31話 奏音の本性
「はぁ~。おいしかったぁー」
お店を出て、二人でぶらぶら歩く。
「ですね。夏楓さんめちゃくちゃ食べてた」
「えへへ、ついつい。……でも、これじゃあ太っちゃうよぉ」
「いやいや、夏楓さんは瘦せすぎなくらいですから、少しくらい沢山食べたところで大丈夫ですよ」
そう言うとなぜか夏楓さんは大きく頬を膨らませる。
「あーのーねー、奏音くん。良いですか? 女の子っていうのはいつでもそういうことを気にしておかないとすぐ太っちゃうんだから」
「あー、たしかに。すみません夏楓さん。僕の配慮が足りませんでした」
ぷくっと膨れていた頬が、元通りになる。
「……まぁわたしには奏音くんがいるし、別に奏音くんさえ可愛いって思ってくれてればいいんだけどね」
「……夏楓さん。今、めっちゃ可愛い顔をしてます」
事実、頬を真っ赤に染めた夏楓さんはめちゃくちゃ乙女な顔をしていた。ここが外だというのを忘れて彼女を抱きしめたくなってしまう。
乙女な夏楓さんも、大人っぽいお姉さんな夏楓さんも大好きで、自分がどれだけ彼女に依存し、愛し、愛されたいと思っているかを改めて認識する。
「えへへ、そうかなぁー」
ああ、守りたいこの笑顔。独り占めしたいこの笑顔。
自然と彼女の顔から体全体に視線を向ける。本当にこんなに綺麗で素敵な人に出会えたことを奇跡に感じてしまう。
「ねぇ奏音くん、わたしの胸見てるでしょ?」
夏楓さんから爆弾が投下される。
「へっ? いやいや見てないですよそんな」
確かに、彼女のソレは世の平均よりは大きいと思う。服の上からも垣間見えるちょっとした膨らみ。けれど、それは大きすぎることもなく、彼女のスタイルの良さを支えているような、そんな感じだろう。
って、何を長々と語っているのだろうか……。
「そんなことより、この後どうしますか?」
「あ、話そらした。まぁいいけど。そうだねー、そろそろ本屋に行きたい!」
「わかりました、行きましょうか」
そうして僕らは一つ下の階にある本屋へ向けて歩き出す。
そんな時、夏楓さんは僕と繋いだ手を自らの胸に寄せながら僕の耳元で囁く。
「たくさん見ていいんだよ。奏音くんも男の子だし。別に私も奏音くんに見られるのは嫌じゃないから」
(あー、本当にこの人には敵わないなぁ……)
ダンス部センターのカノジョが甘々すぎる件。(仮) 凪村師文 @Naotaro_1024
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