第34話 中毒性
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桜城さんが書き出した観光地を結局半分くらい削り、ゆったり目のスケジュールを組んだ。
念のための、時間が余った時の候補としてメイン近隣1、2箇所をメモしてあるのは
時間の無駄が何より嫌いな桜城さんらしいところ。―――往生際が悪いとも言う。
『駅で観光マップをゲット!』なんて書いてあるところもちょっと楽しい。
そんな風にちょっとした小ネタも挟み込んでレイアウトし、プリントアウトされたのは、昔、遠足や修学旅行で配られたような『旅のしおり』。
こういうのを渡されると
「先生、おやつはいくらまでですかー」
なんてね、言いたくなるよね(笑)
「おやつは500円までと決まってますよー。ちなみにバナナはおやつじゃありませんからね!」
桜城さんもノってくれて、しばし先生と生徒ごっこで笑い思い出も語り合う。
「絶対それ金額オーバーだろ!っていうヤツいたよなー」
「そうですよね!あとポテチとかね、粉々になるの目に見えるでしょ?とか!」
「薫は規則とかそういうのちゃんと守るタイプだった?」
「桜城さんもでしょう?」
「見つかったらとか考えちゃって出来なかったなー。
でも菓子はいっぱい持ってたヤツから貰いはした(笑)」
「ああ、私もです。証拠隠滅って言ってた!」
遠足あるあるはどの年代もあんまり変わらない。
こういうのも楽しい。
でも時間はもう夜中で、明日からの予定も詰まってる。
「はー笑った、笑った。じゃあ予定も組んだし、解散して荷物の準備しますか」
「はい」
3泊4日だとそれなりの荷物。
朝イチで買い物にも行かなきゃだし。
「薫の仕事着じゃないカッコ、楽しみにしてる」
こんな事言われたら、ちょっと頑張りたいし。
「・・・ホントはもうちょっと一緒にいたいけど、明日からずっと一緒だから我慢する」
「また10時間後にね」って玄関先で抱き寄せられて、チュ、と優しく唇が重なる。
今までだって優しかったけど、彼氏になった桜城さんは吐息だけで溶かされそうなくらい甘い。
いつの間にか手を伸ばしてしまう甘いチョコレートのような中毒性で、私はきっとトロトロにされてしまうんだ。
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