第63話ビジョン

公邸内廊下を歩く番場

声をかけられ立ち止まる


「おはようございます番場さん」


番場「誰だ?貴様は………………………

冗談だ…なんだ…心境の変化ってやつか?」


声をかけたのは1週間ぶりの仕事復帰

堀田秘書…以前は眼鏡と長く綺麗な髪が特徴的だった彼女が バッサリと番場より短い

ショートボブになっていた

眼鏡も黒縁から金縁に変わっている…

化粧も以前より若干 濃くなっている…


堀田「長いお休み ありがとうございます

そして ご迷惑おかけしました」


2人で総理プライベートルームに向かい歩く


堀田「しっかりリフレッシュして来ました…フフフ」


堀田の左側を歩く番場が気付く

彼女の左薬指から指輪が外されてる事を…

途端に番場は よろめく


番場「まさか お前が そんなに馬鹿で 分かりやすい女だとは…クックック」


表情を変えず声だけで笑う番場

堀田は急に慌て出し否定する


堀田「な…な…なに勘違いしてるんですか…私は前に進もうと…リフレッシュして新たな気持ちで仕事復帰…全力で働こうと思ってるだけです…」


番場「ほ〜う…なるほど~クックック

愚かな簡単な女と言う事だな クックック」


堀田「全然違いますから…」


番場「顔が少し赤いようだが まぁ気のせいか…クックック」


言い争ってる間にプライベートルームに到着 番場がカードキーでドアを開ける


室内には新聞を読む総理…正確には新聞で

隠しながら週刊誌マンガのグラビアアイドルページを見ているがカードキーの音に素早く反応して週刊誌だけ足元に落とし机で隠す

…が机の隙間から見え番場が 見つける


番場「貴様…どこから こんな無意味な物を手に入れた…今 どう言う状況か理解出来てないようだな…」


「あれ…なんだこれは…副総理が忘れて行ったのかも知れませんね~ハハハ」


番場「ほ〜う…すぐに確認してみよう」


スマホを取り出す番場


「あ〜すいませんでした…警備員さんから お借りしただけですよ~ハハハ」


(本当は警備員を利用して毎週代わりに買ってもらっている…闇のルート…そう言う事は嘘をつく総理)


番場「どいつもこいつも馬鹿ばかりだ」


振り返り

番場「おら〜もう一人の馬鹿は何してる…早く入ってこい! 今回の問題で政権危機…遊んでる暇はない」


ドアの向こうで チラチラ顔を出しては隠れる堀田


「あ〜お帰りなさい堀田さん」


その声で やっと入室する堀田


「うわ〜 がっつり切りましたね~ハハハ

似合ってますよ~ハハハ」


顔を真っ赤にしながら頭を下げる堀田


堀田「はい…お休みありがとうございました。もう完全復活してまいりました。へへへ」


メイクと眼鏡の変化には気づかない総理の前を無意味にフラフラ歩く


番場「クッ…この非常時に馬鹿が また1人増えた…なんて単純な思考回路なんだ…」


…………………………………………………


その頃 世間では

昨日の記者会見の記事やニュース番組での映像が流れている…

街角インタビューなどでは賛否両論がある…

暴言よりも対策本部の件は 説明責任があるのではないか と言う意見が多くみられる…

次の内閣支持率は下がると言う予想に変わっていた…


…………………………………………………


プライベートルームを出て国会の準備に移動する堀田と番場


番場「今回の件 早く火消ししないとマズい…正当な理由がない総理が圧倒的に不利だ…」


堀田「はい…分かっています…半分以上 私の責任です…来月の支持率次第では これを出します…」


堀田がスマホを番場に手渡す

そこには 直ぐにアップ出来るように

今回の暴言と対策本部の件は自分の為に総理が動いたと言う内容の証言映像が保存されていて番場が歩きながら見ている…


番場「確かに最悪の場合 これを出すしかない…しかし これを出すと お前は残念だが今回の責任を代わりにとり辞める事になる可能性が高い…」


堀田「はい…そこは覚悟してます…」


「ハハハ…それはダメですよ」

2人の後に いつの間にか追いつき歩く総理


堀田「キャッ」

番場「うわ〜びっくりした…ストーカーか…危うく蹴りコ◯スところだった」


「なんて恐ろしい発言…せめて一撃で仕留めて下さい…ハハハ

今回の件は私の責任です…私の権力がなければ出来ない行為ですからね…その映像が拡散されたとしても私は国会でも演説でも 否定出来ますから無駄ですよ…ハハハ」


番場「理解出来ん…自分の政権を守るのが第1だ…」


「それは今までの政治家のやり方です…

何か問題が起きるたびに逮捕されるのは

会計責任者や秘書ばかり…民間企業ならば代表 社長が責任をとり辞任するのが当たり前…もし今回の件が堀田さんの責任で あったとしても最初に責任を取るのは私なんです…それが社会人としての常識です…

異常なのは政治の世界の方です…」


堀田「で、でも今回の件は私にも責任があります」


「ハハハ…大丈夫 ここから私も気持ちを改め一生懸命頑張りますから取り返せますよ~ハハハ」


番場「しかし今回の件で支持率がどこまで下がるか予想がつかない…」


「大丈夫 大丈夫 私には まだ飛車も角も手駒にあるんですから…負けませんよ~

私にも45歳にして初めて明確な目標が出来たばかりなんで これからもサポートお願いしますね 2人共…ハハハ」


堀田「目標ですか?」

番場「なんだ?」


「ハハハ…それは まだ秘密にしておきます。

さあさあ今日も1日頑張りましょう…ハハハ」

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