントしたからだろう。


「優斗―!早くしろよー!」

「今行くー!」


 僕は藤咲さんに背を向けると巧達の元に駆け寄る。

 まだ膝には鈍い痛みが残っていたけれど、不思議と足取りは軽かった。

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