第13話 覚醒

現場の生徒たちは、一般人を避難させ、スフィア型クリーチャーの球体から湧き出てくる赤い人間たちをレーザーガンや異能技で攻撃していた。


しぶとい上に数が多く、生徒だけでは一般人の保護が精一杯だ。


A級の教員が異能技で球体を攻撃するが、あまり効いていない。

長引けばクリーチャーから新たな攻撃が始まるかもしれない。

焦りは募るが手も足も出なかった。



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「ラムズ理事が到着しました!」

「道を開けろ!」



ラムズはバイクを降りた。


「ロキ、まずは自分の身を守るように。」


「…はい…。」



ラムズはレーザーソードではなく、刀を取り出して構えた。



神速斬撃しんそくざんげき


ラムズは一瞬で姿を消した。

そして次の瞬間には、敵が斬りつけられていた。


あの日も、この技でロキを助けてくれたのだ。



球体は真っ二つに切り裂かれ、大量の血しぶきと不快な断末魔の叫びがこだました。

赤い人間も溶け始めた。



「さすがラムズ理事…!」


周りから称賛と安堵のつぶやきが聞こえる。




しかし、ロキは割れた球体の中に、キラリと光るものを見た。



--ラムズを助けなくては!--



ロキの頭の中ではっきりと声が聞こえて、ロキは叫んだ。



「ラムズ理事!核はまだ壊れてません!」


ロキの声を聞き、ラムズは追撃をしようとしたが、大量の血しぶきがまとまって大きな一本の赤い手になり、ラムズの全身を掴んだ。


ラムズの体は赤い手にとりこまれ、クリーチャーの血の海に溺れそうになる。




ロキはレーザーソードを手に取った。


体が勝手に動く。


自分がなんという技を出したかは、覚えていない。



ロキの攻撃はクリーチャーの核をとらえた。


まばゆい光が辺り一体を包み込み、クリーチャーの血の海は、蒸発して消えていく。




技を使ったロキは、その場に倒れ込んだ。


「ロキ!」


血の海から脱出できたラムズはすぐにロキの元に駆け寄り、倒れたロキを抱きかかえた。



「まさか、あの技は…!前世を思い出したのか…⁈」


ロキは答えたかったが、全く体が動かない。



「ロキ!しっかりしろ!技にエネルギーを使い過ぎた!魂からエネルギーがどんどん抜けている!このままでは、死んでしまう…!」


ラムズの焦った表情を初めて見た。


僕は、自分が好きな人のことすらも、まだ何にも知らないんだな…。


それだけ思って、意識が途切れた。

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