第398話 最終講義は魔力と階位の関係性




「さて、どこから話を始めたものか……」


 女王様を差し置いて最後の出番を奪ったシシルノさんだが、ちょっと思い悩む様子を見せている。


 話題が多すぎて絞り切れていないのは俺たちも似たようなモノだから理解出来るけど、せめて乗り込んでくる前で決めておけば良かったのに。

 あんまり引っ張ると女王様のご機嫌が心配になるけれど……、むしろ興味深々か。【魔力定着】の時もそうだったけど、女王様って俺たちと一緒で、魔力と迷宮関連の話題でも普通に乗っかってくるんだよな。


「ふむ、今夜は階位について考えてみようか」


「階位、ですか?」


「そうだよ、シライシくん。君たちはこれからペルマ迷宮を目指し、そして階位を上げる。そうだね?」


「はい」


 シシルノさんは話題の導入に『階位』を持ち出してきたのだが、ちゃんと相手を務めるのが文学オタな白石しらいしさんだ。

 役回りがわかっていて偉い。というか、白石さんもこの手の話題は好物だからな。


「シライシくんは十階位だから、ちょっとわかりにくいか……。さて、君たちの一部は十一階位だ。そこから十二階位になるためには、四層の魔獣をそれなりの数、倒さなくてはいけない」


「なんでワタシを見マスか?」


「なに、ミアくんは十一階位になってから数体の魔獣を倒しているはずだね」


「最後までくん付けなのが気になりマスけど、そうデス」


 視線をミアに移したシシルノさんの口は、段々と滑らかになってきたようだ。教授モードに入ったかな。


 十階位ではなく十一階位を持ち出してきたのだけど、さて、その違いはなんだろう。シシルノさんが白石さんをスルーしてまで対象を明確にしたんだ、そこには意味がある。

 ところでミアのこだわりなんだけど、たぶんムリだと思うぞ?


「ならばだ、仮に十二階位に必要な魔獣の数を二十としよう。その内十をここ、アラウド迷宮ですでに消化していたとして、ペルマ迷宮の四層でどれくらい魔獣を倒せば十二階位になれるのかな?」


「それは……」


 シシルノさんから戻ってきた視線を受けた白石さんが一瞬詰まる。


「可能性として挙げられるのは、二十か十のどちらかだ。だがもし、十だけで階位が上がったとしたらどうだろう」


 シシルノさんはそう言うが、俺たち……、というか日本でゲームをやっていきたメンバーの常識からすれば、答えは『十』となる。

 フィールドが変わったら溜めた経験値が引き継がれませんでしたなんて、最悪だからな。そういうゲームシステムってあるんだろうか。


 そしてなるほど白石さん、すなわち十階位組から視線を外した意味もわかる。十階位から十一階位は数体で達成されるから、シシルノさんは誤差を見込んだ。十一から十二ならば、その差は明確になるものな。



 けれどもこれについては『この世界』でもいちおうの答えが出ている。それでもシシルノさんはあえてそこから始めたのか。


「君たちも知ってのとおりで、答えは確実に『十』だね。なにもナハム師のような由緒ある二百年前の検証ではなく、今現在ですら証明され続けている明らかな事実として」


 さりげに過去の偉人を崇拝する連中をディスりつつ、持って回った言い方をするシシルノさんだが、これはもういつものことだ。前提条件を確認し、認識をしっかりと共有してから議論を回す。それがこの人のやり方だから。


 そして今回のケースでは実証は終了していると考えてほぼ間違いない。


 この国で迷宮に入る人間は、騎士か兵士、ステータスを求める貴族、運び屋、そしてさっき聞いたばかりのごく少数の冒険者だ。アウローニヤの場合、彼らは生涯に渡って迷宮を移動したりはしない。他国の冒険者は旅とかをすることもあるらしいけど。

 王国でもちょっとした配置換え、たとえば王都から南に飛ばされたとか、そういう話は結構転がっていて、その中にはシシルノさんの言うパターンに当てはまる人だっているのだ。


 そういった経験の積み重ねが、アウローニヤお得意の手法、『数字ではなく文言』で記録されている。

 ほかの迷宮からやって来た兵士の階位だけが早く上がった、なんていう文面で。


「魔獣を倒すことで得られた魔力は、ほかの迷宮に渡っても受け継がれる。そこでノキくん、君たち風に言ってもらえるかな?」


「えっと、はい。『経験値』なんだから引き継がれて当たり前、です」


 シシルノさんはさっき女王様との会話で腰が引けていた文系オタの野来のきを指名し、日本人的解答を要求した。

 また見事にそれに答える野来も大したもので、シシルノさんからしたら満点なんだろう、現に笑みが深くなっているのが誰にでもわかるくらいだ。


「そう、当たり前なんだ。君たちの使う『経験値』という表現は楽しいね。魔力ではなく経験を積み上げることで、階位が上がる。うん、面白い」


 どうしてシシルノさんがそんな表現にこだわるのか。


 これまでふた月以上を使って、とくに一緒に迷宮に入るようになったここ最近のシシルノさんは、新しい視点を持っている。正確には以前から気にはしていたが、俺たちと出会うことで考察を深めたというべきか。


 魔力というそこに在るモノと、経験という目に見えないモノ。


 笑い話みたいに聞こえるが、魔力は実体として存在している。なんといってもシシルノさんや忍者な草間くさま、そして直近で【観察者】の俺は、見えているのだ。

 ステータスウィンドウの無いこの世界では、経験値などという見ることもできない概念みたいなモノとはワケが違う。



 このあたりでクラスメイトたちにも理解が及ぶ。今回の授業のテーマがなんであるのかに。

 シシルノさんの最終講義は、魔力と階位の関係。もっと言えばそこにある謎。しかも『シシルノ説』が飛び出すことになるぞ、これは。


「迷宮を渡り歩いても、狩った魔獣の魔力は引き継がれたまま階位は上がる。そういう経験則があるからこそ、わたしたち研究者は『魔力の掌握』という言葉を使ってきた」


 懐かしい言葉だよな。アウローニヤで最初の最初にゲームシステムを教わった時、それを言ったのはヒルロッドさんだった。


 魔獣を倒し、魔力を奪い、馴染ませ、ある程度の量が溜まれば階位が上がる。すなわち魔力を掌握するということだ。

 今でも苦労をしているラストアタックシステムに憤ったものだよな。



「現実がそうなのだから受け入れよう……。わたしの興味は魔獣の発生や動態に向いていたのもあって、階位についてはそれほど気にしていなかったんだ」


 シシルノさんにしては珍しいセリフではある。受け入れるとか気にしていなかった、とか。

 そこに現れたのが勇者たちというわけだ。


「大した感慨も無く『見ていた』せいもあったのだろうね。だが、君たちと同行し、『経験値』という単語を聞いて疑問が浮かんだのはご存じのとおりさ」


【瞳術師】であるシシルノさんのユニーク技能は【魔力視】。そこにある魔力の量を重点的に見ることのできる能力だ。

 そんな技能と研究者としてのシシルノさんの思考、そこに俺たちという異物が加わった。


「君たちが後衛職の階位を上げる手法だよ。手法はふたつ。物理的な損壊に加えて、もうひとつは魔力的に魔獣を限界まで弱らせてから倒させる。顕著なのはナカミヤくんやヒキくんの【魔力伝導】かな」


「あの、俺も【魔力伝導】使いなんですけど」


 いいテンションになってきたシシルノさんにツッコミを入れることのできるのが、イケメンオタな古韮ふるにらだ。

 名指しされた真面目な中宮なかみやさんは苦笑いで、チャラいひきさんは継続してヘラヘラ笑っている。みんなも慣れたものだな。


「これは失礼をした、フルニラくん。では聞こう、わたしにはどう見えたと思うかな?」


「言いたいのって物理的な損傷じゃなくて、魔力を削って弱らせた魔獣の方ですよね? もちろん倒した時にはとっくに魔力は減っていた」


「そうだよフルニラくん。まさにそこだ」


 ホントさすがだよ、古韮。キチンと理解しているからこそ、シシルノさんの期待している解答ができている。


 観客となっているアウローニヤの人たちときたら……、微妙そうな顔をしているのってヒルロッドさんだけだな。ほかの人たちは興味深げで、地上サイドのアヴェステラさんすら聞き入る側になっている。



「魔獣を倒し魔力を奪うからこそ階位が上がる。なのにおかしいじゃないか。魔力が減った魔獣から得られる量と、ミアくんが矢を使って一撃で倒してのけた量は……、どうだったかな? ホウタニくん」


「はいっ! 変わりませんでした!」


 ズバっと指名されたロリっ娘な奉谷ほうたにさんは、ズビっと返してみせる。


「そう。ホウタニくんやシライシくんが担当しているように、勇者の諸君は全員の階位を狙って上げることを目的に、誰がどの魔獣を何体倒したのかを、記録している。するとどうだ」


「えっと、元気でもヨレヨレでも、同じ魔獣からなら同じだけの魔力がもらえてるって、なります」


「そういうことだね」


 立ち上がってまで元気に返事をした奉谷さんに歩み寄ったシシルノさんは、よくやったという風に肩に手を乗せた。なでなでできてしまう背丈の差がある二人だが、シシルノさんは俺たちを子ども扱いしない人なのだ。

 ただし自分が大人として、年下を心配するという感情も持ち合わせているのがこの人なんだけどな。そういうところは滝沢たきざわ先生と、ちょっと似ているかもしれない。



「ここまでの話を聞いてどう思うだろう。そうだな、ヒルロッド。君はどう考えた?」


「俺か。そうだね、一度に魔獣から得られる魔力はアレらの命をつなぐための最低限の量に限られる、というのはどうかな」


「ほほう! いいね。ヒルロッドもいいじゃないか」


「それはどうも」


 あぐらをかいて座ったままのヒルロッドさんは肩を竦めて答えるが、シシルノさんはその見解を本気で褒めているんだろうな。


 階位の上昇が魔獣からの魔力でなされるという前提と、奉谷さんの発言を組み合わせれば、たしかに出てくる結論のひとつだ。

 だけど問いかけられた瞬間で答えられるとは、上から目線っぽいけどやるじゃないか、ヒルロッドさん。伊達に現場を長くやっているわけではない。


「君たちが普段言っていることが耳に入るんだ。これくらいの想像はできるよ」


 俺と同じくクラスメイトたちから向けられた尊敬の視線に、苦笑を浮かべてよくわからない言い訳をするヒルロッドさんは、俺たちから受けた悪影響だとでも言いたいのだろうか。


 あんまり適切な答えを言ってしまうとシシルノさんに目を付けられて、今後苦労することになるかもだな。



「さて、そこに情報を付け加えよう。わたしの【魔力視】では各人の外魔力だがね、中途の状態を見たことがないんだよ。ちなみに内魔力については取得した技能の種類と数、使用状態、それらによる増減も含めることになるから意味を持つ把握など不可能だ」


 ここでシシルノさんが言っている中途の状態とは、たとえば十階位と十一階位の『中間的な量の外魔力』という意味だ。言うなれば十・五階位なんていう珍妙な階位を見たことが無いということだな。


「たとえば今この場でならば、十一階位になったばかりのアイシロくんと、そこから幾ばくかの魔獣を倒したはずのナカミヤくんの外魔力量は、わたしからはほぼ同一に見える。同じ十一階位だからと、これまでは気にしていなかったんだ」


 いよいよシシルノさんの説が核心に迫りつつある。

 この先をある程度知っている一年一組の面々ですら、引き込まれてしまいそうな語り口が実に楽しい。


「引き換え、十一階位のワタハラくんと十階位のミヤマくんには明らかに差がある。これがあるから相対的に相手の階位を判定できるという副次効果が得られるのは皮肉だね。それに頼ったこともあるというのに、言い草かな」


 名前を呼ばれた綿原わたはらさんのサメがピクリと跳ねるが、ぼんやり系の深山みやまさんはポヤっとしたままだ。


 シシルノさんによる相対的外魔力判定は【神授認識】のように確実ではないにしろ、おおよその階位を測ることができる。

 お陰でハシュテルに襲われた時とか、総長戦で相手の階位を知ることができて、指揮する側の俺としては大助かりだったのが記憶に新しい。俺の【魔力観察】や草間の【魔力察知】では補えない部分だな。



「ではヒルロッドの言う最小限度であれど、取り込んだ魔力はどこに保存されているのだろう。迷宮を変えても中途の状態は保持されるのだから、ナニカが体に取り込まれているのは間違いないとわたしは見ているのだが」


 そう言うシシルノさんだけど、ひとつ矛盾というか疑念になる要素を残しているのは、あえてなんだろうなあ。もったいぶるのはシシルノさんの得意技だし。


「なにか言いたそうだね、ヤヅくん」


「頑張ってね、八津やづくん」


 なんてコトを考えていたらシシルノさんにバレたのだろうか、名前を呼ばれてしまう。やらかした。

 すかさず横から励ましてくれた綿原さんの眼差しが眩しい。


 さっきの中宮さんとヒルロッドさんじゃないけれど、タイマンムードに引きずり込まれる予感を感じながら、俺は立ち上がる。



 ◇◇◇



「えっと、『勇者チート』でいいですか?」


 緊張もあってか俺の口から出た単語は淡白だった。というか、初手からいきなり踏み込みすぎだろうか。

 これこそシシルノさんがあえて出していなかったネタだろうと思ったから口にしたのだけど、さあ、どうだ。


「そうだね。さっきのヒルロッドの意見では、勇者の持つ大きな内魔力量、すなわち『勇者ちーと』が説明し難いんだ。ああっと、決してヒルロッドを卑下しているわけではないのでその点は承知してほしいかな」


「こういう会話で君たちに勝てるとは思っていないさ。気にせず続けてくれていいよ、ヤヅ」


 嬉しそうに返すシシルノさんはヒルロッドさんにいちおうのフォローを入れる。

 どうやら俺の選んだ単語は正解をもらえたらしい。


 ヒルロッドさんも気にした様子がないので一安心かな。『勝てる』の部分で中宮さんがピクリとしたが、さっきの模擬戦の件はもういいじゃないか。


 俺たちの持つ『勇者チート』は、単純に内魔力量が大きいのではなく、階位上昇時の増加量も一般に比べて多いというのが最大の特徴と言っていいだろう。


 初期値でも大きかったのだけど、増加量というところがこの話題でのミソだ。ちなみに外魔力量は初期値でも増加量でも普通のアウローニヤの人と比べて変わらないというのがしょっぱい。

 外魔力の増加量もチートだったら、一年一組の仲間たちは今頃二十階位相当のパワーを持つ、正真正銘の俺たちつぇぇをやっていたはずだ。



「勇者という存在が特別で、階位が上昇する時にこれまで貯めていた魔力を、効率良く内魔力として取り込めているという考え方もできるのだけどね。裏を返せば我々はせっかくの魔力を無駄にしていたとも言えてしまうのが、悔しいかな」


 ほんと、さっきからシシルノさんのセリフが長いな。完全なマッドサイエンティスト状態だ。


 さておき、勇者とアウローニヤの一般人とでは、階位が上がるのに必要とされる魔獣の数は変わらない。そう、三層で大丸太を四体くらい倒せば、勇者でも普通の兵士でも七階位から八階位になれるのだ。これは平等なのか不平等なのか。

 大物と小物で必要な数に差こそ出るものの、それこそ合計必要魔力量という視点ならつじつまがあうところがな。


 なのに勇者がレベルアップした場合のMP増加量が多いというのは、魔力掌握論としてはどうなんだろうということだ。

 俺たちが異世界からやってきた特異体質の持ち主だからと言ってしまえばそれまでだけど、シシルノさんの話はそこで終わらない。そういう例外を認めるような結論にしたくないんだろうな。


 もしかしたら遠慮しているかもだから、背中を押してあげるとするか。


「あの、シシルノさん。【魔力観察】なら大丈夫です。実はさっきヒルロッドさんと中宮さんの模擬戦で使ってましたから」


「ヤヅくん……」


 今さっきまで狂的な空気を纏っていたシシルノさんが一気に態度を変えて、痛ましい眼差しをこちらに向けてくる。周りの人たちも多かれ少なかれといったところかな。

 表情を変えていないのは模擬戦の時に近くにいた綿原さんやミア、海藤かいとうあたり。むしろ事情を察した夏樹なつきや奉谷さんなんかはニコニコだ。


 おう、俺は大丈夫。みんなのお陰で元気だぞ。



「俺の見た限りですけど、魔獣を倒した時に魔力の移動なんてのは見えませんでした。気付いた範囲で色の変化もありません。ただ、倒れた魔獣の色が薄まったかな、っていうくらいです」


「……ありがとう、ヤヅくん。それはつまり、わたしの見え方と矛盾しないということだね」


「はい。俺やクラスのみんなは……、シシルノさんも近いことを考えているんでしょうけど、階位を上げるためには、魔獣の魔力は直接的に必要ないんじゃないかなって、思っています。俺たちはそれに対する答えみたいなモノが想像できるので」


「ほう?」


 いったん落ち着いたシシルノさんの表情が劇的に変化した。

 狂的モードというよりは、誕生日プレゼントのラッピングを破きそうになっている子供みたいな。


 そんなシシルノさんを見た一年一組のメンバーはとても楽しそうにしている。うん、プレゼントは大事だからな。

 対して引いているのがアウローニヤ勢か。なぜか滝沢たきざわ先生もそっち側だったりするようだけど、こういうのは年齢が影響するのだろうか。


「せっかくですし、シシルノさんの考えを先に聞かせてください」


「花を持たせてくれるのか、それとも道化をやらされるのか、どちらにしても最高だね」


 そういうところが、やはり俺たちのシシルノさんだよな。



「わたしは、そうだね……。『経験値という情報』、かな」


「うおっ!?」


 シシルノさんの放った決定的な単語に、俺は大ダメージを食らって後ずさる。


「マジかよ」


「すごい」


「やるじゃん、シシルノさん」


 ある程度考えを共有していたクラスメイトたちも、これには絶賛の声を上げざるを得ない。


「なに、数値化にこだわる君たちに感化されただけさ。何より経験『値』という表現が気に入ったものでね」


 完全にドヤモードになったシシルノさんは胸を張り、そして早口だ。魔力オタかよ。


 そう、俺たちは『経験値』という単語を日本語でなく、フィルド語で表現してきたのだが、しっかり今回の講義の冒頭でシシルノさんは前振りしていたわけだ。

 それにしたって『値』と『情報』ときたものだ。そのものズバリじゃないか。魔力という観測できるブツが目の前に広がっているというのに、そういう目線を持てることに驚きだ。


 これについては、もちろん俺たちが優れているとかそういう話ではない。

 単にRPGとかで経験値という概念を知っていたから、普通に思い浮かんだだけで。



「およそ魔力的な何かだとは思うのだけど、わたしたちが魔獣を倒して取り込んでいるのは、魔力そのものではなく──」


「どんな魔獣をどれくらいの数、ついでにもしかしたら、どうやって倒したかという、記録」


「しかりだよ。ヤヅくん」


 いやあ楽しい。シシルノさんがこうやって俺に会話のパス回しをしてくれるのが、なんとも心地いいな。立ち上がってタイマンに挑んだ甲斐があるというものだ。


 どうだい綿原さん、白石さん、見てくれているかな?

 ほらほら、古韮、野来、夏樹、羨ましいだろう?


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