last but not least ③



「プラズマ・ランチャー」


 ローブの懐から取り出したのは、巨大な兵器だった。

 腕全体に装着したそれは、様々な機能を内包する多機能戦略兵器。

 その兵器の先端に覗く砲台を巨大ミミズに向けて、エネルギーを注ぎ込む。

 すると、内包されたボルトが駆動し、自動的にランチャーモードへと移行する。

 常人であれば持ち上げる事は不可能、例え数人がかりで照準を合わせたところで反動に耐えようはずもないそれを、俺は片手で撃った。


 電気的なエネルギーが迸り、一瞬空洞を光で埋め尽くす。

 反動で俺の足は地面に沈み込み、余波だけで周囲の壁までもが剥がれて舞っていく。


 着弾し、巨大ミミズが奇声を上げた。

 しかし、俺はそれを見届けるよりも早く新たな武装を陰から呼び出し、左肩に装着する。


「プラズマ・フィニッシャー」


 今右腕に装着している多機能戦略兵器に比べると、幾分もコンパクトな武装。

 しかし、その効果は絶大。先にプラズマ兵器によってダメージを与えていると、威力が十倍にまで跳ね上がる。

 巨大ミミズに付着した電気が消える前に、肩から追撃を放った。


 放つと同時に、俺は地面を蹴って自分の弾丸を追いかけるように空を駆ける。


 プラズマ・フィニッシャーが着弾し、相手の動きが止まるその一瞬こそが好機。


「カートリッジ再装填…」


 右腕のランチャーからカートリッジが射出され、新たな弾倉が装填される。


「形状変化、パイルバンカー」


 砲台が形を変えて、稲妻が迸る杭を覗かせた。

 そのまま硬直した巨大ミミズの顔面にパイルバンカーを叩きつけ、同時にエネルギーを注ぎ込んで杭を打ち込んだ。

 巨大ミミズの柔らかな肉が弛んで、その身体を大きく揺らす。

 揺らめいて、そのまま倒れ行くかと思ったが、その身体は巨体に見合わぬ速度で切り返し、再び俺に体当たりをして弾き飛ばした。


「ぐっ…!」


 だがこれを喰らうのは二度目だ。

 こう来る事も想定内。

 壁に叩きつけられ、さらにその奥へめり込ませようと突っ込んできたその口に、左手の手掌を向けた。


 ライアが俺の身体を使ってやって見せたように、火炎放射を撃つ。

 ただし、威力はあの時の比ではない。

 口の中から燃やされた巨大ミミズは発狂しながら顔を振り、その全身を悶えさせる。

 その余波で空洞中の魔物が潰れ、あるいは宙に舞い、まるで迷宮全体が揺れて悲鳴を上げているかのようなカオスが広がった。


「はぁ…はぁ…単調なんだよ、馬鹿が」


 その言葉を、奴はまるで理解しているかのようだった。


「あ?」


 全身に生える産毛を針のように尖らせると、それを俺に向けて一斉に撃ちだしたのだ。


「はっ!?」


 この身体は硬い。

 簡単に針が刺さるような事はなかったが、それでも硬式の野球ボールを投げつけられているかのような痛みを伴い、何百発もの針を喰らって瓦礫の下に沈んだ。

 そこに追い打ちを掛けるように再度頭から突っ込み、岩盤の下まで俺を追いやる。


 やばい。

 これは死ぬかも。


 そんな事を思いながら、俺は意識を失っていた。

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