穂乃果 5

ホテルの部屋に入るやいなや、拓也くんは抱きついてきました。


「ちょっと……まずはシャワーくらい、浴びて」


「分かった。一緒に入ってきてもいいぞ」


「何言ってんの」


拓也くんがシャワーを浴びている間、もう一度身だしなみを整えました。

そして、ベッドで横になって拓也くんが上がるのを待っていました。


* * *


いつの間にか眠っていました。


拓也くんは?

私はバスルームを見に行きました。


ビジネスホテルとは違って、このホテルにはバスルームが別にあります。

曇りガラスを見て、驚きました。

内側が真っ赤に汚れています。

恐る恐る、バスルームのドアを開けてみました。


やっぱり……


拓也くんが倒れています。

体の血はシャワーで洗い流されていましたが、どう見ても息はしていませんでした。

大声を出したり、揺さぶってみたり、いろいろ試しましたが、拓也くんからは何の反応もありませんでした。

足元には包丁が落ちていました。

その包丁は、どこかで見たことがある包丁でした。


拓也くんを殺した犯人の見当はついていました。

紗季です。


私は、紗季を追いかけてここまで来たのに、実際は逆だったのかも知れません。

私の方が追いかけられていたのでしょう。


私は心を落ち着かせるために、まずはベッドに腰掛けました。

何も考えられません。

冷たいものを飲んで、頭を冷やそう。


私は冷蔵庫からペットボトルを出し、それを一気に飲み干しました。


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