五 計画を立てよう

 まり子は三田中代議士の身内ではない。まり子が小さかった頃、まり子の父は交通事故で他界し、三田中代議士の世話になった時期があった。交通事故でまり子の父を死なせたのは三田中代議士の愛人だった。


「もしかして、その愛人は、三田中玲香の母か?」

「ええ、そうよ。だから責任を取らせる時期を待ってた。なのに、母まで三田中の女になりさがって・・・。とはいっても私はそれなりの生活ができたけどね。

 最近、三田中は親子関係がない私を狙ってる。三田中玲香は実の娘だけど、私は父の娘だから・・・」


「それでアイジンか・・・。

 今も父親を死なせた者に制裁を加えようと思ってるんか?」

 俺は幼かった頃のまり子・マコが、加害者を殺したい、と言ってたことを、差し障りないように言い換えていた。言い換えたところで、まり子の思いは、以前のマコのままだろう。


「うん。思ってる。玲香の母の玲奈を同じ目に合わせたいと思ってる。

 リヨは自警団を結成していろいろの揉め事を解決してるでしょう。

 リヨ個人で私の揉め事解消に協力して欲しいの。

 三田中は個人秘書の新井慎司に収賄容疑を着せようとしてる。これをうまく利用できないかなあ・・・・」

 まり子は説明した。


 三田中は、三田中の個人秘書の新井慎司を自殺に見せかけて殺害するよう依頼してきた。三田中の政府への口利きで電力会社が送電網を完備し、電力会社は三田中に口利き料を払ったが、個人秘書の新井慎司か口利き料を請求したことになっていて、三田中は新井慎司の見せかけの自殺で、事件に幕を引く気なのだ。

 それらの経緯を知るまり子は、俺と同僚の臨床心理士・古田和志の監視を三田中から指示された。これをうまく使い、玲香の母の玲奈を嵌めるのだ。


「玲香の母の玲奈をどうやって新井慎司と会わせるんだ?」

「そんなことより私の部屋に来てねっ!お願い!

 あたしに火を点けておきながら、そのままにしないで!

 リヨを二十年も待ってたんだよ!」


「わかった!行って計画を立てよう!」

「リヨったら、もうこんなに計画を、立ててる・・・」

 まり子、いやマコは俺を抱きしめて体を撫でた。


「早く部屋へ行こう。家は昔のままか?」

「うん。昔のまま・・・。ママは三田中の家に居る。本妻も愛人も追い出して・・・」


「歩くか?タクシーか?」

「待ち切れないからタクシーだよ!」

 マコは俺の手を引いて野外ステージから降り、公園を出て通りかかったタクシーを止めて飛び乗った。

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