第41話 笑いのツボ


呼ばれるたびにほっぺを赤くする私を面白がって名前を連呼する桜城さんの太腿を時々ぺチンと叩きつつ、こんな風にゆったり旅行気分を味わうのは初めてだなー・・と感慨深く思う。

出張の時は新幹線に乗ってもパソコンを開いてる事が多いから、ご飯は大抵コンビニおにぎりとかで済ましてゆっくり駅弁なんて事も無かったし。

修学旅行や友達と旅行なんてのもあったけれど、その時はもう着くまでテンション高くしゃべり倒してたような気がするし、そういえば元彼とは旅行なんてした事無かったな・・・。

お互い学生で、先立つものが少なかったというのもあったけど。

ちらっと桜城さんを見れば彼も私を見ていた。


「な、なんですか?」

「いや? 考え事する上目遣いも可愛いなーと眺めてただけ(笑)」


ただでさえイケメンの桜城さんに、更に微笑をたたえながらそんな事を言われた日には・・・。

私、もう溶けちゃってもいいですか。


「上目遣いって///」

「してたよ? 癖だよな。会社でもたまに見るし」

「うそ・・」


上目遣いなんて、マヌケ面以外の何者でもないでしょ。

そんなのを晒してたなんてっ!


「なんか考えてるなーって、分かりやすかった(笑)」

「・・・もう。声掛けて下さいよー。 恥ずかしい・・・」

「可愛いって言ったじゃん(笑)」


もう、この人ってば・・・///


「また赤くなる(笑)」

「桜城さんのイケメン攻撃のせいですっ」

「イケメン攻撃って(笑)」

「桜城さんのそのイケメン顔、女子には凶器ですから!」

「薫だけがイケメンだと思ってくれたらそれだけで良いんだけどね」


とかなんとか言って。


「面倒な顧客とかに爽やか微笑み攻撃してるの知ってますよー?

自分の顔偏差値熟知してますよね?」

「はは。」

「笑って誤魔化さない!」


その作り笑いだって可愛くてカッコイイけど!!


「ははっ(笑)」

「・・どこにそんなツボがあったんでしょう」

「っあははっ! やめて(笑)」


・・・笑いのツボが浅いのは知ってますけど。

そのツボがどこにあったのかは時々分からないんですよねー?

会社でも話してていきなり笑い出して驚いたり。


「も・・・薫おもしれ(笑) 強気になるとほっぺ膨れんの。可愛すぎて笑える(笑)」

「っ!!!」


ちょ・・!

なんてこと!!!

どうして変なトコばっかり見てるんですかこの人は!

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