10話 枕は枕でも、ただの枕ではない
頬にすべすべで柔らかい何かを感じる。それはあったかくて。思わず頬ずりをしてしまう。
「あ。もー。なに頬ずりしてるのかなぁ?」
ん。聞いたことのある綺麗な声が聞こえる。気のせいかと思い、再び睡魔に身を委ねようとしたとき、頭に人の手の感触を感じて目が覚めた。
「ん。起きた。おはよう奏音くん」
ああ。いい笑顔。寝ぼけている頭でどうでもいいことを考える。
「あ。あ。あー」
そこで僕は気付く。この素晴らしい「枕」が愛する人の膝であることに。
「ふふっ。私の膝枕は如何かな?」
小悪魔な笑みを浮かべて夏楓さんは僕を見おろす。
「……最高です」
膝に頬ずりしていたなんて恥ずかしくて、夏楓さんの顔が見れない。
「良かったぁ。にしても本当、可愛い寝顔だったなぁ。可愛すぎて何度も頭なでなでしたの気づいてた?」
「えっ。そうだったんですか」
「うん。好きな人の寝顔を間近で見れて楽しかったなぁ」
ああ。そんなこと言われたら、もっと好きになちゃいそう。
「夏楓さん。膝枕ありがとうございました」
「うん。いつでもやってあげる」
そのうちに下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。
「……帰りましょうか」
「そうだね」
ただイチャイチャしてこの日の甘い時間は過ぎていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます