第36話 朝イチダッシュ



そして、朝イチから百貨店の下着屋さんに走る私。

開店と同時に店に飛び込み、プリントアウトした紙を手に「これ!これのD65ありますか!?」とカウンターに詰め寄るアラサー女はきっと怖かっただろう。

ごめんなさいね、可愛い店員さん。

私の剣幕に多少引き攣りながらも笑顔で対応してくれた彼女にお礼を言って、急いで家に戻り買ってきたばかりの下着をバッグに詰める。

これで荷物はOK。あとは自分の準備だけ。

朝食にとついでに買って来たサンドイッチを食べて、メイクを直す。

会社でのメイクは基本ブラウン系で抑え目だけど、今日は少しだけ色味を足して。

服は、移動時間が長いからと楽なものを選んだ。

あんまり気張ってると思われるのも恥ずかしいし。

淡いパウダーピンクの、バスト下で切り替えが施されたミニワンピに紺の7分丈スキニー。

その上に白のパーカーを羽織って出来上がり。

待ち合わせはマンションのエントランスだからギリギリに出ても間に合うけど、社会人のマナーとして10分前に出た。


会社に行く時よりも大きな荷物がちょっと気恥ずかしい。

昨日彼氏になったばかりの人と3泊4日の旅行なんて普通じゃありえないけど、でもそんなのは気にならないくらい、もう、好きで。


『つまりは、俺は薫の事が好きなんだよね。

可愛い部下ってだけじゃなくて、一人の女として』


数時間前の桜城さんの言葉を思い出して、エレベーター前でひとりキャー!となる。


「はあ・・・っ」


ヤバい・・・。

こんなんで4日間も二人きりなんて、私、途中で熱が上がったりしないだろうか。

真っ黒なスマホの画面に自分の顔を映して見れば、なんだか年甲斐も無くオンナノコな顔をしていた。

4人も乗ればギュウギュウの小さなエレベーターに一人乗って、降りるまでの数十秒で旅行中の事を想像したらまたキャーッとなり、心拍数が半端なく上がって。


「っ桜城さん・・・!」


エントランスで彼の姿を見つけた時には、その素敵加減に倒れそうになった。

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