第45話 ちょっと意地悪



少し休んでから食事に出ようとベッドに横になる桜城さん。

特にする事も無いからと私も同じようにベッドに上がった。

ぽふっと身体を倒すと、よく効いたスプリングが丁度良く受け止めてくれて気持ちいい。


「このベッドいい感じですね。目を閉じたらすぐ寝れちゃいそうです」

「本格的に寝たら晩メシ食いっぱぐれるぞー?」


深呼吸しながらちょっとだけ目を閉じると、すぐに桜城さんの意地悪な言葉が飛んでくる。

こういうノリはずっと変わらない。

男性社員にはもっとキツイけど(笑)


「それは嫌です(笑)」


ぱっと目を開けて隣のベッドを見れば、立てた肘に頭を乗せ微笑みながら私を見ている桜城さん。

一瞬前には意地悪言ってたくせに、何ですかその甘ーい表情は。

そんなに見つめられると、心の方が全然休まらないんですけど・・・っ

顔が赤くなっていくのを誤魔化すために身体を起こす。


「起きとかなきゃ本当に寝ちゃいそう!」


ぱんぱんっと両手で頬を叩き、もし赤くなっててもこれのせいにしてしまえ!とばかりに更に強く叩く。


「ちょ(笑) すっげ痛そうな音してるけど!」

「うっ!?」


あまりに激しくやりすぎたのか、桜城さんが慌ててベッドから飛び降り私の両手首を掴んでくる。

いきなりの至近距離に変な声は出るし、急接近したせいで首から上が全部熱いし!


「ほら、真っ赤になってんじゃん(笑)」

「あ、のっ・・桜城さ・・・!」

「可愛い顔が台無しー」

「あの」

「痛くね? 大丈夫?」

「桜城さん」

「撫で撫でしてやろっか?」

「な・・・!?」


緊張の中何か言おうと口を開いてもことごとく上から被せられて、全然次の言葉を言えない。

そこで勘の鈍い私もやっと気付いた。

この人、ワザとやってる!

私がドキドキしてるの分かってやってる!なんてこと!

至近距離にある顔をみればなんかニヤニヤしてる気がするし。


「っも、桜城さん!」


叫ぶと「はははっ」と爆笑する。なんて人だ。大好きだけど!


「なんですか、もう!」

「いや俺だって、最初は本当に心配してたんだよ?でも俺が近づいたら、どんどん真っ赤になってくし」

「分かってるならからかわないで下さいよ!まだ全然慣れてないんですから」

「んー、早く慣れて?こういう事もいっぱいしたいし・・・ね?」


ちゅ、と一瞬だけ唇が重なり、そのまま優しい瞳に見つめられてもう、私の頭からは湯気が出そうになった。

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