孫の憧れ

ゆる弥

孫の憧れ

 今年はカツオがよく釣れる。

 毎日朝早くに船で出て一本釣りに行ってんだ。


 漁師としてもう五十年になる。

 ワシャこれ一本で息子と娘を育ててきたんだ。

 息子は継がないと言う。


 今日は孫が遊びに来る日だから気合い入ってんだぁ。夜のうちから出て釣ってきた魚ぁ、今港に上げてたんだ。


「じぃちゃーん!」


 遠くで蒼太が手ぇ振ってる。手を振り返したらニカッと笑ってら。あの笑顔がたまんねぇんだよな。


 船をとめて陸に上がると駆け寄ってきた。


「よく来たな。家に行って美味いもん食おうな?」


「やったー!」


 家に戻って昼飯を作る。

 カツオを捌くのは俺の役目だ。

 飯とか汁物とかおかずはバアがやらぁな。


 綺麗に柵に切って表面を炙る。

 カツオはタタキがうめぇのよな。

 

 皿に盛り付けてだすと、蒼太が目を輝かせた。


「ボク、将来じいちゃんみたいになりたい!」


「何でだ? 漁師は大変だぞぉ」


「だってめっちゃカッコイイもん!」


 ワシは感情が溢れるのを必死でこらえたんだ。

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孫の憧れ ゆる弥 @yuruya

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