第14話 先輩と添い寝 ツー

 シャコシャコと歯を磨く、私と先輩。

 二人並んで鏡の前で歯ブラシを動かすさまは、周りから見たら一種の恐怖光景だろう。


 にしても先輩、歯磨きの仕方丁寧だなぁ。

 

 口に溜まった歯磨き粉と唾液の合成物をを吐き出し、うがいをする。


 「先輩、添い寝はやめましょう!」


 「ん?ダーメ。決定事項だし、私達一人ずつ寝る所ないもん、家に。」


 「床でいいです。何ならトイレでもいいです」


 どうにか逃げないと、寝られる気がしない。


 「さっきも言ったけど、私の居心地が悪いからヤダ」


 ギュッと先輩が私をハグする。


 「それに、私寂しがりやだから……」


 先輩はズルい。私が、そんな事言われて断れない事を知っていて言っている。


 「っっっわかりました。添い寝!しましょう」


 その後洗面所から先輩の部屋に移動する。

 

 私は先輩の部屋のベットの上に乗る。

 二人で寝るには少し狭いが、奥まで詰めて転がれば寝ることは出来る広さだ。


 布団を被り、先輩が入る所だけ布団を捲る。


 そして掌で、ベットをポンポンと叩いて


 「はい、先輩来ていいですよ」


 これで先輩から攻めてくることはないはず……。

 私のペースに持ち込めれば、勝てる!!


 「ふーん?ふーん、そういう事するんだ?」


 あれっ?先輩から異様な圧が……。


 「いい度胸だね?渚」

 

 「先輩、怖いですよ?」


 笑っているのに怖い。

 何さらるんだと身構えていると


 「ふふん」


 先輩が鼻を鳴らし、ベットの上に乗ってくる。

 シーツの擦れる音だけに支配された部屋。


 「ちょ、先輩?」


 「シー」


 先輩は布団の中に入らず、私の上に覆いかぶさってきた。口の前で人差し指を立てている。


 見上げる私と、四つん這いで私を見下ろす先輩。

 

 先輩が数秒止まったあと、私の顔に顔を近づけてくる。


 えっ?えっ?えっ?!?!


 「渚、赤くなって可愛いね?」


 耳のすぐ横で先輩の声が、吐息が聞こえる。


 「先輩っっ///」


 かろうじて声を出し、抵抗しようとする。

 そうだ、手を動かして先輩を押しのけてしまえばいい。


 けれど私の手が動く瞬間、先輩の手が私の手を掴んだ。


 「ダメだよ?」


 先輩が甘すぎる声で耳元で囁く。

 辞めて……溶ける、脳が溶けちゃう。


 「先輩っっ、降参、降参だからぁ///」


 「ふふっ、可愛いね?焦っちゃってさ」


 やばいやばいやばいやばい。

 どんどん逃げられなくなる。


 私の手が動かないことを確認して、先輩は私の頭を撫でる。


 さっきの耳元囁きで、完全にやられた。


 しかも先輩撫でるの上手すぎて、キモチイイ。

 

 先輩の匂いに包まれて、耳元で囁かれて、頭を撫でられて、壊れちゃいそうなくらい心地良い。


 「いいよ?墜ちても……」


 堕とされる、先輩に堕ちる。

 

 「お願いですっ。離して……」


 「んー?ダーメ」


 ギュッと更に包まれるようにハグされる。


 その瞬間意識が真っ白になった……。

 



 


 




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る