煩悩は 5人で合わせて 百八つ

──────




近所のお寺から除夜の鐘の音が聞こえてきます。

変わった色味のお鍋を添えて。


悠心ゆうみ】煩悩少なそう。

絃葉いとは】煩悩多そう。

めい】煩悩なさそう。

小霧さぎり】煩悩と遊んでそう。

八葵やつき】煩悩で遊んでそう。




──────




[悠心]「お邪魔しまーす。」


[小霧]「おー、ゆーみいらっしゃーい。寛いでくれて構わないよー。」


[八葵]「私の家なんだけどね?いらっしゃい悠心、あけおめ。」


[悠心]「早い早い。明日だよそれは。」


[命]「あ。雨ちー、秋ちゃん来たみたいだよ。」


[絃葉]「ほんと?……いらっしゃい悠心!あけおめ!ゆったり寛いどいて!」


[悠心]「今どっちもやったんだが?」


[小霧・八葵]「www」


[絃葉]「くっ……先越されちゃった。」


[命]「秋ちゃんいらっしゃい。外寒かったでしょ?テーブルあるお茶飲んで。さっき淹れたばっかりだから、まだ温かいと思うよ。」


[悠心]「ありがとな命。……あ、八葵。これ姉さんからの差し入れ。手作りのサーモンのカルパッチョとワインだってさ。」


[八葵]「え……?手作りのワイン……?」


[悠心]「あ、言い方が悪かったな。手作りなのはカルパッチョだけだ。ワインは市販品。私ら用じゃなくて八葵の家族用な。」


[小霧]「ギルティー。」


[悠心]「なんでだよ。触れてないだろ法に。」


[小霧]「サーモンのカルパッチョなんて美味しそうすぎますー。法で取り締まらきゃ全小霧ちゃんが満足死しちゃいますのでー。」


[悠心]「そっちかよ。というかなんだその理想の死に様。……いや死ぬなよ?これ食べて死なれたら困るぞ?」


[八葵]「お法ろ?いや、おぼlawか……?」


[悠心]「何言ってんだおまえ。」


[絃葉]「さてさて!これで全員揃ったし、時間もいい感じだし。始めちゃいますか!闇鍋!」


[命]「(ニコニコしながら拍手をしている)」


[八葵]「怖気付いてる奴は帰んな!ひゃははははははァ!!!」


[悠心]「おかしいだろテンションが。世紀末だろそれ。」


[八葵]「1/100世紀末だぜェ!!!」


[悠心]「‪”‬年末‪”‬って言えよ。あとそれ多分正しい用法じゃないからな。」


[小霧]「用法というか無法だねー。」


[絃葉]「鍋とカセットコンロはもう用意してあるから、一旦みなさんテーブルへ行きましょうか!」


[4人]「了解!」




~~~~~~




[悠心]「ほー。これが初期装備か。」


[小霧]「無課金って感じがするねー。」


[絃葉]「ちょっと良い白菜と豚肉だから、多少お金はかかってるよ?微課金くらいかな。」


[八葵]「初期装備はしうぃの奢りだから、お金に関しては心配しないで大丈夫。」


[悠心]「後でお礼言わないとだな。」


[八葵]「確かコレって命の案だったよね。最初に白菜と豚肉だけ入れとくの。」


[命]「うん。みんな好き勝手に入れると思うから、唯一の鍋としてのアイデンティティは保たせてあげたくて……」


[八葵]「鍋にまで優しい。聖母だ。」


[小霧]「祈っとこー。アーメン。」


[八葵]「シメは?」


[小霧]「うどんー。」


[悠心]「ラーメンじゃないのかよ。」


[絃葉]「えっと、どういうルールだっけ。最初に入れる食材だけは言っていいんだっけ?」


[八葵]「そうそう、八葵ちゃんルールだとそうなっております。」


[悠心]「おまえがルールブックかよ。」


[小霧]「不安だなー。」


[八葵]「そんな不安がるルールなんてないのに。食材は3つまでで、最初に入れる食材を開示するのと、お残しは汁まで絶対に許さないってだけだよ?簡単でしょ?」


[悠心]「えー……汁も?残しちゃダメか?」


[八葵]「何入れる気なのさ悠心……」


[小霧]「よーし。じゃートップバッターわたしねー?最初に入れる食材はこちらでーす!」


[命]「豆乳?」


[小霧]「いぐざくとりー。」


[絃葉]「もうベース変わっちゃったじゃん!」


[八葵]「豆乳鍋は美味しそうなのでヨシ!」


[小霧]「先日食べた豆乳鍋が大変美味しかったのでー。」


[悠心]「小霧にしてはマトモなチョイスだな。」


[小霧]「おっと、不敬ぞ。」


[悠心]「何様だよ。」


[命]「あ、じゃあ次私いくね。……こちらです!」


[絃葉]「ハマチダ。ウマソウ。」


[八葵]「ナマデクワセロ……」


[命]「えぇ!?ダメだよ、鍋の具材にするんだから……」


[悠心]「おまえらふたり刺身好きだよな。」


[小霧]「オデモ、ナマザカナ、スキー。」


[悠心]「無理すんなよ。おまえサーモン以外の生魚食べれないだろ。」


[小霧]「ノリタカッタ、ダケー。」


[悠心]「戻れ戻れ。おまえは心優しい怪物じゃない。ただのイタズラ好きの野蛮な怪物だ。」


[小霧]「酷くないー?こんなに澄みきった心で生きているというのにー。」


[悠心]「一番手で鍋濁らせた奴が何言ってんだ。」


[小霧]「……ちょき。」


[悠心]「ぐぅの音出せよ。勝とうとすんな。」


[八葵]「はい!三番手私ね。こちらです。」


[絃葉]「わ、柚子だ。すっごいいい香り!」


[命]「豆乳鍋に入れたことはないけど、美味しくなりそうな気がするね……!」


[悠心]「ハマチとの相性も良さそうだな。」


[小霧]「今のところ美味しい鍋になりそうだねー。今のところは。」


[悠心]「……なんだよ。なんでこっち見るんだよ。」


[小霧]「いやー……」


[八葵]「まさかね。悠心は常識人ポジだと思ってるから……」


[絃葉]「あ、じゃあ次わたしいきまーす!こちら!」


[八葵]「ほう。キムチとな。こりゃまた美味しい鍋になりそうじゃ。」


[命]「(今のところ)キムチ豆乳鍋かあ……!美味しそう!完成が楽しみだね!」


[絃葉]「ちなみに賞味期限が切れております。」


[八葵]「おっと?」


[小霧]「雲行きが怪しくなってきたぞー?」


[絃葉]「家に余ってたので……」


[悠心]「じゃあトリは私か。……ほい。」


[小霧]「oh!」


[八葵]「あちゃー……」


[悠心]「なんだよ。闇鍋って好きなもの入れていいんだろ。常識はカルパッチョの担保にしたから家に置いてきたぞ。」


[八葵]「いやまあ、そういうものではあるんだけどもね……」


[小霧]「やっぱりチーズケーキだったかー。」


[絃葉]「まあ、まろやかで豆乳にも合いそうだし……闇鍋だからまあ……許容範囲内……???」


[八葵]「恋人の絃葉ですら頭抱えちゃったよ?」


[命]「あはは……」


[悠心]「おまえらが常識的すぎるんじゃねーか?闇鍋ってこういうのが醍醐味なんだろ。」


[八葵]「確かに。……ヨシ!続行!」


[悠心]「よし通った。」


[絃葉]「じゃあ悠心、ソレ入れて。これで第1弾は終了だね。」


[悠心]「ん。」ボチャボチャッ……


[小霧]「禍々マガマガ度が20上昇しましたー。」


[八葵]「oh……嫌な濁り方だぜ……」


[命]「えっと、これを3巡するんだよね。」


[八葵]「Exactly。鍋の蓋は基本閉じておいて、順繰りに開けて食材をぶち込んでいく感じで。あ、中は極力見ない方針でね。」


[絃葉]「おっけー。割と楽しみ!どんな鍋になるんだろうなあ……」


[命]「美味しく食べられるといいけど……」


[小霧]「では皆の者、暫し待たれよー。あ、画面の前のみんなだよー。」


[悠心・絃葉・命]「画面……?」


[八葵]「www」




~~~(少女闇鍋作成中……。)~~~




[悠心]「私のコレで最後だな。……よし、全員集まれー。可愛い可愛い闇鍋ちゃんの完成だぞ〜。」


[八葵]「あっごめん悠心!今、今いい所だからちょっとだけ待って……ってうわぁ!さぎダメダメダメ!スマッシュ構えないで!あっあっ……うあああああああ!」


[小霧]「ふっ。弱いのー。」


[悠心]「決着付いたか?」


[八葵]「私の勝ちだよ。」


[小霧]「こいつ……心が強ぇのかー……?」


[絃葉]「すっごいスカっと嘘つくじゃん。」


[悠心]「スカっとってなんだ。ヌルッとじゃないのかよ。」


[絃葉]「え、言わない?スカっと。」


[小霧]「言うよー。」


[八葵]「言うねえ。」


[悠心]「おい命助けてくれ。何故か私らがマイノリティだ。」


[命]「ごめん秋ちゃん、私も使う……」


[悠心]「嘘だろ?四面楚歌じゃねーか。」


[八葵]「四面スカだ四面スカ。」


[悠心]「じゃなくてだな。ゲームの勝敗はどうでもよくて。……闇鍋、完成したぞ。冷めないうちに食べないか?」


[小霧]「りょーかい。砂ブラは一旦お預けかー。」


[八葵]「さぎ、次からレバルト使うの禁止ね。キャラが強すぎる。」


[小霧]「やだねー。そう言うんだったらやっちーもレバルト使えばいいじゃん、環境キャラなんだしー。」


[八葵]「……いやなんか、環境キャラ使って勝ってもさほど嬉しくないし……」


[悠心]「めんどくさい性格してんなおまえ。」


[絃葉]「メイちゃん、見てても何も分かんなかったね。わたしちょっと酔っちゃった。」


[命]「うん。雨ちーも?私もちょっと酔っちゃった。見なきゃいけないところが多すぎるからかな……」


[小霧]「ゆーみはコレやったことあるのー?」


[悠心]「砂ブラか?まあ持ってるけど、あんま強くないぞ。」


[八葵]「後で手合わせ願おうじゃないか。」


[悠心]「あんま強くないって言ったそばから対戦申し込むなよ。逆張りでビギナー狩りとか闇鍋よりも酷い性格してるぞおまえ。」


[八葵]「今日の闇鍋は爽やかだからまだいいや。」


[悠心]「爽やか?おい待て、おまえ何入れた?」


[八葵]「さあさ皆さま!闇鍋をいただくでザマスよ!!!」


[小霧]「れっつおーぷん!!!」


[5人]「おお……!」


[5人]「…………。」


[悠心]「……おい。」


[八葵]「どしたん悠心?まだ何もやってないけど……」


[悠心]「いややってるだろ!鍋が青一色なんだが!?」


[小霧]「ねーやっちー、青鍋あおなべ青銅せいどうって漢字の感じちょっと似てないー?」


[八葵]「流石はさぎ。目の付け所が違うね。」


[悠心]「おまえらの目は後ろに付いてるのか!?目の前の現実から目を背けるな!食紅かなんか入れたの絶対おまえらのどっちかだろ!!!」


[小霧]「やっちーがやりました。」


[八葵]「私がやりました。」


[絃葉]「えらく素直だね……」


[命]「あはは……」


[八葵]「まあまあまずは食べましょうや。腹が減っては気も立ちましょうぞ。」


[悠心]「見てるだけで腹じゃなくてSAN値が減りそうなんだが……なんだこれ、ゲソか……?」


[絃葉]「じゃあ取り分けてくけど……みんな、どれが食べたいとかある?」


[八葵]「私豚肉。」


[小霧]「わたし白菜ー。」


[悠心]「安牌ばっかり狙いやがって……」


[命]「じゃあ私はその豆腐……だったはずのものを……」


[悠心]「コレ豆腐か。……本当に豆腐か?」


[絃葉]「顔色悪、真っ青じゃん!変わり果ててて可哀想……」


[八葵]「真ん中削れてトゥイッターのアイコンみたいになってるじゃん。」


[小霧]「これトゥイートしたらバズりそうだねー。」


[絃葉]「あ、わたしもストリートに上げよっかな。いいねいっぱい狙えそう!」


[小霧]「雨ちーってインヌタだっけー?」


[絃葉]「Yes。あ、もちろん顔は写さないのでご安心を!」


[小霧]「おー。リテラちーだ。」


[リテラちー]「また変なあだ名付けられた!そろそろ法で取り締まるよ!」


[小霧]「ここではわたしが法だ──。」


[八葵]「私の家なんだけどもね。というか危ない、私もそのあだ名を付けられかねなかった。」


[小霧]「確かにー。じゃあ区別するためにもやっちーはリテラっちーにしよっかなー。」


[リテラっちー]「おおう、逃げられなかった……」


[リテラちー]「防御できないのが厳しいよね……」


[小霧]「ほいリセットー!」


[絃葉・八葵]「よかった……!」


[小霧]「そろそろ食べないと尺長くなりすぎちゃうからねー。」


[悠心]「なんの尺だよ。」


[八葵]「ほい。では皆さま、食べていきましょうか。いただきます。」


[4人]「いただきます。」


[小霧]「ん、ん……?おぉー。美味しいようなー?」


[絃葉]「食欲減退する色味だしなんかやたら爽やかな匂いがするけど……味は美味しいね!まろやかさと爽やかさがいい感じにマッチしてる!」


[命]「お出汁美味しいね。って固っ!?あっ、大豆だ。それも節分用の……」


[悠心]「誰だよ饅頭入れたの。割と合ってて美味しいけども。」


[八葵]「おっ、全然イける。チーズケーキも案外いいアクセントになってるんじゃない?」


[5人]「…………。」


[5人]「(美味しくなっちゃったなあ……)」


[命]「これって成功かな……?」


[絃葉]「鍋料理としては及第点、闇鍋としてはギリ失敗かなあ……」


[悠心]「なんでこのビジュアルでちょっと美味しいんだよ。」


[八葵]「むっ、何これ味濃っ!でも美味しい。お酒とかに合いそうだな〜。飲んだことないけども。」


[小霧]「わたしの入れたカラスミかなー。家にあったから持ってきちゃったんだけどー。」


[絃葉]「カラスミって高級品じゃなかったっけ……?」


[悠心]「高いおつまみ勝手に持ってかれて怒ってるだろうな、小霧のお母さんorお父さん。」


[命]「あはは……」


[絃葉]「で、爽やかな……なんだろうコレ。ブレ○ケア的なのを入れたのは誰?」


[八葵]「ノンノン絃葉。そいつぁチョコミントさ。お徳用クソデカサイズのな。」


[命]「よかった、歯磨き粉じゃなくて……」


[悠心]「変に甘いと思ったわ。今日の闇鍋MVP戦犯は八葵で異論なしだな。」


[小霧]「じゃあ早いですが、みんなが入れたものを順に発表していきましょー。まずめーちん!」


[命]「はい!ハマチと豆腐と顆粒だしです……!」


[悠心]「味がギリまともだったのって顆粒だしのおかげだよな多分。」


[絃葉]「今日の裏闇鍋MVPはメイちゃんだね!」


[命]「裏闇鍋……?」


[小霧]「はいじゃあお次ー。やっちー。」


[八葵]「ほい。食紅(青)、柚子、チョコミントアイスだね。」


[小霧]「言わずと知れた闇鍋MVP大戦犯ー。」


[悠心]「チョコミントって強いのな。口の中に清涼感がずっと残り続けてる。」


[八葵]「ミント増量のやつにしたからね。わざと。」


[悠心]「わざとかよ。まあ面白いからヨシ!」


[八葵]「許された。」


[小霧]「お次ー、わたしいきまーす。豆乳とー、ゲソとー、カラスミでーす。」


[絃葉]「助演闇鍋賞あげてもいいかも。青色に浮くゲソがほんっとに気持ち悪かった……」


[八葵]「カラスミ結構美味しいねえ。おじいちゃんにねだってみようかな。」


[小霧]「お次ー。雨ちーいこっかー。」


[絃葉]「はーい。えっと、賞味期限切れのキムチと、節分用の豆と、余り物の紅白饅頭です!」


[八葵]「なぜ新しいものを買ってこないのか。」


[小霧]「賞味期限切れの食べ物を友達に食べさせるんじゃないよー!」


[悠心]「青すぎて分からなかった。アレ紅白饅頭だったのか……」


[命]「あはは……」


[小霧]「はいじゃーラスト!ゆーみ!」


[悠心]「トリ飾るには地味だぞ?チーズケーキとブルーベリーと、あと紅茶入れただけだし。」


[八葵]「それを地味だと言い張る勇気たるや。」


[小霧]「闇鍋じゃなかったら説教ものだよー。」


[悠心]「食紅おまゲソえらに言われたくねーよ。」


[小霧]「ゲソは許されてもよくないー?」


[絃葉]「で、さ。」


[4人]「…………。」


[絃葉]「……割と美味しいとはいえ、食べ切れるかな、この量。」


[小霧]「まあ均等に分けましょうやー。」


[八葵]「5人分にしては多いねぇ。豆乳とチョコミントで水分足しすぎたかね。」


[???]「八葵〜。差し入れ持ってき──うわっ、何だこれ青!お前ら何食ってんだよ。」


[八葵]「おーっすしうぃ。あけおめ。」


[四梅]「くれのろ。これ俺とじいさんからの差し入れ兼ワインの礼だ。皆で仲良く分けて食べろよ。」


[悠心]「‪”‬くれのろ‪”‬ってなんだ?」


[四梅]「‪”‬暮れまして呪います‪”‬の略だが?」


[絃葉]「なにそれ知らない知らない!そんなおどろおどろしいお正月嫌だよ!?」


[八葵]「じゃあ年も明けたことだししうぃ、お年玉ちょうだい。」


[四梅]「まだ明けてねぇよ。というか大学生にお年玉をねだるな。懐があったまったら考えてやらんこともないが。」


[小霧]「やっちーにあげるんだもん。わたしたちにも当然くれるよねー?」


[四梅]「さあ?いい子にしてたら20年後くらいには貰えるかもなあ。」


[絃葉]「サンタさんかな?」


[悠心]「にしてはラグがありすぎるだろ。子供時代に来てくれねーし。」


[命]「四梅さん、差し入れありがとうございます。おじいさんにもお礼を伝えていただけると助かります……!」


[四梅]「おう。んじゃ、俺水差しになっちまうし向こう戻るわ。よいお年を〜。」


[5人]「よいお年を〜。」


[八葵]「……いや〜、リビングふたつあると便利だねぇ。年末に友達呼ぶのも自由だし。」


[悠心]「二世帯住宅の利点だな。」


[小霧]「あ、そうだー。つまるところこの場にいるのはわたしたちだけということになるねー?ならばー?」


[八葵]「そうだよさぎ!お鍋食べながらゲームしたって〜!?」


[小霧・八葵]「許される!!!」


[命]「お行儀悪いよふたりとも。」


[小霧・八葵]「ムムっ!」


[命]「……って、いつもなら弟妹あの子たちみたいに叱ってるところだけど。大晦日だし、せっかくみんなで集まってるんだから、楽しみながらゆったり食べよっか。」


[八葵]「ハイ聖母!心の広いお方!」


[小霧]「免罪符も得たし、年明けまでゆったり砂ブラするぞー!!!」


[絃葉]「あ、そういえば差し入れって何だろう?やたらヒヤッとするんだけど……」


[悠心]「見てもいいか?……お、アイスだ。それもちょっと良い所の。」


[八葵]「ほう!しうぃはやっぱり理解わかってるねぇ!!!」


[小霧]「熱々のお鍋の後にコタツで食べるアイスの美味しさー!!!」


[命]「年明けまでにはお礼言いにいこっか。」


[悠心]「ありがと納めだな。」


[八葵]「ありがと納めwいいねソレ、積極的に使っていきたい。」




~~~~~~




[絃葉]「あ、もう1回もっかいよそったらなくなりそう。誰かまだ食べたいって人いる?」


[悠心]「私貰うわ。」


[絃葉]「おっけー。」


[八葵]「ねぇさぎ〜、今何時?」


[小霧]「んー、わたしの腹時計的には23:15くらいかなー。」


[命]「えっ、すごい。ほとんど合ってる……」


[八葵]「なんで?」


[絃葉]「ダラダラ食べてたら結構遅くなっちゃったね。」


[八葵]「まさか悠心が砂ブラあんなに強いなんてねぇ。」


[悠心]「まあ好きだからな。好きなものは極めたくなるだろ。」


[小霧]「ほほー。ゆーみの極めたもの、雨ちーとチーズケーキの次に砂ブラ追加しとこー。」


[絃葉]「悠心、わたしを極めてくれたの……!?嬉しい!!!」


[悠心]「なんで泣いてんだよ。」


[八葵]「感極まっちゃった。」


[命]「それにしても、もう今年も終わっちゃうんだね。」


[悠心]「な。短かった気がするわ。」


[絃葉]「今年もみんなで色んなことしたよね!お花見行ったり、海浜公園でBBQしたり!」


[小霧]「落ち葉で焼き芋も作ったよねー。あとクソデカ雪だるまー。」


[八葵]「あの雪だるまが喋りだしたの怖かったよねぇ。結局作り手の絃葉と雪だるまで悠心を取り合いしちゃって……」


[悠心]「知らねーよなんだよソレ。存在してねーよそんな記憶。」


[絃葉]「あの雪だるまも見る目あるよね!ひと目見て悠心を狙うなんてさ!」


[悠心]「私の記憶が飛んでるだけかコレ?」


[八葵]「www」


[5人]「…………。」


[八葵]「……ねえ。」


[悠心]「どうした?」


[八葵]「……また来年も、みんなで一緒に仲良く過ごしたいねぇ。」


[4人]「…………?」


[悠心]「当たり前だろ。」


[絃葉]「言うまでもなく!」


[命]「5人でいないと落ち着かないし……」


[小霧]「ヨボヨボになっても一緒のつもりー。」


[八葵]「だから好きなの君ら〜!!!(泣)」


[悠心]「わ、なんだよ珍しいな。おまえにセンチメンタルは似合わないぞ。」


[八葵]「うるせーやい!来年受験だからちょっと不安定になってるんだい!!!」


[命]「そっか、受験かあ……みんな、受ける学部とかはもう決まってるの?」


[悠心]「私は教育学部。」


[絃葉]「わたしは理学部かなあ。」


[小霧]「わたしはまだ決めてなーい。なるようになれって感じでー。トリマーとかはいいなーって思ってるー。」


[八葵]「私は何も決まってないです……」


[命]「私は栄養学部かな。……そっか。みんな結構違う道なんだ。」


[小霧]「まー、道は違くても頻繁に会う気でいるけどねー。」


[悠心]「この辺りって大学とか専門学校多いし、もしそこに進むのなら簡単に会えそうだな。」


[絃葉]「わたしが行きたいとこ、結構うちの近くだよ!」


[命]「私も割と近くだよ。通いやすい所がいいし。」


[小霧]「おー。わたしも近くで見つけよっかなー。」


[八葵]「……夢、そろそろ本気で考えないと。」


[悠心]「まあ気長に探せばいいんじゃないか。なんか開拓したかったら手伝うぞ。」


[八葵]「ありがてぇ……!キンッキンに冷えてやがる……!」


[悠心]「温かい言葉をかけたつもりだったんだがな。」


[八葵]「うーん……趣味が高じて夢、ひいては仕事になるってが理想だけど、私に長く続けてる趣味なんてないし……やっぱり悠心の言う通り気長に開拓して……いやでも遅いかな、もう高2だし……今から1から探すっていうのも難s冷たっ!?!?!!?」


[小霧]「えっへへー。やっちー、まずはアイス食べよー。考えすぎはよくないのでー。」


[八葵]「さぎ……!」


[命]「やっちゃん、今からでも全然遅くないよ。まだ考える時間はいっぱいあるから、ゆっくり焦らずに考えよう?」


[八葵]「命……!」


[悠心]「おっ。このアイス美味しいな。」


[絃葉]「お高いだけあるよね!コクが違う気がする!」


[八葵]「悠心……絃葉……!」


[悠心]「待て待て。私らアイスの感想言っただけだぞ。良いこと言った風になってるが。」


[絃葉]「ほらやっちゃん、チョコ味好きでしょ!ひと口食べてみて!」


[八葵]「ありがと絃えっ美味うま美味おいし!しうぃ!おじいちゃん!差し入れありがと〜!!!」


[小霧]「調子戻ったねー。よかったよかったー。」


《除夜の鐘の音》


[命]「あ、除夜の鐘だ。」


[悠心]「もうそんな時間か。」


[絃葉]「やっちゃん、台所借りてもいい?年越しそば作らなきゃ。」


[八葵]「おっけー。みんなで作ろっか。」


[悠心]「お、私も手伝うぞ。」


[小霧]「わたしもー。」


[絃葉]「いや、わたしとメイちゃんだけでやります。お願いだから3人は砂ブラでもしといてください。」


[悠心]「なんだよ、切実だな。」


[命]「怪我してほしくないから……」


[悠心]「私らそのレベルなのか?」


[小霧]「包丁くらいは握れるよー?」


[八葵]「お湯も沸かせるし……」


[絃葉]「色々見てて不安なの!15分くらいでできるから待ってて!」




~~~~~~




[命]「おまちどうさま。」


[悠心]「おー。ありがとな。」


[八葵]「っし!私の勝ち!なんで負けたか明日まで考えといてください!!!」


[小霧]「年越したら勝率もリセットだかんねー!雪辱を明日に持ち越す必要などないのだー!」


[絃葉]「おーい、年越しそばできたよ。そろそろ年明けちゃうから早く食べよう!」


[小霧・八葵]「わぁーい。」


[悠心]「お、美味しい。今日美味しいもの食べてばっかりだな。」


[八葵]「やっぱり料理は絃葉と命に任せるとハズレなしだね。」


[小霧]「盛り付けセンスもあるよねー。」


[命]「お蕎麦茹でてインスタントの出汁を注いだだけなんだけどね……」


[絃葉]「盛り付けは褒めてくれてありがと!他はほぼインスタントだけど!」


[悠心]「……除夜の鐘、結構聞こえてくるな。お寺そんなに近くないはずなのに。」


[八葵]「いいじゃんいいじゃん。除夜の鐘の音と煩悩を対消滅させるイベントなんでしょ?聞こえれば聞こえるほどいいじゃん。」


[絃葉]「そんな物理的な解決方法なの!?」


[小霧]「煩悩かー。雨ちー煩悩多そうー。」


[悠心]「ああ、なんか分かるな。絃葉は間違いなく煩悩まみれ。」


[八葵]「日頃悠心に対して煩悩抱きまくってそうだもんね。」


[絃葉]「……ぱぁ。」


[悠心]「ぐぅの音出せよ。あとなんで後出しであいこなんだよ。せめて勝とうとする気概を見せろ。」


[命]「あはは……」


[小霧]「人の煩悩っていくつあるんだっけー?」


[命]「ええと、確か108つかな。」


[悠心]「私108つもない気がする。」


[八葵]「私も。」


[小霧]「わたしもー。」


[絃葉]「わたしですら多めに見積って70くらいだよ。」


[悠心/八葵/小霧]「多いな/多いね/多くないー?」


[命]「じゃあもしかして、ここ5人の煩悩を合算すると108つくらいなのかも。」


[悠心]「現実的な数値だな。絃葉70、私小霧八葵で計38、命が0だから108か。」


[命]「私0かな……!?」


[八葵]「傍から見る分には0で異論なしだよ。」


[命]「うーん……まあそう見えてるのならそうなのかも……?」


[小霧]「じゃーこの5人で合わせて1人の人間ってことだねー。」


[悠心]「煩悩だけだけどな。それ以外の要素は間違いなく飽和するわ。」


[小霧]「あ、そうだー。年明けちゃう前にいっこ言いたいことがあったんだけどー。」


[悠心]「おー。言っとけ言っとけ。」


[小霧]「ちーちゃんがわたしをお嫁さ──」


《108つ目の除夜の鐘の音》


[小霧]「あ、明けましておめでとうございますー。」


[4人]「いや気になる!!!言って!!!」


[悠心]「ちーちゃんって誰だよ!?」


[絃葉]「お嫁さん!?プロポーズ!?」


[小霧]「この続きはまた今年の年の瀬にー。」


[4人]「言わないの!?!?!!?」




──────




【砂ブラとは?】

正式名称は『大混戦砂肝ブラウニーズ』。

公式略称は『砂ブラ』。

寒天堂かんてんどうがリリースしている対戦型アクションゲームで、そのプレイ人口は中々のもの。大会なども随時開かれている。


その内容は、多種多様なゲテモノ創作スイーツを擬人化・擬獣化したキャラクターたちが拳で武器で、その身を削り合うというもの。

《キャラクターの一部を紹介》

・レバルト(レバータルト)

・マコリー(ナマコゼリー)

・ズイーム(ミミズアイスクリーム)

・モリパ(イモリパフェ)


悠絃命霧葵のパワーバランスは

悠心>>>小霧>八葵>>>>>>絃葉=命

という感じ。


以上です。ちなみにクソゲーではないです。




【ひとこと】

明けましておめでとうございます。

2023年の年の瀬に投稿を始めた本作ですが、早くもPV数が2桁の半ばを超え、エピソード応援、フォロー、レビューなども戴いております。

大ッッッッッッッッッ変嬉しいです!!!もうすごい、すんごいモチベーションになっております!!!ありがとうございます!!!

2024年も、悠絃命霧葵(本作略称)をどうぞよろしくお願いいたします。


とまそぼろ

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