第4話

家に着いて荷物を下ろし直ぐに自室のゲーム機を起動する。ただ、表現としては起動していたという方が正しいだろう。


俺にとってゲームを起動することはルーティーンになっているので家に入って靴を脱ぐのと同じように意識して行う事ではなくなっているからだ。もはや1種の病か何かなのではないかと思えてくる。


開いたのは昨日と同じFPSで日中大型アップデートが入ったので新しい環境を存分に楽しむ気でいた。


「えぇ…俺開いたばっかりなんだけどな…」


ゲーム画面を見ると昨日遊んだLさんからパーティの招待が届いている。


最初は1人で遊びたさもあり少し悩んだが昨日気軽に誘ってくれと言ってしまった事もあり招待を受けることにした。

ゲーム仲間が増えるのは喜ばしい事だしな。


「こんにちは。昨日は試合後招待断っちゃってすみません。よろしくお願いします。」


こちらのボイスチャットに気づいてLさんのボイスチャットもONになる。


「全然大丈夫です!こちらこそ無理を言ってしまってすみません。よろしくお願いしますね!」


別に睡魔を無視すればやれないこともなかったのだが…ただそんなやりとりをし続けていたら一向に話が進まなそうなので話題を変える事にしよう。


「そういえば新しい環境になってもうプレイしましたか?」


「まだプレイしてないのでとっても楽しみです!ただ1人でやっても何がなんだが分からなそうなので実はikutoさん始めたりしないかなーってちょっと待ってたんです!」


どうやら昨日の1試合で妙に懐かれてしまったらしい。素直に嬉しいが直接そんなことを言われると少し照れくささもある…。


「じゃあタイミングが良かったですね。早速試合にいっても大丈夫ですか?」


「はい!準備オッケーです!あっ...」


「どうかしました?」


「その...少し失礼な事を聞くのですがikutoさんっておいくつなんですか?」


急に年齢なんて聞いてきてどうしたのだろう…。あまりに歳が離れていたら一緒にやる事に抵抗が生まれてしまうとかだろうか…


「今年で16歳になりますね」


「ほんとですか!?じゃあ私と同い歳だ!」


どうやら彼女も俺と同じ高1なようで声のトーンからも一緒にゲームをする事に抵抗が生まれた訳ではなさそうで一安心だ。


そんな不要だった心配をしていた俺に対しLさんは少し緊張した様子でとある提案をしてきた。


「じゃあよかったらお互い敬語やめない?敬語ってどうしても距離感じちゃうし…もし不快に感じるようであれば敬語のままでもいいんだけど…」


と、先程までとは打って変わって砕けた言葉使いになっている。別にタメ口で話しかけられる分にはいいのだがこちらがタメ口を使うとなると同い歳でさらに女子という条件はコミュ症の俺には少しハードルが高くなってしまう…


「がんばる…ます」


「ふふっ無理しないでもいいからね!」


いつかちゃんとした日本語と共に打ち解けた言葉使いで話せるようになることを願うとしよう…。






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