第9話 もがれた翼
「燐、決めて!」
私はネットから顔が出るくらい飛ぶ。テンポは最高、ボールが私の掌の前にくる。
ボールを掌で押し出す。狙いはコートの右奥だ。
「はっ!」
バチーンと音がして、ボールは狙った位置に飛んでいく。決まった!
「ナイス燐」
「いいアタックだったよ」
仲間が褒めてくれる。嬉しい気持ちでいっぱいになるが、まだ気は抜けない。なぜなら勝負は最後の最後まで分からないからだ。
試合後、仲間と話しながら帰路を辿る。試合は何とか勝つことが出来た。その喜びを分かち合うようにして皆で笑いあう。
「燐今日は絶好調だったね」
「うん、いつもよりコートが見えたんだ」
「今度の試合もよろしくね!われらのエースさん」
「やめてよ……そんなじゃないから///」
「照れてますなぁ燐君」
試合の次の日
今日は月曜日。昨日が試合だったけど、次の試合も近いため今日も部活だ。
授業後に部活のため体育館に行くと、怒鳴り声が聞こえた。
「調子に乗ってるんじゃないよ、後輩どもが!」
「いまさら、先輩面ですか?」
「あたしたちはこの夏で引退だ、次の試合に出るのはあたし達のべきだ」
揉め事だろうか。とりあえず顧問の先生を呼んでこよう。職員室に向かおうと背を向けたところで声をかけられる。
「おい!あんただろう。こいつらをまとめているのは」
声のほうに振り返ると背の大きい先輩がこちらによって来ていた。
「……何の用ですか?」
「ちっ、次の試合に出るのあたし達でいいよな!」
圧が強い先輩だな、今までほとんど部活に顔を出さなかったのに……
「それを決めるのは先生です。交渉なら先生にして下さい」
「気に入らないな。そのすかした態度」
情緒不安定だなぁ。できればこれ以上関わりたくないんだけど。あと後輩である人間を先輩三人で囲うなよ。
「気に入らないと言われても……」
「気に入らないと言えば……あんた亮君に告白されたんだっけ?」
亮君?昨日呼び出してきた人かな?
「返事、どうしたん?」
「断りましたけど…」
何が気に障ったのか先輩はまた一段と怒気をはらんだ声になる。
「断った?生意気過ぎあんた」
訳が分からない。知らない人から告白されてok出す人なんていないだろうに。
「はぁ~。もういいや。気悪いし帰ろう」
連れと共に体育館から去っていく先輩。それをあたしは特に気にすることなく練習に取り掛かるのだった。
次の日からが私の悪夢ともいえる日常の始まりだった。
はじめは何てことなかった。上履きを隠されたりする程度だった。でも段々それは悪化していった。
教科書がなくなる、悪戯の手紙が大量に下駄箱に入っている、机に落書きをされる、トイレ中に水をかけられる。
犯人は分かっていた、だから一人で対処しようとした。
それが間違いだった……。
ある日、一通だけ入っていた下駄箱の手紙に場所が指定されて呼び出された。これ以上こういう事をされるのを面倒に感じて、呼び出しに応じて話を着けようとした。
その場所に行くと、件の部活の先輩達がいた。何やら話し合っているようだ。
「ほんとに来たよ……」
「いいじゃん。好都合だよ」
……
「こんな場所に呼び出して何の用ですか?」
下卑た笑いを浮かべ、楽しそうに話す先輩達。
「お前が居なけりゃ亮君はあたしのものだったし、部活のエースの座もあたしのものだった。」
「お前が邪魔なの…」
まずったかな、体格差もあるし三対一じゃ分が悪すぎる。それにここは人がほとんど来ない。
とはいえ、たたでやられるわけには行かないので応戦出来るように構える。
構えた途端に二人がこちらに走ってくる。左のほうがやや早い、ならそっちを先に……
対処法は簡単だ、走ってきているのだから足を払ってしまえばいい。
けれど、それを実行することは叶わなかった。
突然後ろから出てきたもう一人に私は捕まったからだ。
そこから先は言うまでもない。一方的に学校生活で見えにくい部分を殴られ、蹴られる。
どうにか体を動かして逃げようとするがそれもできない。
しかしその逃げようとする動きが癪に障ったのだろう。
「燐って言ったっけ。部活にもう二度と参加できないようにしてあげるね?」
ぼきっっ
私の左足は二人掛かりで骨を折られた。あまりの激痛に悲鳴が出る。
「っっーーー」
手で口を塞がれて悲鳴がかき消された。
先輩達はニコニコと笑っている?殺されるかもしれないと思った、思ってしまった。
その途端に涙があふれ出て、体から力が抜けてしまう。
「あれっ、泣いてる?」
「キャハハ、いい気味だね」
もう、や、めて……
「何か言ってるよ?」
「まだまだやり足らないっての!」
また殴られる。
も、う、やめ……。だ れか、た、すけ……て。
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先輩の過去重く書きすぎました。
なので二話投稿です。次話で中和してください。
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