第3話
アレクサンダーはレイモンドを1度だけ睨むとすぐに笑顔になり、レティシアのもとへと歩いていった。
「レティ、大丈夫かい?」
少し心配そうにしながらもレティシアの手を握ったアレクサンダーはそう言った。
「ええ、平気ですわ。来てくださってありがとうございます。アレク様」
照れながら答えるレティシアにアレクサンダーは優しく微笑んだ。少しだけ2人だけの世界が続いたあと痺れを切らして、レイモンドが口を開けた。
「どうして叔父上がここにおられるのですか?これは俺たち婚約者の問題です。」
レイモンドの言葉にアレクサンダーは少し怒りのこもった声で言い返した。
「レイモンド、レティは俺の婚約者だ。だから俺はここにいる。」
レイモンドは少し怯えながらレティシアを見た。
「本当のことですわ。」
レイモンドの視線に気づいたレティシアがそう答えた。だがレイモンドはそれでも気に入らないようでアレクサンダーに少し怯えながらも言い返した。
「それが本当のことだとしても、レティシアがモニカをいじめた事実は変わりません。」
さっきまで固まっていたモニカもそれに同調して発言した。
「そうです!私は本当にレティシア様にいじめられました。アレク様も信じてください。」
会場が一気にざわついた。許しを貰ったわけでもなく婚約者でもないのに王族を愛称で呼んだのだ。不敬罪で罰せられても仕方がない。これにはレイモンドもさすがに焦ったようでオロオロしていた。
「俺を愛称で読んでいいのは家族と婚約者だけだ。君が呼ぶことは許していない。」
低い声でアレクサンダーがモニカに警告をするとモニカは一瞬ビクッとして泣きそうになりながら話し始めた。
「ご、ごめんなさい。でも本当にレティシア様にいじめられたんです。アレク…サンダー様なら信じてくださいますよね。」
モニカはとうとうポロポロと泣き始めた。その様子をみてアレクサンダーは大きくため息をつくと、モニカの問に答えた。
「なぜ俺が君のことを信じなくてはいけない?そもそもレティが君をいじめる理由がないじゃないか。」
レティシアも大きく頷いた。レティシアはモニカをいじめる理由もなければ、面識もあまりない。そもそも疑われる理由すらないのだ。だがモニカは自信満々に言った。
「私が可愛いからアレクサンダー様を取られてしまうと思ったんですよ。」
「そうだ。モニカが可愛いから嫉妬したんだ!」
レイモンドもさも当たり前かのようにそう言った。その言葉にアレクサンダーが怒りを感じ、発言しようとした時、卒業パーティーのお祝いにやってきた国王が会場に入ってきた。
婚約破棄されましたが身に覚えがありません 愛石 しずく @szk3175
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