30話 ”あーん”
☆☆☆ 奏音視点 ☆☆☆
「ねぇ、奏音くん。”あーん”したい」
「えっ。”あーん”ですか?」
「そう、”あーん”」
いきなり夏楓さんがそんなことを言ってくる。
「いやここ外ですし……さすがに恥ずかしいですよ」
「えぇー、いいじゃん別にぃー」
うーん、初デートだからか今日の夏楓さんは強気だなぁ。
「……わかりました。”あーん”お願いします」
「うん! じゃあ……はい、あーん」
夏楓さんがパスタを「夏楓さんの」フォークにくるくると巻いて、こちらに”あーん”してくる。
「ん……おいしいです」
あんまり意識せずに食べることができた。ここで躊躇していたら、夏楓さんに間接キスを恥ずかしがっていたと揶揄われるのはまず間違いない。
「じゃあ、僕も。はい、夏楓さん口開けてください」
「うん! ”あーん”」
いやわざと”あーん”を言わなかったんだけど。それをまんまと無駄にする夏楓さん。なんか”あーん”って言うと、変に意識しちゃうじゃん。
”あーん”って言ってそのまま口を開けたままこちらを見る夏楓さんは、何故だかとても可愛く見えた。
「んん~。おいしぃー」
マジでおいしそうに食べるよなぁ夏楓さんって。思わずウェイターさんもこっち見てるし。おいしそうに食べる夏楓さんを見て嬉しそうにしている。
こういう夏楓さんも好きだ。なんというか、いるだけで誰かを幸せな気持ちにさせることができる、そんな人。抽象的な表現にはなるけど、素敵だなぁーって思う。
「あの、夏楓さん。もう一口いかがです?」
「! さっきあんなに恥ずかしがっていたのに……まぁもらうけど」
「いや、あんな幸せそうに夏楓さんがするので、もっと幸せな気分にさせてあげるのが彼氏である自分の務めかなぁーって」
「ん……。何それ、急にお堅い感じ。ふふっ、奏音くんは、たまに素直じゃないなぁ~」
「……そうですかね」
苦し紛れの言い訳。本当は夏楓さんの嬉しそうな表情をもっと見たいだけだった。
(ほんと、会うたびに、話すたびに、僕、夏楓さんのことどんどん好きになってる……)
それからも、この流れで終始お互いに食べさせあって、終わりには少しやりすぎたなとお互いに笑いあうのだった。
ちなみに、おいしそうに食べてくれたお礼として、夏楓さんに、食後のデザートとしてお店の方からティラミスがサービスされた。
☆☆☆
書きながら思ったんですけど、皆さんって
パスタorスパゲッティ
どっち使います?
もしかして、細かく見れば、この二つって何か違いがあったりするのかな?
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