第54話 離れない手

「嘘だと思ってんでしょ(笑)」

「う・・」


じーっと見ていると、ふふ、と笑う。


「ホントに緊張してんだけどな。

手汗ヤバイって思ってんのに、離すタイミングが分かんなくなるくらいにはさ」


そして、繋いだままの手を持ち上げて「べったべたで気持ち悪いだろ」って困った顔をした。

手汗に関してだけは私の手の方がきっとヤバいと思うけど。

でも・・本当、なのかも。


「こっちもホラ」


反対側の手を開いて見せるとライトが反射して少ぉーしキラキラしている。


「手汗・・・半分は私のですよ多分。私もどうしようって思ってました。

二度と手を繋ぎたくないって思われてたらヤダなあって」

「二人して同じ事思ってたわけだ(笑)」

「みたい・・」

「・・・離す?」


お互い苦笑して、私の顔を覗き込みそんな事を訊くくせに強く握られる手。

そのまま少し引っ張られて。


「桜城さ・・・」

「ん・・」


ゆっくりと覆い被さってきた桜城さんが私の唇を奪う。


「・・・っ」


優しく触れて、そっと離れて、また重なって。

唇の間から入ってきた舌を受け入れて。

小さく聞こえてくる水音が少しずつ理性を溶かしていく。


「・・っはあ・・・っ。

・・・しない、って言ったけど・・・。やっぱ、撤回してもいい・・?」


至近距離で見た桜城さんの瞳には初めて見る色があって・・・

私はその言葉に頷いた。

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