10話 枕は枕でも、ただの枕ではない

 頬にすべすべで柔らかい何かを感じる。それはあったかくて。思わず頬ずりをしてしまう。


「あ。もー。なに頬ずりしてるのかなぁ?」


 ん。聞いたことのある綺麗な声が聞こえる。気のせいかと思い、再び睡魔に身を委ねようとしたとき、頭に人の手の感触を感じて目が覚めた。


「ん。起きた。おはよう奏音くん」


 ああ。いい笑顔。寝ぼけている頭でどうでもいいことを考える。


「あ。あ。あー」


 そこで僕は気付く。この素晴らしい「枕」が愛する人の膝であることに。


「ふふっ。私の膝枕は如何かな?」


 小悪魔な笑みを浮かべて夏楓さんは僕を見おろす。


「……最高です」


 膝に頬ずりしていたなんて恥ずかしくて、夏楓さんの顔が見れない。


「良かったぁ。にしても本当、可愛い寝顔だったなぁ。可愛すぎて何度も頭なでなでしたの気づいてた?」

「えっ。そうだったんですか」

「うん。好きな人の寝顔を間近で見れて楽しかったなぁ」


ああ。そんなこと言われたら、もっと好きになちゃいそう。


「夏楓さん。膝枕ありがとうございました」

「うん。いつでもやってあげる」


 そのうちに下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。


「……帰りましょうか」

「そうだね」


 ただイチャイチャしてこの日の甘い時間は過ぎていった。

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