第3話 後輩と放課後に……
金曜の朝だ。日光が差し込み私の顔を照らす。私は日光から顔を背け、テーブルに置かれたスマホを取り、時間を確認する。
時計は7時を示していた。ベットから出てリビングへ向かう。いつものように、パンを焼き、バターを塗って食べる。
身支度を整えて、8時に家を出る。扉を閉めて鍵をかけたところで声をかけられた。
「先輩、おはようございます。」
後輩の渚だ。仲良くなってからはほとんど毎日一緒に登校している。緩く吹く風に髪をなびかせながら、挨拶をしてくれた。
「おはよう、渚。」
私も挨拶をする。渚と挨拶をすると、一日の始まりという感じがする。
「先輩、昨日は夜にいきなりすみませんでした。」
「いいよ、暇してたしさ。それにご飯そっちで食べていいんでしょ?」
「はい、私が腕によりをかけて作りますから、期待しててください」
「それは楽しみだね。期待しておくよ」
実際後輩の料理は美味しい。何度かご馳走になっているけど、そのたびに美味しさがレベルアップしている。それを定期的に後輩が誘ってくれるから、ついつい食べてしまう。どうやら気づかぬうちに後輩に胃袋を掴まれているみたいだ。
そんな話をしながらのんびり歩いて、学校へ。
「先輩、また放課後に」
「おっけー」
後輩と別れ、靴箱へ。靴を変え教室に向かう途中で、友達がよってきた。
「燐、おはー」
「紗季、おはよ。今日は早いね、いつもぎりぎりで教室にくるのに」
「今日は見ての通り呼び出しをされて、大量の課題が…(;´д`)トホホ」
紗季はギリギリで来ることが多いため、遅刻になることもしばしばある。今日は遅刻の件で担任に呼び出されていたらしい。手にはそれなりに量がある課題を持っていた。
「そうだ!燐。今度ご飯おごるから課題手伝って、お願い!」
「それ、いつ提出?」
「明日の朝に出せって。だからお願い。ね?」
「休み時間にやろう。今日は用事があるから放課後は無理」
「燐マジ神!ありがと、助かる」
「ご飯何おごってもらおうかな?」
「うぐっ、高すぎるものは勘弁ね?」
紗季と話していると鐘が鳴った。みんなが席に戻る。さて、今日を乗り切ったら休みだ。頑張ろう。
放課後、私は校門で後輩を待っていた。スマホの画面をスライドしてニュースを眺める。後輩が来るまでの暇つぶしだ。
「先輩。お待たせしてすみません」
にゅっと後輩が横から生えてきた。
「うわっ!」
「うわって何ですか。そんなに集中して何見てたんですか?」
突然声をかけられて驚いてしまった。まだ心臓がバクバクしてる。落ち着かせるために深く呼吸する。
「ごめん、ニュース見てて気付かなかった。でもいきなり横から来ないでよ…」
「先輩近づいても気付かないから。ちょっと悪戯心が……」
てへっと後輩が笑う。その仕草に、少しだけドキッとしてしまった。ウーム…可愛いな後輩。
「先輩?せ・ん・ぱ・い?聞いてます?」
少しボーっとしていたようだ。
「何かな後輩?」
「もー、ちゃんと聞いててくださいよ。今日のご飯何が食べたいですか?」
「難しいことを聞くね。……これから買い物行くし、そこで決めてもいい?それまで考えさせて」
「それもそうですね。今決めても心変わりするかもですし」
「そうそう。さて、そうと決まったら行こうか」
学校から離れて、ショッピングモールへ向かう。そこまで遠くない距離のためあまり考える時間はない。私は考え込むとどうしても無言になってしまう。
後輩のほうに顔を向けると、後輩もこちらを見ていた。ニコッと微笑んで後輩が聞いてきた。
「考えていますね、先輩。家も近いですしいつでも作るので適当に決めてくれていいんですけど……そうだ。もし、決まらなかったら今日は先輩の好きな料理にしましょうか」
「そりゃ考えるよ、渚の料理美味しいから。それと作ってもらえるのは嬉しけど回数が増えるのは申し訳ないというか」
「ふふっ、気にしないでください。料理は好きですから。それと先輩と一緒に食べるのも好きなんです」
「ありがと、それと今日はカレーにしよう。今決めた」
「先輩の好物ですね。いいですよ」
後輩が微笑む。見透かされていたかな、これは。なんだか負けた気分だが、気にしても仕方ない。モールの中に入っていく後輩の背を、私は足早に追うのだった。
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