22話 ふてくされている夏楓さん

 「ぶーぶー」


 エレベーターを降りても、夏楓さんの顔は真っ赤だった。いきなりキスをされたことで、どうやらふてくされているようだ。


「夏楓さん、あの店好きですよね?」


 僕は『GV』という看板を掲げたお店を指さす。世間でも人気のブランドで、可愛い系というよりかっこいい系の服を扱うお店だ。つまり、かっこいい系を好み、かつスタイルの良い夏楓さんにはうってつけのお店というわけだ。現に、夏楓さんの普段着のいくつかは『GV』で買ったものらしい。


「そうだけど……。ぶーぶー」


 可愛らしく頬を膨らませて、不満顔をする夏楓さん。可愛い。


「夏楓さん。さっきのはさすがにやりすぎました。どうしたら機嫌を直してくれますか?」


 いきなり彼女にキスをしたことを謝る彼氏。客観的に考えれば、自分はなにをしているのだろうかと馬鹿らしく思ったり……。


「ぶー。奏音くんの大好きな可愛いくて綺麗な彼女さんは、手を繋ぐことをご所望です」


 可愛いお願いだこと。思わず笑みがこぼれてしまう。


「……。承知しました、僕のお姫様。どうぞこちらを」


 そう言って僕は夏楓さんに自分の右手を差し出す。


「ん……」


 やがて、大好きな人の小さな白い手が重ねられる。その手はしっかりと僕の右手に重ねられ、自分の指を僕に絡ませようとする。


「じゃあ、行きましょうか」

「……うん」


 周りからバカップルと言われようが構わない。僕は夏楓さんのことが大好きで、おそらく逆も然りなのだから。僕たちは僕たちなりに毎日お互いに恋をし、お互いの恋心を馬鹿みたいなことで確かめ合い、笑いあう。


「夏楓さん、僕に夏楓さんのコーデを選ばせてくれませんか?」


 お店に入り、しっかりと僕の手を握りながら、隣で楽しそうに服を物色している夏楓さんに僕は問う。


「えっ?」

「せっかくのデートですし、夏楓さんの服を選ぶのに前から憧れていたので……」

「……ふーん。しょうがないなぁー。優しい彼女さんは許可をします!」


 何故か胸を張って言う夏楓さん。でも顔は満更でもない表情をしていて。本当に、この人は可愛すぎる。


「えへへ。奏音くんはどんな風に私を彩ってくれるのかなぁー」




 ☆☆☆


 お久しぶりです!

 しばらくお休みさせていただいていましたが、また更新頑張ります!

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