紗季  5

穂乃果はこんなおしゃれなホテルを取っていたんだ。


バスルームにはきっと、拓也がいるんだろう。

穂乃果、こんな男に抱かれて幸せになれるとでも思っているの?

いつまでも遊ばれて、そんな惨めな人生でいいの?


私は全裸になり、バスルームに入った。


「やっぱり、一緒に入りたかったんじゃないか」


笑いながらそう言う拓也。

体をジロジロと見てくる拓也の目つきは、父にそっくりで吐き気がした。


私は、後ろ手に隠し持っていた包丁を拓也の腹へと突き刺した。

何度も。

何度も。


刺す度に、拓也は情けない悲鳴を上げ続けた。

私は拓也に言った。


「香織と付き合っていながら、穂乃果とも体の関係を持つだなんて最低ね。あんたは高校時代からずっとそうだった。穂乃果はね、いつかは拓也が自分のものになると信じて、あなたに抱かれていたのよ。結局、あんたは穂乃果の体だけが目当てだった。九州を出てからも、穂乃果はね、あんたのこと、ずっと好きでいたの。私の穂乃果をおもちゃにしないで!」


刺す度に反応があった拓哉の体は、いつの間にか何の反応も示さなくなっていた。


私はシャワーを浴びて、全身についた返り血を洗い流した。

一日に二回もお風呂に入ることになるとは。



バスルームを出た私は、5人目を殺す準備を始めた。



私を追いかけてきた穂乃果。

彼女を殺すことで、すべてが終わる。


ホテルの冷蔵庫を開くと、飲みかけのペットボトルが入っていた。

私は、香織を殺した薬の残りを、穂乃果のペットボトルの中に入れた。


「さようなら、穂乃果……さようなら、私……」


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