第39話 厳しかった先輩
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私が知ってる先輩は細いフレームの眼鏡をして、ストレートの髪を後ろで束ねてる
いかにも『仕事できます!』的な外見で厳しさをより際立たせていたような気がする。
本社は服装自由で、派手ではなくてもそこそこ華やかな服を着てくる人もいるというのに、彼女はいつも地味な色のスーツばかりで、オレンジ色なんて明るい色を着てるところなど終ぞ見た事が無かった。
だから見た目のままちょっと怖い人だと思っていたのに。
ゆるふわウェーブに白ワンピースなんて・・甘系の服装の彼女にただただ驚愕するばかりだ。
眼鏡をしていない彼女は
「あんなに優しく笑う人だったんですね・・・」
大野部長に気付いたんだろう彼女は『ふわり』という言葉以外当てはまらないくらいに優しい微笑みを浮かべながら、小走りに大野部長に近付いていった。
大野部長が彼女に何かを言って荷物を受け取ったと同時
「大野さん」
いい雰囲気を邪魔するように桜城さんが大野部長に声を掛ける。
「ちょっと、桜城さんっ」
なんでわざわざ声を掛けるんですか。
きっと久しぶりに会うんだから邪魔しちゃ悪いでしょ!
ぐっと繋いだ手を引っ張ったけれど時既に遅し。
「おー、桜城くん」
桜城さんの声に気付いた大野部長が彼女の手を握ったまま振り向いた。
「あ・・っ!」
それと同時、彼女の私達に気付いた瞬間の反応といったらこちらが照れてしまうくらい可愛らしくて。
思わず笑顔になってしまう。
「齋藤さん、お久しぶりです。××支社の小枝です。新人研修ではお世話になりました」
「お、おおおおひさし、ぶ、ぶり・・です。こここんにちは」
挨拶をすると、大野部長の後ろに隠れてかーなーり動揺しながらも挨拶はきちんと返してくれるやっぱりちゃんとした先輩。
その彼女の視線が繋がれてる私達の手にある事に気が付き、ぱっと大野部長を見上げる。
彼女の視線に大野部長が私達を見ながら頷いた。
大方あの桜城部長に彼女が?的なやり取りなんだろうなと推測する。
あー、一応そうです。
数時間前になったばかりのホヤホヤ彼女ですけども。
「桜城くん、旅行?」
「そうです。そちらは彼女と水入らず?」
「ふふ。うん。久しぶりにちゃんと会えた」
「お互いいいGWになるといいですね」
「電車の時間だから」と手を振る桜城さんに倣い、私も二人に会釈をして歩き出す。
旅の始まりに素敵な再会。
楽しみだった旅のワクワクが更に増えた。
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