トナカイは 炬燵の熱で 暖を取る

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7年前のお話です。クリスマスまであと数日。


悠心ゆうみ】ちょっとだけ厚底の靴を頼んだ。これでみんなの身長にほんの少しだけ近付けそう。

絃葉いとは】自分の部屋の新しい掛け時計を頼んだ。白と薄ピンクのとびきり可愛いやつ。

めい】前から気になっていた絵本を頼んだ。心優しい人形と荒みきった少年とのハートフルストーリーもの。

小霧さぎり】新作ゲームを頼んだ。その名も新感覚マリモ爆走レースゲーム『マリモカート8』。

八葵やつき】おじいちゃんとお揃いの袢纏はんてんと自転車を悩んだ挙句、前者を頼んだ。子供サイズはなかったので、八葵には少し大きめかも。




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[絃葉]「サンタさんはいます!」


[悠心]「いません。はいこの話終わりな。」


[絃葉]「なんで!?悠心夢なさすぎ!!!」


[悠心]「いるわけないだろ。だってウチ煙突ないし。」


[絃葉]「それは……!まあウチもそうだけど……!」


[八葵]「やあやあおふたりさん。今日も熱い議論を交わしてるね〜。暖取らせてよその熱で。」


[悠心]「うげっ、八葵だ。」


[八葵]「‪”‬うげっ‪”‬って何さ。」


[悠心]「だっておまえ子供だし。視点が。」


[八葵]「悠心?10歳はまだ子供だし、悠心私と同い歳だよね?悠心もまだ10歳の子供なんだけどね???」


[絃葉]「ねぇねぇ、やっちゃんはサンタさんっていると思う?」


[八葵]「‪”‬いると思う‪”‬というか……いるよ。絶対に。」


[絃葉]「ほーら悠心!やっぱりサンタさんいるんじゃん!」


[悠心]「データが少なすぎるだろうが。せめて数十票集めてからものを言え。」


[絃葉]「やっちゃんは‪”‬絶対にいる‪”って言ってるもん。友達の言葉信じないつもりなの?‬」


[悠心]「八葵だからなあ……」


[八葵]「ほう。あくまで信じないつもりなんだね悠心は。……よし。では話してあげよう!門外不出の井雲伝説の一片を!!!」


[悠心]「おまえんの伝説なのかよ。じゃあやっぱりサンタさん親戚なんじゃねーか?」


[絃葉]「待って、長編っぽいしポテチ持ってきてもいい?」


[悠心]「あほ。ここ学校だぞ。学校におやつ持ってくるなんて言語道断だ。」


[八葵]「悠心はそのサイダーしまいな?人のこと言える立場じゃないよ?」


[絃葉]「やっちゃんもその、それ……え?何それ?」


[八葵]「火にかけるだけでできるポップコーンだけど……」


[悠心]「なんで持ってきてプシュー……んだよ。てか早よしまえ。先生にゴクゴク怒られるぞプハー。」


[八葵]「あポン、飲んポンだ!いっけポンないんだ〜ポンポンポンポン!!!」


[絃葉]「うるさ!!!」


[悠心]「おいおまえ、そういえばそのコンロどこから持ってきたんだ?」


[八葵]「隣から。家庭科室近いって便利だね。」


[悠心]「怒られても知らねーからな。」


[小霧]「おいすー。あれー?なんかいい匂いするねー?」


[命]「おじゃましまーす……。」


[悠心]「おー、いい所に来たな。ちょうど面白い話が始まるところだぞ。」


[小霧]「へー。誰が話してくれるんだろうなー?超絶面白い抱腹絶倒小話ー。」


[八葵]「ハードル上げすぎでしょ。サンタさんはいるっていう話なだけで、そんな明確なオチがある訳でもないんだけども……」


[絃葉]「めいちゃん、だったよね?久しぶり!ポテチ食べる?」


[命]「ありがとう絃葉いとはちゃん。いやでも、ええと……いいのかな。先生に怒られちゃいそう……。」


[絃葉]「大丈夫!もし怒られたら悠心が無理やり食べさせたって言っといて!」


[悠心]「おい、私の評判が悪くなるだろうが。ここは間をとって小霧にだな……」


[小霧]「あれー?なんかいわれのない罪を被っている気がするぞー?」


[命]「あはは……」


[八葵]「よし。では話していきましょうか。ええと、順を追って説明すると、やけにサイレンの鳴り響くクリスマスイブの夜に、リビングのガラス戸にいきなりトナカイが突っ込んできて──」


[悠心]「待て待て待て待て。作り話だよな?作り話なんだよな?」


[八葵]「んーやマジだよ。これその時割れたガラスでできた切り傷の痕ね。」


[絃葉]「?傷痕、ある?なくない?」


[八葵]「え、見えない?結構深かったんだけどなあ……」


[小霧]「サイレンってー。そんな治安の悪いクリスマスイブ嫌だなー。」


[八葵]「なんかウチの目の前で車が事故ったらしいんだけど、その時私うたた寝してたんだよね。サンタさんが突っ込んできたのはサイレンが鳴り止んで結構してからだと思う。日付が変わるちょっと手前くらいかな。」


[悠心]「じゃあ少なくとも2回は八葵の家付近で事故が起きてるじゃねーか。大丈夫かその立地。呪われてないか?」


[八葵]「まあ大丈夫でしょ!で、その突っ込んできた勢いですごい量のプレゼントが、ウチの中に舞い込んできた訳さ。それを見てみると、梱包の仕方も箱によって様々で、サンタさんの拘りが感じられたんだよね。」


[絃葉]「へー!すごい!一人ひとりプレゼントの包装まで違うんだ!凝ってるなあ……」


[八葵]「いいでしょ。で、トナカイの後ろにあったソリからイメージ通りのサンタさんが出てきて、『中に入れて』って言ってた気がしたからOKして、割れたガラス戸を開けてあげたのね。」


[命]「ええと、家に入れちゃったの?」


[八葵]「?うん。寒そうだったし、どう見てもサンタさんとトナカイで面白そうだったから。」


[悠心]「おまえその‪”‬面白い‪”‬を行動の基準にするのよくないと思うぞ。いつか絶対怖い目に遭うからな。」


[八葵]「で、確かその時私は、ええと年長だから……5,6歳くらいだったんだけど、そのくらいの歳になると言葉も大体分かるから、サンタさんが話している言葉が、明らかに日本語じゃないことが分かってたのね。」


[小霧]「えー?さっき『中に入れて』って言葉が分かったんじゃないのー?」


[八葵]「そこが不思議ポイント3。」


[絃葉]「‪”‬気がした‪”‬って言ってなかった?」


[八葵]「直感を信じるタイプなので。」


[悠心]「1と2は何だ?」


[八葵]「1はトナカイ。ウチのリビングのガラス戸の先って高めの塀があるから、その塀を壊さない限りはガラス戸に突っ込めないのよ。

。」


[絃葉]「Q.塀は壊れていましたか?」


[八葵]「A.いいえ」


[小霧]「Q.トナカイは空を飛ぶことがありますかー?」


[八葵]「A.たぶんそう・部分的にそう」


[命]「ええと……Q.サンタさんは実在すると思いますか?」


[八葵]「A.はい」


[悠心]「思い浮かべているのは:チーズケーキ」


[八葵]「失敗Fail!」


[小霧]「それゆーみが今食べたいものでしょー?」


[八葵]「アキネイターじゃん。悠心の考えていることしか出力できないなんとも微妙な代物。」


[悠心]「今年のクリスマスケーキはチーズケーキにするかな。」


[絃葉]「いや毎年チーズケーキだよ!?」


[八葵]「なんで絃葉が知ってんのさ。」


[絃葉]「いつも一緒にパーティーとかするからね。」


[小霧]「おー。幼なじみっぽいー。わたしもやっちーとそういうパーティーしたいなー。」


[八葵]「いや毎年ケーキたかりにくるの忘れてないからね?どうせ今年も来るんでしょ。」


[小霧]「ほへー、バレたー。今年はめーちんも一緒に連れていく予定ー。」


[命]「えぇ!?そうなの!?」


[悠心]「おい話通ってないじゃねーか。逸りすぎだろ気持ち。」


[絃葉]「それで話ちょっと戻すけど、謎の2って何?」


[八葵]「プレゼントが光ってたこと。大きいのも小さいのも、どれもピカピカ光ってたんだ。」


[小霧]「夢っぽーい。」


[八葵]「しかも、それぞれ明るさが違うんだよね。大きいからといって強く光ってる訳じゃないし、小さいからって光が弱い訳じゃない。」


[悠心]「おまえのことだ。いちばん光り輝いてるやつをサンタさんにねだったんだろ。」


[八葵]「うん。というかソレが私へのプレゼントだったみたい。」


[絃葉]「ほへ〜……夢だなあ。」


[悠心]「夢だな。」


[小霧]「夢すぎるねー。」


[命]「あはは……」


[八葵]「夢じゃないもん!!!サンタさんいたもん!!!トナカイさんもいたもん!!!寒そうだったから炬燵に入れてあげたもん!!!冷えきったサンタさんには幼いながらもきちんと出迎えてお茶入れてあげたもん!!!」


[悠心]「おお、5,6歳児を真似る10歳児感があるな。」


[絃葉]「悠心、それ多分10歳児から出る感想じゃないよ?」


[小霧]「炬燵すっごい汚れちゃいそうー。」


[八葵]「それが全然汚れてなくてさ!!!多分駆けてたのが空だから、ひづめに土とかの汚れが付かなかったんだと思う!!!」


[悠心]「その声のまま喋るな。」


[絃葉・小霧]「うるさーい。」


[命]「あはは……」


[八葵]「で!!!!!!その後いつの間にか寝ちゃってて!!!!!!気がついたら朝だったんだけど!!!!!!」


[悠心]「なんでギア上げるんだよ!うるさい!うるさすぎる!」


[八葵]「プレゼントだけ残して、サンタさんとトナカイのいた形跡が全部なくなっちゃってたんだよね(超絶ウィスパー美々びびボイス)。」


[悠心]「加減を知らないのかおまえは。0か200那由多飛んで3万しかないのか。」


[八葵]「叫んだらトイレ行きたくなっちゃった!ちょっと行ってきまーす!」


[悠心]「勢いのままに生きてるなあ……」


[絃葉]「……ねぇみんな。あの話、本当だと思う?」


[悠心]「まあ夢だろうな。サンタさんは煙突から入ってくるし。ガラス戸からダイナミック来訪するサンタさんなんて私は知らない。」


[命]「私は本当だと思うな。やっちゃんってああいう話をする時は嘘をつかないから。」


[小霧]「むーん……」


[絃葉]「?どうしたの小霧?」


[小霧]「いやー、なんか思い出せそうなー。」


[???]「邪魔するぞー。八葵、いるかー?」


[悠心]「うぉっ。びっくりした。誰だおまえ。」


[???]「あぁ?年上に向かって‪”‬おまえ‪”‬はねぇだろ。四梅しうめさんと呼べ四梅しうめさんと。」


[小霧]「おー。‪しめじん‪じゃんー。やっちーなら今トイレ行ってるよー?」


[四梅しうめ]「そうか。さておきその‪しめじん‪ってのやめろバカ小霧。こんな艶麗えんれいで気高い名前を不味い菌類みたいな呼び方で汚すな。」


[悠心]「キノコは不味くないぞ。美味いぞ。」


[四梅]「そこは論点じゃねぇよチビガキ。キノコは全部汚ぇし不味いの。」


[悠心]「なんだと?子供舌だな。」


[四梅]「お?喧嘩するか?」


[絃葉]「まあまあ!ええと……小霧、知り合いなの?」


[小霧]「うーん。知り合いかと言われれば知り合いなんじゃないー?」


[四梅]「なんだその言い草は。家斜向かいだろうが。広義では幼なじみだしな。」


[命]「あ、もしかして、やっちゃんのお兄さん……ですか?」


[四梅]「おう。俺こそがやっちゃん……八葵か。八葵だよな?うん、八葵の兄だ。」


[悠心]「全然似てないな。」


[絃葉]「毛の色と目の色はそっくりだね。」


[小霧]「でー?そんな菌類さんが今日は何しにここへ来たのー?」


[四梅]「オイぶっ叩くぞ。……これ、八葵が今朝忘れていった体操着だ。今日昼から体育あるんだろ。」


[小霧]「お、やっさしー。シメジからマイタケに昇格してあげましょー。」


[悠心]「口調はアレだけど優しいなおまえ。」


[四梅]「だから‪”‬おまえ‪”‬ってのやめろチビガキ。そこのバカもいい加減俺のあだ名を大っ嫌いな菌類にすんのをやめろ。」


[小霧]「話は変わりますがマイタケっち、サンタさんは信じますかー?」


[四梅]「あぁ?信じてねぇよ。俺もう中学生だぞ?まあ、八葵はいつまで経っても信じるんだろうが……」


[命]「?どういうことですか?」


[四梅]「いや、いつの話だったかな。俺がクリスマスイブの夜に熱出しちまって、じいちゃんが病院に連れていってくれたんだよ。その時両親は夜勤でいなくて、必然的に八葵が独りで留守番をすることになったんだが……」


[命]「もしかして、それってやっちゃんが5,6歳くらいの年じゃありませんでした?」


[四梅]「そんくらいだと思う。で、病院行こうと家出たら、ウチの塀にトラックが突っ込んでやんの。」


[悠心・絃葉・命]「!?」


[小霧]「あー……あー!思い出したー!ウチの窓からその現場見えてたー!」


[四梅]「幸い怪我人は誰もいなくて、ウチの塀もほぼ無傷だったんだが……そのトラックに載せてたトナカイの剥製と包装された無線のランプシェードが、辺りに散乱してしまってたんだよ。ウチの敷地内にも飛んでいってた。」


[小霧]「その人、サンタさんのコスプレしてたでしょー!!!」


[四梅]「おう。しかも確か北欧出身の人だった。熱で視界はぼやけてたが、そういえばコスプレが随分サマになってたな。」


[命]「じゃあもしかして、光ってたプレゼントってランプシェードのこと……?」


[四梅]「モノを回収するためにウチの庭に入ったサンタ……まあコスプレだが、それに加えてトナカイとプレゼントみてぇなモンもクリスマスイブに見れたんだ。八葵はいつまでも‪”‬サンタはいる‪”‬って信じ続けるんだろうな。」


[悠心]「なあみんな。」


[絃葉・命‪・小霧]「……うん。」


[4人]「八葵/やっちゃん/やっちーには黙っとこう……。」


[絃葉]「あれ?怪我人がいないとは言ってたけど、じゃあやっちゃんの言ってた腕の傷っていうのは一体……?」


[四梅]「腕の傷?どっちの腕だ?」


[絃葉]「左腕の真ん中辺りって言ってました。わたしには見えなかったけど……。その時にできた傷だったのかな?でも怪我人はいないみたいだし……」


[四梅]「左腕っていうと……高台の公園の草むらに突っ込んで棘か枝かで切った傷じゃないか?浅い傷だったけど、それがどうした?」


[絃葉]「いや、その傷、やっちゃんの家の割れたガラスでできた傷じゃないんだなーって思って。やっちゃんの言い分だと、結構深い傷だったらしいし……」


[四梅]「ガラス?まあ怪我に関して全部全部は把握してないが、少なくともウチのガラスが割れたことは今までで一度もないし、それで八葵が怪我をしたことも一度もないぞ。さっき話した事故もそんな大事にはならなかったし。」


[絃葉]「んーと、じゃあやっぱりやっちゃんの見た夢っぽいね。」


[悠心]「だな。夢にしてはなかなか面白かったと思うぞ。」


[四梅]「あっ!わりぃ、俺も授業始まっちゃうからもう帰るわ。じゃあな!」


[命]「さ、さようならー!」


[小霧]「ふーむ。じゃあやっぱり夢っていう結論ってことd──」


[命]「ちょっと待って。……本当に、サンタさんがいたって話にも解釈できないかな。」


[悠心]「詳しく。」


[命]「ええと、四梅さんは、やっちゃんの家の塀に突っ込んだコスプレおじさんのことをやっちゃんがサンタさんだと思い込んでる、と考えてるんだよね。」


[小霧]「だろうねー。」


[命]「多分それがサイレンの原因だと思うんだけど、肝心のやっちゃんはその時うたた寝をしてて。つまりその人をやっちゃんは見ていない、ということになるよね。」


[絃葉]「だね。で、その時の事故でも窓ガラスは割れてなかった。でもやっちゃんは割れたガラスで怪我をした。やっちゃんの言い分は、どこからどこまでが正しいの?‪”‬夢‪”‬ってまとめる方が、簡単に片がつく案件だと思うんだけど……」


[悠心]「そうだ。これ四梅さん視点で考えると、光るプレゼントは回収しそびれたランプシェードで間違いないんだよな。それを確かめれば──」


[八葵]「おーっすただま〜。あれ!?私の体操着だ!忘れたと思ってたのに!」


[命]「さっきやっちゃんのお兄さんが届けてくれたんだよ。」


[八葵]「お〜!しうぃナイス!やっぱり持つべきものは優しいお兄ちゃんだねぇ!」


[絃葉]「ねぇやっちゃん、さっきの話の続きなんだけど、プレゼントって一体何が入ってたの?ランプシェードだったりする?」


[八葵]「ランプシェード?って何ぞ?確かゲームソフトと新しいコントローラーだったはず。」


[絃葉]「え!?ランプシェードじゃないの!?」


[小霧]「流れ変わったな(キリッ」


[八葵]「家族全員でプレイできる5人プレイ用のソフトを貰って、25日をまるまる費やした記憶がありますのでね!あれ?いやでも……」


[悠心]「でもなんだ?」


[八葵]「いや、そういえばサンタさんにゲームソフトとコントローラーは頼まなかったなって。頼んだのマフラーと手袋だったはずなんだけど……ゲームソフトとコントローラーも、欲しかったといえば欲しかったんだけどね?あれ?あ、でも手袋とマフラーも貰ったな。じゃあえーと、その年だけプレゼントが2つあったのか。サンタさん太っ腹〜。」


[絃葉]「プレゼントが2つ……?」


[悠心]「しかも片方は頼んでもないもの……?」


[命]「もしかして……?」


[小霧]「本物のサンタさんからの……?」


[八葵]「えっ、ちょっみんなどうしたの、怖い怖い。めっちゃ固まるじゃん急に。」


[4人]「……サンタさん、」


[八葵]「へっ?」


[4人]「サンタさんは絶対にいます!!!」


[悠心]「サンタ!!!」


[絃葉]「さん!!!」


[命]「は!!!」


[小霧]「絶対に!!!」


[4人]「います!!!!!!」


[八葵]「う、うん。分かってくれたなら嬉しいけど……何その熱量怖い!ていうか絃葉こっち側じゃなかったっけ!?」




──────




[???]「っくしょん!うぅ、今年もよく冷えるのぉ……」


[???]「ブルルル……」


[???]「っほほ、お前さん、今年もよろしくな。」


[???]「ブルルル!!!」


[???]「そうじゃのぉ、今年も事故には気をつけるわい。あの子の顔がぎる度、儂のサンタクロース、いや、それ以前に乗り物を動かす人としての責任を今一度考えさせられるからのぅ。」


[???]「ブルルル。」


[???]「負わせた怪我や壊したモノは完全に治せたものの、まだ儂のことを怖く感じておるじゃろう。あの子への戒めを、儂は忘れることはない。今年も必ずや、安全運転で参ろうな。」


[???]「ブルルルル。」


[???]「なんじゃと?‪”‬またあの子の家の炬燵に入りたい‪”‬……?バカもん。儂はあの子に恐怖を植え付けてしまったんじゃ。お前さんには悪いが、儂が会いにいく資格などないわい。」


[???]「ブル。」


[???]「儂は謝りたいだけだったのに、敷居を跨がせてくれて、丁寧にお茶まで出してくれて……本当にいい子だったわい。ヤツキちゃん、だったかのう。またあの子の元にプレゼントを……む?……ふむ。……おっと!?今年はあの子がリストにいるじゃないか!ふむ!俄然やる気が湧いてきたのぅ!!!」


[???]「ブルン!ブルルルン!!!」


[???]「よぉし行くぞぉ!右よし、左よし!今年を清く生きた子供たち(サンタさん業界独自調べ)に、儂から追加のプレゼントじゃあ!!!今年も絶ッッッ対事故らんように届けてみせるわい!!!」


[???]「ブルルーン!!!」




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【10歳のクリスマス当日の朝……】


[八葵]「サンタさん!袢纏はんてんと自転車ありがとう〜!大切にするね〜!」


[八葵母]「(あら、お父さんったら優しい。自転車までプレゼントしてあげるなんて。)」


[八葵父]「(ほう、母さんは気が利くな。第二希望の自転車まで買ってあげるとは。)」


[八葵祖父]「(八葵がワシとお揃いの袢纏はんてんを着とる……眼福じゃ。自転車もよく似合っとる。)」


[四梅]「(あれ?俺が頼んだのフライパンだけだよな……?なんで圧力鍋までプレゼントにあるんだ?まだ誰にも‪”‬欲しい‪”‬なんて言ってないはずなのに……?)」




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