それぞれの 中学時代の お話です②

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中学時代パート2。時期は3年の9月末くらいです。

クラスは全員違います。


雨田あめだ 絃葉いとは】恵まれた容姿を消費される生活に辟易している。

雫石しずくいし めい】生真面目が祟ってか、しなくてもいい苦労を負っている。




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[絃葉]「(悠心、一緒に登校してくれなくなったな。わたしのこと、嫌いになっちゃったのかな)」


[友人1]「あ、いとちゃんおはよ」


[友人2]「おはよ〜。昨日のマジ楽しかったね〜」


[絃葉]「うん。もう少しでオールだったね」


[友人3]「いやマジで雨田、夜強すぎな。俺途中で何回か寝たわ」


[友人4]「俺ら今日みんなガチで1時間も寝てないのヤバくね? 数学寝たらマキハラキレっかな」


[友人1]「マキハラとか寝てもいいでしょ。耄碌老人よろしく声細っそいジジイだし」


[友人3]「寿命じゃね?」


[友人2]「はは笑、言えてる〜。ま、絃ちゃんいれば許してくれるっしょ。アイツ絃ちゃん贔屓だし〜」


[友人4]「雨田いたら許されるのマジ神な。顔良すぎるって罪だわ」


[友人1]「てかマジで絃ちゃん顔弄ってないの? 改めて見たら顔立ち整いすぎでしょ」


[絃葉]「うん。……でも、メイクはしてるよ」


[友人2]「メイクしてこの顔の私に当てつけかよって〜」


[友人3]「あ。そういや昨日のカラオケ、ストリートに上げたんだけどな、それ東高の先輩が見てて、雨田に声かけたがってんだわ。紹介してもいい?」


[絃葉]「えっ、えっと……」


[友人1]「マジ? 東高ってイケメン多いとこだよね? 絃ちゃんづてで彼氏できるかも。ね、タツト、紹介させたげなよ」


[絃葉]「ご、ごめん。ちょっと待ってほしいかな。わたし会ったことないし、先輩ってちょっと怖いし……」


[友人2]「え〜、大丈夫だって〜。せっかく顔いいんだからさ、遊ぼ? 絃ちゃんウブだし、そういうの好きな人結構多いよ〜」


[友人4]「てか雨田、その感じで処女なのウケるな。中1中2の頃とか、男とか寄って来なかったん?」


[友人1]「絃ちゃん口説こうとしてる? ヨウマヤリチンなんだから絃ちゃんには似合わないって」


[友人4]「うっせ。ワンチャンあるとか思ってねぇから。純粋な興味だよ興味」


[絃葉]「……あんまり憶えてない、かな」


[友人2]「やっぱ当てつけしてる〜? 男のこと道端の雑草みたいな感覚で見てない?」


[友人3]「やっぱガチモンの美人は違うな」


[絃葉]「そっ、そんなんじゃ……」


[友人1]「はいはい、顔整い特有のお悩みごちそうさま。でさ、タツト。絃ちゃんの紹介は?」


[友人3]「おう。まあガラは悪いけど嫌な先輩じゃねぇし、カリンとサナの彼氏作りの手伝いだと思って、頼むわ雨田」


[絃葉]「……やっぱり、ごめん。ちょっと怖いかな」


[友人2]「はあ? ノリ悪〜」


[友人4]「まあ東高ってちょっとガラ悪いからな。いきなり本人に紹介ってのもアレだし、まずはカリンとサナの紹介からいかねぇか?」


[友人1]「は? 何それ。アタシらが絃ちゃんの前座ってこと?」


[友人3]「まあ顔の良さ順でいったらそうなるか。おけ、大将は最後にしとくわ」


[友人2]「はぁ〜? 感じ悪〜」


《チャイムの音》


[友人1]「次何だっけ?」


[友人4]「耄碌マキハラの数学ショーだろ」


[友人3]「サボらん?」


[友人2]「サボろ〜。絃ちゃんもサボるよね?」


[絃葉]「……ごめん、わたしは授業出ようと思ってる」


[友人2]「あっそ、真面目ちゃんだね〜。じゃあ私らは部室棟の屋上ココでサボっとくから、マキハラによろしく〜」


[友人1]「ちゃんと上目遣いで言うんだよ? 多分マキハラいつも通り前屈みになるんじゃね?」


[友人4]「前屈みになったら撮影よろ。教育委員会に言いつけてやっから笑」


[友人3]「路頭に迷うだろ笑、でも直に定年退職か。ならあんまダメージないな笑」


[絃葉]「……うん、分かった」


~~~~~~


[絃葉]「……(チャイム鳴ってたし、急ごう)」


[命]「……絃葉ちゃん?」


[絃葉]「命ちゃん。えっ、なんで職員室前ココにいるの? もう授業始まってるんじゃ……」


[命]「クラスの子に、コレ運んどいてって頼まれたから。職員室に行く用事があったから、ついでだったんだけど……」


[絃葉]「何これ」


[命]「演劇部が使う小道具だよ。小道具ってサイズじゃないかもだけど……あ、あんまり触らないほうがいいかも。壊れやすいって言ってたし……」


[絃葉]「貸して。……重たい。……なんで命ちゃんがこれ運んでるの?」


[命]「えっと……頼まれたから。その子がちょっと用事あるみたいで、私にしか頼めなかったんだって」


[絃葉]「……演劇部の準備室って、部室棟の端だよね。職員室から遠いよ?」


[命]「出る予定には変わりないから。それに、ずいぶん困ってるみたいだったし……」


[絃葉]「演劇部……もしかして、カガワサナちゃん?」


[命]「そうだよ。あっ、絃葉ちゃんのお友達?」


[絃葉]「……だよ」


[命]「……絃葉ちゃん?」


[絃葉]「いいように使われてるだけだよ! 命ちゃん、この前もパシリに使われてたじゃん! 用事。部室棟の屋上でタバコを吸うことが用事!? 人にこんな重たい仕事を押し付けてまでしたいこと!?」


[命]「い、絃葉ちゃん。声が大きいよ……」


[絃葉]「命ちゃん! 嫌だったらきちんと嫌だって言いなよ! わたしとは違って、命ちゃんならきっとそれをハッキリ言えるでしょ!?」


[命]「……絃葉ちゃ──」


[先生]「オイお前ら、口喧嘩か? もう授業始まってる時間……って、雨田と雫石か。珍しい組み合わせだな。雫石はともかく、雨田は最近遅刻率が高いだろ。あんまり印象悪くすると内申点に響くぞ」


[絃葉]「……っすみませんでした」

[命]「すみませんでした……」


[先生]「ん。分かったらそれぞれ授業に出るんだ。あと、悩みがあるなら早めに先生のところに来なさい。受験と悩み事は相性が悪いからな」


[絃葉]「…………はい」


[命]「……絃葉ちゃん」


[絃葉]「……じゃあ、またね、命ちゃん」


[命]「うん……」




──────




【ひとこと】

この頃の2人はまだ、ギリギリ深い仲ではないんですよね。

お互いに呼び方がどこかよそよそしいです。

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