第2話

しばらく固まっていたレイモンドだがハッと気がついてレティシアに言い返した。

「婚約者ではないだと?そんなわけあるか!嘘をつくでない。」

先程の言葉で理解したと思っていたレティシアは呆れたような顔をして言った。

「嘘ではありません。確かに昔、殿下の婚約者候補ではありましたが今はもう違います。別の婚約者がおりますので」

これで理解して貰えただろうとレティシアは思ったが、レイモンドは思ったよりも頑固でまた続けて言った。

「はっ!苦し紛れの言い訳か?王子であるこの俺が間違えているわけないだろう。」

その発言にレティシアは顔をしかめた。言い方は悪いがこんな人はこの国の王子なのかと心配ですらあった。仕方なくもう一度説明しようとすると

「もうやめてください」

という小さな声が聞こえた。その言葉を発したのはレイモンドの隣にいるモニカという令嬢だった。

「もうやめてください!レティシア様はなぜそんな嘘をつくのですか?もう素直に認めてください。謝れば許して差し上げますから!」

そう叫んだ令嬢はレティシアのことを少し睨みながらもレイモンドの影に少し隠れていた。

そしてそんな彼女の言葉にレイモンドが待ってましたと言わんばかりに喋り始めた。

「モニカ!なんて優しいんだ!こんな優しい彼女のことをいじめていたなんて…レティシア!いい加減自分の悪事を認めるんだ!」

その言葉で周りが静まり返り、レティシアがいい加減にして欲しいと思いながらも冷静に発言をしようとした時、会場のドアが空いた。

「いい加減にするのはお前の方だ レイモンド」

そう言いながら会場に入ってきたのはこの国の国王の弟、王弟 アレクサンダーだった。

「叔父上がどうしてここに…」

レイモンドは青ざめた顔をしていた。しかし、レティシアは嬉しそうな輝いた笑顔を見せていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る