第68話野心

相変わらず うつ向きながら会話を続ける2人


中田議員「はぁ〜 ありがとうございます。でも私は具体的な目標が定まってないのが本音です…自分でも当選するとは思ってなかった…この国に不安と違和感を感じて

まずは当選する事だけを目指してました…達成して 議員になったのに そこから先は どうするか…持ち主不明の家や土地を使う案も偶然 前職の知識が役に立ったにすぎません…」


「あ〜その気持ちは 分かります…思考が似てるんですから…ハハハ

言われた事だけ やっていても成長しませんから目標をたてる。実際 中田さんは見事に議員になった。

では次の目標が必要ですね…目標は高く…アナタは総理でも目指しなさい…ハハハ」


中田議員は少し驚き顔を上げる

番場と堀田が会話に参加してきた


番場「バカか…抽選でしか現状 総理になれない」


堀田「そうですよ…それに失礼ですけど中田さんには無理です…」


「堀田さん…彼に本当に失礼ですよ…

抽選総理なんて 続くか わからないじゃないですか…現状のルールでも副総理までは行けますよ。」


中田「いえいえ…私には そこまでは無理ですよ」


「そんな事はない…当選を続ければ貴方には まだ30年以上 時間がある。

私は いずれ 貴方を大臣に任命するつもりですよ。」


これには3人共驚く


堀田「はあ〜? 本気で言ってます?」


「はい…本気です。但し…特別扱いは

しません。

萩原チルドレンなんて私には いらないです。しっかり成果を出してください。

副総理が言う農業輸出大国にするのは時間が かかる…まずは その地盤作り…国内の農業活性化 元路上生活者の方々の職業支援…つまり私の掲げた第1の政策 貴方が統括リーダーで問題解決してください。

期限は後1年です」


番場「それは さすがにハードルが高すぎる…」


堀田「そうですよ…我々が路上生活者を早々に最低限の生活まで引き上げられたのも首都圏に集中していたからです…」


番場「建設業や派遣が 全国的に分散した中

農地開拓などは人手が足りない…全国的な問題は残り1年では間に合わない」


「そうですね…今のペースだと間に合わないと思います。

予算は出します。間に合わない…足りないなら どうすればいいか考えて間に合わせてください。実現出来たならば大臣にします!

今回 中田さんを統括リーダーに選びましたが第1の政策チームで貴方より先に 炊き出し支援の案を出した男性議員と震災時備蓄食料を使う案を出した女性議員も大臣候補予定です。3人共大臣に選ぶかも知れませんし1人も大臣に選ばないかも知れません。

中田議員が1年で実現出来る見込みが なければ途中で統括リーダーの首を挿げ替えます。

私は今までの人生で仕事だけは真面目に頑張って来ました。真剣に働かない人間は嫌いです。1年で間に合わなくても最低限 貴方の全力を出し切ってください。」


番場「しかし3人共大臣に任命する事になった場合 大臣の枠を増やすか今の大臣を外す事になる」


「ハハハ…第1の政策に目処がたてば その頃 大臣の枠は多分 空きますよ。

どうでしょうか中田議員…

予算は出します…第1の政策チームも いずれ解体しますが大勢の議員さんを貴方が使えるんです。やれますか?」


中田「総理…例えば第1の政策チーム以外の議員に協力を求める事も許可していただけますか?」


「ほ〜う…なるほど~」

思考が似ている為 ある程度は 気づく


「第1の政策が最優先事項ですから 勿論許可します。例えば私でも使っていいです…ハハハ

いや〜良かった…前回 所有者不明の豪邸を半額で売るとか言ってましたから あの時は

シバこうかと思ってました。」


中田議員が スーツの内ポケットから黒縁メガネを出し かける

ゆっくりと顔を上げる


中田「大変恐縮ですが私も総理に似ている部分があると思ってました…しかし1つだけ違う事があります…」


中田議員が 未だ顔を上げる事なく話す総理の顔を下から覗き込む

突然の中田の行動に慌てる


「う…な…何をする…や…ヤメてくれ…」


中田は 真っ直ぐに視線を合わせてきた


番場「なんだ…コイツ…視線を合わせられるのか…総理が苦しんでるぞ」


堀田「えっ… どう言う事?

眼鏡を かけてから少し雰囲気が変わったような…」


「た…助けてー コイツ 無理矢理 私と視線を合わせようとしてくる〜 パワハラだ〜」


中田「クックック…ハァ〜ハハハ」


「まさか… コイツ…バイクに またがったり

パズル的な事で もう一人の闇中田が出てくるタイプのキャラだったのか!」


番場「何! そんな奴がいるのか?

ダメだ…総理が完全に押されている」


堀田「いや…待って番場さん…

総理も反撃しそうよ」


「クッ…そ…そんな目を合わせられる くらいでオレに勝ったと思うなよ~それくらいオレだって」


堀田「あっ…違った…負け惜しみだ…」


番場「確かに中田議員の雰囲気が変わった気がする」


中田「クックックック…総理…私は これで当選したんです。」


「ず…ズルいぞ…そんな設定…オレが欲しかった…裏切り者」


中田「私は総理と違い目を合わせられる。

何故ならば この眼鏡を かける事によって 度数が強すぎて周りが ボンヤリとしか見えないから! 緊張が和らぐんです…」


3人は ガクッとなる…

雰囲気が変わったのは眼鏡をかけ見た目の雰囲気が変わっただけ…


中田「分かりました。

私が残り1年以内に第1の政策を完了させます。約束は守って下さいね…総理…私は大臣になります!」


普段オドオドしている中田議員だが目標が決まると一直線に突き進む男

そして発言とは裏腹に彼は野心家だった。



総理公邸で4人が馬鹿な話を している頃

佐藤副総理公邸にも1人の議員と秘書が訪れる


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