第49話 またしても取り上げられたグラス
「・・・・」
暫く美味しく食べて、サワーも半分は飲んだ。
けど。
どうして私ってこうなんだろう?
最初は美味しく飲んでた筈なのに。
アルコールの苦さだけが舌に残って、正直言えばもう飲みたくない。
でも、ご飯の合間には水分は欲しい。
ジレンマの中ちびちびグラスに口を付けていると、桜城さんが手を伸ばしてきて、スッと私のグラスを取り上げた。
「何回も言ってんじゃん。マズくなったら飲まなくていいって。
アルコール、弱いんじゃなくて嫌いなんだろ?
無理に付き合わなくていいよ。
目の前で美味そうにメシ食ってくれるだけでいいからさ」
「桜城さん・・・」
「仕事飲みの時、無理して飲んでたのも健気で可愛くてよかったけどね(笑)」
俺と二人きりの時は無理しなくて良し!
グビグビっと一気に飲み干した桜城さんはそう言って、店員さんにジンジャエールを頼んでくれた。
くし型に切られたレモンが浮かぶジンジャエールの甘さと爽やかさが口に残ったアルコールの苦さを払拭してくれて、ふっと息をついた私を笑顔で・・というか今にも吹き出すのを我慢してる顔で見てる桜城さん。
「美味い?(笑)」
「そんな顔するくらいなら、もう思いっきり笑ってくださいよ!」
「いや、だって(笑) あからさまに息つくからさ(笑)」
「もう!」
「で、美味い?」
「・・・おいしいです」
「っクク! そりゃよかった(笑)」
ふっはー、と暫し笑った桜城さんは3杯目のビールの残りを飲み干し、「じゃあ、食っちまおう」といつもの顔に戻る。
料理を取ろうと下向いた一瞬にまたちょっと吹き出したのに気付いたけど、とりあえず今は言わないでおく。
だって、言った瞬間絶対また吹き出しちゃうだろうし。
桜城さんがでっかい一口を口に入れたのを確認して、私も箸を持ち直した。
・
いっぱい食べる桜城さんにつられて私もいつもより沢山食べて、頼んだ料理があらかた無くなった頃、桜城さんがすっと身体を寄せて囁く。
「食い終わったらさ、腹ごなしに散歩して帰ろうか。
夜桜、ちょっと見たくね?」
断る理由なんかひとつも無い。
「見たいです」と頷くと、くしゃくしゃっと前髪を撫でられた。
彼氏になった桜城さんは、それまでだって優しかったけれど、その優しさも比較にならないくらいとても甘くて、ココロもカラダも全部トロリと溶かされてしまいそうだった。
・
※前話が短いので本日は2話更新しております。
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