第15話 本当の笑顔

「えっと……プラバンなんて初めてやったけど……楽しいね。藤咲さん、こんな私を誘ってくれてありがとう。それに水上君も……」


 色付けしたプラバンを乾かすついでに休憩時間をとっていた時。突然木村さんがぺこりと僕らに頭を下げて言った。


「木村さん、なんて言わないで。私は木村さんと話したかったんだから」


 藤咲さんの優しい言葉に木村さんが少しだけ笑ってみせる。その笑顔がどこか寂しそうに見えて僕は思わず疑問を口にした。


「そうだよ。なんでそんなに自分のことを下げて話すの?」


 僕の疑問に木村さんが顔をうつむかせながら答える。


「その……えっと。私ね、自分に自信がなくて……。こんな風に、話すの得意じゃなくて……。前のクラスの子達に、『変なの』とか『つまんない』って言われたんだ……。それと……見た目も変だって言われて。だから、話しかけて嫌われないか不安で……」


 そうか。木村さんは大人しいから一人でいることが多いんじゃなかった。話したくても怖くて話しかけられなかったのだ。

 そんな風に言われたら傷つくよな……。自分に自信がなくなってしまうのも分かる。木村さんと同じように僕もしおれていた時だった。


「嫌われてもいいじゃねえか」


 巧のはっきりとした声が作業場に響く。僕達3人は一斉いっせいに巧のことを見た。


「話しかけなきゃ何も始まんねえ。なんか言われたらそいつらとは駄目だったと思ってまた他の奴に話しかければいいんだよ!でなきゃこうして遊べなかっただろうが!」


 巧の言葉に僕と藤咲さんは顔を見合わせて笑顔を浮かべた。巧にしては良いことを言うじゃないか。親友としてとても誇らしい。僕が言ったわけじゃなのに自然と口元が緩んだ。


「ふんっ。ただデカいだけじゃないんだな!」

「なんだと?チビネコ!」


 ノアの一言に巧が思わず席を立ちあがる。カッコいい雰囲気が一瞬にして消え失せる。


「ふふっ……あははは!」


 そんな巧とノアの様子に木村さんが大笑いしていた。こんな風に笑う木村さん、初めて見た。多分、これが木村さんの本当の笑顔なんだろう。

 その後で照れくさそうに視線を落としてつぶやいた。


「その……皆、ありが……とう」

「そろそろ絵具も乾いてきたころだし。皆の作品のお披露目会しようよ!」


 照れくさいようなくすぐったい雰囲気を打ち破るように藤咲さんが椅子から立ち上がって言った。

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