Too many cooks spoil the broth
「たっ、助けて…!どうして、一級が街道に…!?」
目の前に広がる阿鼻叫喚を見ながら、俺はどうしたものかと首をひねっていた。
「なぁライア、これって俺らのせい?」
「いいえ、これは彼らが望んだことです。見届けましょう」
「やっぱそうだよなぁ」
と素っ気なく答えるライアの気持ちもわかる。
今、まさに俺の目の前には先輩風を吹かせていた
事の経緯は、こうである。
俺たちと合流した
どうやら俺やライアがいきなり一級になった事をよく思っていないらしく、今回の依頼中、俺たちには何もさせないという非常にちんけな嫌がらせを企てていたらしい。
どころか、魔物が出現するとその時だけ俺たちを前面に出し、危険な目に合わせようとしていた。
もちろん、すぐに俺が魔物を瞬殺してしまい、彼らの目論見は霧散するわけだが、すると今度は「俺たちの戦いを見ていろ」と言い出した。
なので現在、出現した魔物に立ち向かった彼らを後方腕組みしながら見守っているわけだが、いかんせんもうチームは半壊し、
しかし、どうしたのものか。
このまま見殺しにしては、となりにいるフェルトとかいう冒険者を通じて悪評が立ってしまう。
この女、何を考えているのかわからないが、時折俺のほうをこっそり見ており、かつ絶妙に距離を取っている。
まるで暗殺者のようなただ住まいだが、最初の咽ちらかしていたのは何だったのだろう。
ていうか、よく見るとまだ小刻みに手が震えているようだ。
寒いのか?
いや、今は自衛団だ。こいつらを見殺しにするのなら、目撃者であるフェルトも殺しておかねば悪評は避けられない。
だがそんな事のために、何の因縁もない森人を殺すのは流石に良くないだろう。
「仕方ない。ライア、ちょっと行ってくるわ」
「助けるのですか?あの愚鈍者を」
「本意じゃねぇけどな」
全身に蛆が集った様子は醜悪で、周囲には仲間のイノシシが十体ほどいる。
この魔物は突進が強力なようで、自衛団は突進を躱すので精一杯なようだった。
その時、自衛団のリーダー、バイルとかいう男の元へ、巨大なイノシシが突っ込んだ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!」
バイルは叫ぶことしかできず、持っていた剣を振り回す。
恐らくその剣ごとへし折って押しつぶすであろう勢いで迫る魔物は、しかし、バイルにぶつかる寸前で両断され、バイルを素通りして慣性のまま転がっていった。
「へっ…?」
馬鹿みたいに呆けたバイルを放っておき、子イノシシ十体に斬撃を放つ。
だが威力が過剰だったようで、街道横の木々もなぎ倒しながら臓物がまき散らされた。
木々が倒れる轟音が収まったころ、呆気にとられたバイルがやっと正気に戻る。
「い、今のは…?一体何が起こって…」
「大丈夫か先輩方?」
「あ、あぁ……今のは、お前が……?」
「そうだ」
「そうか……すまない、助かった」
「いいや、実際こんなところに出現するような魔物じゃなかった。見誤るのも仕方ないさ」
適当に擁護して、バイルに手を差し出しだす。
「怪我は?」
「大丈夫だ。うちにはアルカナ使いもいる。これ以上、そっちの手は煩わせない」
最初の威勢はどこへやら、すっかり借りてきた猫のように大人しくなった自衛団を起き上がらせて、もうすぐにそこまで迫ったトレント村へ向かった。
そこから上がる微かな煙が、嫌な予感を増長させながら。
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