第6話先輩はよわよわ

 先輩の顔を手で支えるようにして、私のほうを向かせる。顔が赤く染まっていて、クリッとした可愛い瞳が潤んでいる。口がパクパクとしていて、顔以外の時が止まったかのように微動だにしない。


 まだ、この状況に混乱しているのだろう。それもそうか。いきなり私に抑えられて、キスする寸前の距離まで近づかれて、キス待ち顔まで撮られた、この状況をすぐに整理できるわけがない。


 突然先輩の足から力が抜けたのか、先輩は座り込んでしまった。まるで漫画で描かれる腰が抜けた描写のように。


 私は先輩を見下せるように、膝を付く。先輩が私のしゃがむ動作に気付いたのか、こちらに視線を向けた。


 「どうしましたか、先輩?ドキドキしすぎて腰が抜けちゃいました?」


 「そんなことっ///」


 先輩が何かを言おうとしていたが、その前に抱き寄せる。先輩の顔が私の胸に埋まるようにして。


 じたばたと抵抗するかと思ったけれど先輩は特に動くことなく、私の胸に顔をうずめていた。


 「先輩はよわよわで可愛いですね。だから駄目ですよ?むやみやたらに優しくしたり、勘違いさせることしたら。先輩は基本何でも出来る人ですけど、そういう色恋沙汰には疎いでしょう?」


 先ほど言いたかったことを先輩に話す。先輩は何でも出来るし、外見も良いし、性格もノリがよく、相談事なんかは真剣に聞いてくれるから男女問わず人気だ。

 

 そんな人が自分に優しくしてきたら誰だって勘違いしてしまうものかもしれない。   

 だからこれは先輩が悪いのだ。


 「ちゃんと一線は引てください。わかりましたか?」


 コクコクと頷ている先輩、顔は見えないが耳がまだ赤いので、照れていることがわかる。


 私は先輩の赤く染まった耳に手を伸ばし、耳たぶをスリスリと触る。先輩は今何も見えていないからか触れるとビクッと反応した。


 先輩は、相手が嫌がらない程度に揶揄うことを結構する。その癖して、今のように自分が攻められることに滅法弱い。


 耳から手を離し、先輩の長い黒髪を手で梳く。またも先輩の体が跳ねるが、今度は私にもたれかかるように体重を任せてきた。


 「先輩、髪触られるの好きなんですね。知りませんでした」


 先輩はもう返事をしない、ただただ頷いて私との会話をしている。


 左手で抱いている先輩の腰はしなやかで、規則的に上下するその体をいつまでも抱きしめていたいと、離したくないと思ってしまう。


 私がこんな濁りきった感情を向けていたのは先輩だけだ……。


 【そうだ!どこにも行けないようにしたら、先輩はずっと私の物になる】

 

 中学の時に先輩に対して抱いていた、この感情は少し落ちついてきている。今でも先輩を独占したいと思ってしまうが、それはもうどうしようもない。


 だって…………私はそれほどまでに先輩が










        好きだから。





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 これはヤンデレタグが必要かもしれない……


 


 

 


 


 


 

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