初デート編
18話 初デートの朝
そして、とうとう初デートの日がやってきた。珍しく、スマホのタイマーでセットした時間にしっかりと起きて顔を洗う。
「おはよう、奏音。今日は夏楓ちゃんとデートだっけ?」
「うん」
「そう。じゃあ私も身だしなみのチェック手伝ってあげる」
リビングで緑茶を飲みながら、朝の報道番組を見ていた母さんが言う。
「えっ、いいよ別に。自分でできるし」
「ちゃんと髪がはねてる人がそんなこと言えるかしら」
母さんが僕の髪を見ながら言う。
「えっ、嘘。さっき直したのに」
「ほら、いいからこっち来なさい」
「……うん」
洗面所に連れていかれて、母さんに髪をいじられる。さすがと言うべきか、櫛を扱うのが上手だ。
「初デートなのに、恰好悪い姿を見せたら夏楓ちゃんに失礼でしょ。それに、夏楓ちゃん、あんな美人さんだし」
実は一度だけ母さんに言われて、夏楓さんを家に招待したことがあって、夏楓さんを見た時の母さんの驚きようったら。
「そうだね」
「はい、できた。服は大丈夫?」
「うん、昨日のうちに決めてあるよ」
「わかった。朝ご飯作っておくから着替えてきなさい」
「はーい」
今日の朝ごはんは、及川家特製のイングリッシュマフィン。二枚のマフィンの間に、ハムを入れ、ブラックペッパーとマヨネーズをかける。大好物だ。
そんなこんなしているうちに、待ち合わせの十時が近づいてくる。場所は駅前の大広場。家から歩くと十分はかかるので、念のためにそろそろ出るべきだ。
最後に鏡の前で身だしなみの最終チェックをして、家を出た。
四月の終わりとは言え、結構暑い。汗は出ないけれど、生ぬるい風が頭をぼっーとさせてくるのだ。
家から駅までの道に、高速道路の上を渡る橋を通る。下から無数の風を切る音が聞こえ、心地よい。
やがて駅前に着く。待ち合わせ場所に目を向けたとたん、僕は息をのんだ。
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