第12話 泊ってくの?
髪を乾かしてもらい、脱衣所から出る。廊下には母さんが、作っているであろうご飯の匂いが漂っている。
後輩は何故か私の後ろで器用に私の髪をいじってりながら歩いている。
リビングのドアを開ける。
「あがったよ」
「あら、おかえり。ご飯もうすぐ出来るから机の上準備して」
「はーい」
机の準備をして、料理を並べる。
食べ始めると後輩が驚いたように言う。
「紫苑さん、これ味付け後で教えてください!」
「いいわよ。渚ちゃんはよく料理するの?」
「します。楽しいですから」
私はあまり料理をしないから、二人の会話に入れない。
そのため、黙々と箸を進める。
「渚ちゃん今日は泊まっていきなさい」
「ゴフッ」
お茶を飲んでいるときに、とんでもない事を言って来た。
「ちょっと燐、汚い」
「ゲホッゲホ、……母さんが変なこと言うから」
「変なことは言ってない。もう遅いし、明日も休みだし、なにより私が話したい」
そうですか。相変わらず自由な人だ。
「渚は大丈夫なの?なにか予定があったりとか」
「問題ないです。ただ、服とかは貸して頂けると嬉しいです」
渚も渚で、結構自由だな。
「まぁ問題ならいいけど……。」
「何であんたが許可してるのよ。私の家よ?」
「普段居ない癖に」
「言うようになったわね?」
そりゃもう高校生ですから。
「家って布団のあまりあったっけ?」
「ないわよ。あんたのベットでいいんじゃない?」
「いえ。別に私は床でも……」
渚が遠慮しているが、こちらが泊めておいてそれは良くない。
「あーそれはダメ。私の気が済まないから」
「先輩でも……」
まぁ、私の寝床は寝るときに決めればいいや。
「いいよ、気にしないで使って…。ごちそうさまでしたっと」
「お粗末様。流しに置いておいて。洗っておくから」
言われた通りに置いておく。
料理のこととか話したいだろうから、先に部屋に戻って居よう。
先輩が部屋に戻っていく。多分気を使ってくれたのだろう。
先輩がドアを閉めて少したら紫苑さんが口を開ける。
「渚ちゃん。燐とは仲良くできてる?」
「それはもう、良くしてもらってます」
答えた途端に紫苑さんの顔が俯く。数秒沈黙が続く。
「……あの子は人を信じたり頼ったりしないから、どうか見ておいて欲しいの」
「っっ」
紫苑さんは分かっている。過去の出来事で先輩の心が壊れたことが。
今、先輩が誰に対しても優しいのは、自分の隙を、弱点を見せないためだ。
「私は人の変化に疎いから、何かあったら教えてほしいの。……あの子をもう失いたくないから。他でもないあの子が、仲良くしている貴方にお願いしたいの」
「紫苑さんの気持ちは理解しています。私だって失いたくないです」
先輩は飛べなくなった。その羽を、きれいな羽をもがれてしまったから。
「でも、縛ることはできません。たとえ私が一番先輩から信じられていたとしても、それは出来ません」
紫苑さんは先輩を堕とせ、もしくは依存させろと言っている。
そうして私という縄で縛ることで、目に見える範囲で守ろうとしている。
「そう、そうね。私が間違っていたわ。ごめんなさい」
「間違っているとは思ってないです。過去に紫苑さんは、私たちよりも遥かに苦しい思いを経験してます。そこからの結論がそう行きつくのを間違いとは思いません。…………ただ、私には出来ません」
だって私は…………
あの美しい鳥を見てしまったから
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新年か……SS書こうかな
この先また話が重くなるかもです(予定は未定)
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