第52話 傍から見れば
桜城さんの綺麗な顔が近付いてきて、目を閉じると、チュ・・と唇が重なる。
少ないとはいえ人通りがあるところでこんな事するなんて普段ならありえないけど、桜城さんの告白に胸がいっぱいで、拒絶するなんて選択肢は全然浮かばなかった。
桜の花に酔ったって事で、通行人も許してくれるよね?
「・・・あーもう。ホテル帰りたくなった・・・」
何度か啄ばむような可愛いキスをしてから私を放した桜城さんは、苦笑しながらそんな事を言った。
桜並木はまだ暫く続いていて、幻想的な風景が浮かんでいる。
だけど、やっぱり男の人って景色にはそんなに興味ないのかな?
「・・・飽きちゃいました?」
もう少しこの雰囲気に浸っていたかったけど、無理につき合わせるのもと思う。
こんな景色を見れただけでも感謝しなくちゃ。
「いや、ここじゃこれ以上は出来ないなーって・・・。
もっとちゃんと抱きしめたいなって思っちゃって」
「!」
あのぅ。
面と向かってそんな事言われても、私、どうしたらいいんですか・・っ?
ぽかんと口を開けてる様はさぞかし間抜けだろうけど、だって、言葉が出ない。
「・・・ヒいた?」
「・・・」
言葉が出ない代わりに、やっとの思いでふるふると首を振ると、桜城さんはふわっと柔らかくと笑い、また私の手を引いて歩き出した。
「まあ、せっかく来たからもう少しだけ歩こうか。薫・・・逃げないでしょ?」
「・・・逃げないですよ。
私、今までだって桜城さんから逃げた事なんて一度もないでしょう?」
「ふっは!そうだった。薫向かってくるもんな(笑)」
「負けず嫌いなんですよ。知ってるでしょう?」
「知ってる。そういうとこも好きだし」
「っ 不意打ち、やめて下さいっ」
「思った事言っただけだし(笑)」
「もう!私が赤くなるのがそんなに嬉しいですか」
「うん(笑)」
傍から見ればバカっプルな会話なんだろう。
けど、浮かれた私達はそんな事には一切気付かず、散り際の桜並木を手を繋いで歩いて行った。
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