第32話 出発は突然に
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宿泊場所やルートなんかは桜城さんが決めてくれるというので、そこはおまかせした。
「・・・部屋、ツインとシングル、どっちがいい?」
遠慮気味に訊かれたそれにも、「それも、おまかせします」と答えた。
桜城さんは「そっか」と微笑んだだけで、どう思ってるかは分からなかった。
でもだって、他にどう答える?
「シングルで」なんて、いかにも嫌がってるみたいじゃない?
だって、・・・もし流れでそうなったとしても、別にイヤじゃないし。
カラダに自信が無いから恥ずかしくはあるけど、そうなったらそうなった時だ。
せめてって事で、可愛い下着を買いに行こう。うん。
っていうか、私さっきからソウイウコトばっかり考えてる。
旅の目的は桜なのに!
パソコンを開いて良さげな宿や電車の時間を検索してる桜城さんの横で、私、ヨコシマな事ばっかり考えてる。
でもだって、仕方ないよね?
両想いだし。
二人ともいい大人だし。
――――「ここ、よくね?」
どうしてもハシタナイ方向に思考が向かっていた私に、不意に桜城さんがノートPCを見せてきて、慌てて思考を旅行に戻す事数回。
告白して、想いを確認し合って、キスした今日。
もうそうなりたいって望んでる自分を自覚して。
彼氏になった桜城さんの全部を知りたいと思ってる自分に気付いた。
暫くして桜城さんを見ると、さっきまで意気揚々とマウスを操ってたのに、今度は画面を見ながらうーんと唸ってる。
どうしたんだろう。
「・・・どうかしました?」
そっと近付いて画面を見てみるも、そっち方面に詳しくない私には何がなにやら。
すると桜城さんは眉毛を下げながら「出発、明日の昼とかでもいい?」と訊いてきた。
「はい?」
そりゃびっくりですよ。
「明日!?」
「明日、っていうか、もう今日だけど。
今日の昼の電車を逃すと切符も宿も取れないんだよね。車だと帰りで絶対渋滞にハマる」
ああ、よく見ればそれは新幹線の予約画面で、流石GWだけあって指定席バツ印ばっかり。
渋滞は・・・好きな人はいないよね。
桜城さんも嫌だから電車での移動を計画してるんだろうし。
辛うじてマルの付いてる時間は午後1時台の1本のみ。
・・・これなら新しい下着を買いに行く時間は辛うじてある。うん。
「大丈夫ですよ。予定が組み終わったら急いで仕度なきゃだけど(笑)」
「それ同じ(笑)じゃ、電車も宿も予約しちまうわ」
またパチパチとキーを打ち、3泊分の宿と電車の予約をしていく桜城さん。
・・・2泊のホテルはツイン、最終日の宿は同室で取ってあった。
自分でOKしたくせに、今更ドキドキしてきた。
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