第53話 ウインク
「はー、綺麗だったね」
ホテルに戻ってきて、部屋の鍵を開ける時まで繋いでいた手はそのままボスッとベッドに腰掛けた桜城さんに引っ張れるまま同じくベッドに乗っかった。
さっきあんな事を言われたせいか、変に意識してしまう。
付き合い始めたのはつい昨日の事で、桜城さんだってそれは無いみたいな事も言ってたのに。
「ん?なに?」
チラッと見ると、甘ーい微笑みでこっちを見つめる桜城さんと目が合った。
「いえ、あの、綺麗、でしたね?」
意識しすぎて変なカタコトな言葉になってしまう。
「ははっ。どしたの」
「な、なんでもないんで、です」
「でです(笑) なんでそんなカミカミ?」
そんなの!
「緊張してるからに決まってるじゃないですか!」
訊かれて一緒の部屋でもOKって言ったの私ですけど!
でも!
二人っきりの部屋にベッドがあって意識しないでいられるなんて無理。
ずっと繋いでるこの手の中だって手汗がヤバくてどうしようとか思ってるのに。
なのに、私がこんなになっているのに桜城さんは笑いながらこっちを見てるし。
ベッタベタの手だって離してくれないし。
モテモテ人生の桜城さんはこんなの慣れてるかもしれないけど、こっちは殊恋愛に関しては初心者に毛が生えたようなものなのに。
きっと真っ赤な顔で訴えると、桜城さんはふにゃりと眉を下げ
「おんなじだ」
と苦笑した。
「うそ」
「なんで嘘(笑)」
「だって、普通に見える」
「そこなー。よく言われる。でも俺だって人並みに緊張くらいするわ!
・・・付き合いたてのカノジョと二人っきりの部屋なんて特にね」
桜城さんが言うけれど台詞の最後にウインクが飛んできて、その気障な仕草にやっぱり嘘っぽいって思ってしまう。
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