君の笑顔を取り戻す

かすみそう

君の笑顔を取り戻す

〜嫌な予感〜


今日も心地よい風に包まれながら学校へ登校する。桜がひらひら蝶々みたいに舞う

「はぁ。もうクラス替えか」

人と話すのが苦手な私からしたら苦痛でしかないクラス替え。

「とうとう3年だねぇぇ!雅とまた同じクラスだといいなぁぁ」

1年2年と同じクラスで仲の良い陽菜だ。

こんなに元気で明るくてみんなの人気者の陽菜が私と仲良くしてくれるのは不思議だ。

そのおかげでなんとか学校に通えていた。

「そうだね」

昇降口に大きく貼られたクラス表が見えてきた。

「あ!私6組だ!雅は?!」

「私は3組だ」

「まじかぁぁ、違ったねぇ。でも仲良くしようね!」

「うんありがとう」

地獄な一年の始まりの予感がした。


〜偽装〜


「よっ」斜め前の席に座る彼は翔。2年も同じクラスだった。無言でも心地よいくらいの仲だ。金髪だからみんなからは怖がられている。

「雅おはよ!今日帰り一緒にかえろ!」

スラッと高い身長に爽やかな笑顔の蒼太。

私の彼氏だ。なぜ私なんかがこんな素敵な彼と付き合えたのかいまだに謎だ。

「うんわかった!」

自分のクラスに戻っていく彼の背中を目で追う。正直彼との関係は少し心苦しい。

幸せなのだけれど幸せのはずなのに。

「なぁおい、雅 お前大丈夫か?」

翔が訪ねてきた。

「え、なにが?」

「なんか疲れてそーだから」

「全然大丈夫!だ、だって幸せだから!」

笑顔を頑張って作った。

「あっそ…そりゃよかったね」

なんだし、自分から聞いといてあっそってひどいじゃんか。ムカつく。


長い始業式とホームルームがやっと終わった

翔がこちらを向いた「なぁ、みや」

翔の言葉は遮られてしまった。

「みーやび!お迎えにあがりました!」

翔にごめんと目で訴えた。翔は何も言わずに教室を出て行ってしまった。

「あ、うん!おまたせ!」

「今日はどこ行こっかぁぁ!」

なんだったんだろう。


蒼太とのデートが終わり帰る頃には夜になっていた。

「ただいま」

「おかえり、ご飯できてるわよ」

「うんわかった」

私はご飯をすぐ終わらせ、お風呂に入り

布団に潜り込んだ。

ピロリン。携帯の画面には〈翔〉の文字。

【明日ってなに持ってけばいいの?】

【明日は現代文と英語と体育だよ

体操着忘れずにね】

【ガチかぁいきなり授業あるとかしんど

しかも体育かよ】

【それな】

【あのさ】

【ん?】

淡々と続いていた会話が途切れた。

少し間を置いてまたLINEが来た。

【蒼太?ってやつお前の彼氏だろ?】

【うんそうだよ】

【やっぱ…そうだよな。】

【どうかしたの?】

【いや…大丈夫気にしないで】

気にしないでって、気にしちゃうじゃんか

なんだろう。


〜幻〜


3年は勉強がさらに難しくなり進路活動で忙しく時が過ぎるのが早く感じる。

桜の花は散りゆき、紫陽花が咲き始めた。

最近は雨が多い。雨が嫌いだ。ジメジメするし気分が下がるし。

「みやびー!おまたせ!」

今日も天気とは裏腹のさわやかな笑顔で駆け寄ってきた。

「ううん全然平気だよ!」

今日は彼との一年の記念日。

ずっと一緒にいようっていつも言ってくれるが、最近は携帯をいじることが多い蒼太。

なんだかんだで半日が過ぎ午後になった。

「雅ごめん俺午後予定入れちゃってて、帰るね!」

今日は一日中一緒に過ごす約束だったのに。

まぁ、いい、私が我慢すればいいだけだから。

「うんわかった またね」

走って帰る彼の背中を1人寂しく見送って、しばらく佇んでいた。

「さ、かえろっうぎゃあ!」

「かわいくねー叫び声だな」

振り返るとそこには翔がいた。

「な、なにしてるの!?!」

「うるせーなー別にストーカーじゃねぇんだから。ただそこのコンビニから出てきたらたまたま2人を見かけて、ってそいえばなんで帰ったの?」

「んーわからない、用事だってさ」

「ふーん、用事ねぇ。んじゃ雅は今から暇ってことか」

「うんまぁ帰ろうと思ってたところ」

「じゃあちょっと買い物付き合ってくんねぇか?」

「別にいいけど」

翔は無言でアクセサリー屋さんに向かった。

「なぁ女の子ってどんなのがタイプなんだ?」

「んー、人それぞれだけど翔好きな人でもいんの?」

「まぁ、な。そんなところ」

「えー!意外だわぁ!なんか女子にまじ興味ありませーんみたいな感じかと思ってた」

「ひでぇな、こう見えて男だわ

雅ならどんなのが好き?」

「んーどれだろう。あ!このハートのネックレスかわいい!」

「へーそっか、ま、買ってやんねーけどな」

「うっざぁわかってますよぉだ」

頬を膨らませながら視線を翔から外すと、向かいのお店に蒼太の姿が見えた。

え?蒼太?予定があって帰ったはずじゃ…?

よく見るとその隣には明るく可愛い女の子の姿。陽菜だ。

「どうして。」

「ん?雅どうかしたか?」

い、いや、よく考えてみれば私だって今はデートみたいになってしまっている。

「私。帰る。」「ちょ、おいどした。みや  」

そう告げて私は走った。私はばかだ。


〜真実〜


あの日家についてからLINEで翔に謝った。

彼はなんも気にしてなかった。

そればかりか私の心配までしてくれた。

もうすぐ文化祭だ。各クラスが準備で賑わっていた。私は残って作業をしていた。気がつくともう日が暮れてきていた。そろそろ帰らないとだ。クラスには誰もいなかった。他のクラスも数人しかいないようで静かだった。

廊下を歩いてると6組から声が聞こえた。

「お前さあいつとはどうなったの?」

「あー雅?」

蒼太の声だ。胸がぎゅっと痛くなる。

「そーそう!付き合ってんだろ?」

「はは、付き合ってるってか遊んでやってるって感じかな!」笑いながらそんなことを言った。遊んでやってる…。

「俺の本命は陽菜だからさ?雅なんて暇つぶしだよ.あんなブスインキャ本命なわけないだろ」

……ブスインキャ。本命じゃない。訳がわかなくなった。すると、私の背後からスっと人が6組へ入って行った。

ガラガラッ。「おい。お前ふざけんな。」

それは翔だった。

「お前なんかに雅はもったいねぇよ

お前なんかが雅をどうこう言うんじゃねぇよ!」

目頭が熱くなり涙が止まらなくなった。

私は走って誰もいない西棟へと向かった。

うぅ。声をあげて泣いた。

「みや、び?」

そこには翔がいた。

「…来ないで。ほっといてよ。…っ!?」

翔は何も言わず私を優しい腕で包み込んでくれた。さらに涙が溢れて止まらなくなった。

うぅ。ううぅ…。

しばらく私はその暖かい腕の中で泣いた。

やっと涙が落ち着いてきた頃

翔が私の手にそっと何かを置いた

「これって…」

そこには前に翔の買い物に付き添ったときに私が可愛いと言ったハートネックレスがあった。

「俺はお前が好きだ」

…!?私が…好き?

「ど、どゆこと。」

「どゆことって、好きなんだよ

ただ雅には蒼太がいる。だから付き合うことはできないことはわかってる。ただ伝えたかったんだ。こんな状況でいうことじゃなかったよな。ごめん。んじゃ…。」

翔はそう言い残して行ってしまった。


〜君との再会〜


あの後蒼太とはすぐに別れた。翔とは距離ができてしまって話さなくなった。なんでだろう。心に大きい穴が空いたような感覚だった。

空気のように毎日が過ぎ、もう気がつくと成人だ。

成人式なんて来たくなかった。つまんないし、話長いし何が良いのかわからない。やっと終わったから帰れる。


「雅…?」



〜エピローグ〜


蝉の声が響き渡り、蒸し蒸しとする暑さに汗が止まらない。

「ごめんおまたせ!」

金髪の髪が風に揺られてキラキラと光っている。

「まったくぅ、汗で化粧落ちるとおもったよぉ、許さないんだから」

「えぇぇごめんて」

いつもクールな翔が焦る姿は面白くていじりたくなるのだ。

「あはは、うそだよ」

そう私がいうと、もぉっと言いながらちょっと頬を膨らませた。そんな姿が愛おしい。

「やっぱり雅はそれが一番似合うね」

「ありがとう、お気に入りなの」

私は首元にあるハートのネックレスを触りながら言った。

「あ、ネックレスももちろん似合うよ」

「え!ちがったの!?」

私は恥ずかしくて頬を赤らめた。

「うん笑、雅が一番似合うのは笑顔だよ。」

胸が熱いのはきっと夏のせいではない。



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