第28話 お返事



真っ直ぐ真剣な瞳に見つめられて私も覚悟を決める。

けど・・・。


「泣きすぎて・・顔ボロボロなんで、このままでもいいですか・・?」


29歳なりの羞恥心は残っていて。

そっと、自分で濡らした桜城さんの肩口に寄りかかった。


「・・・いいよ」


嫌いな相手にこんな事出来る訳無くて。

桜城さんだって大人だし、私より恋愛経験だってきっとあるからそれくらい分かってて。

ぎゅっと抱きしめられた腕の中、隠してきた想いを告白する。


「・・・好きです・・・」

「うん」

「仕事できるところも、厳しいところも、やさし、ところ、っも・・・っ」


何故だろう。

ちゃんと言いたいのに。


「また泣く(笑)

今度は俺の方が嬉しくて泣きそうなのにさあ(笑)」


散々泣いて、止まった筈の涙がまた溢れ出して。


「全部、好き、です・・っ」


いろいろ、言いたいのに、これ以上言葉が出てこない。


「うん。俺も」


さっきと同じように背中をポンポンされて、髪を撫でられて。

でもさっきと違うのは。

ちゅ・・と、微かに、でも確かに、桜城さんの唇が私の耳に触れた。


「好きだよ、薫」


そのまま、桜城さんの唇が触れたまま低く熱のこもった声が吹き込まれて、身体が震える。


「桜城さ・・・」


そっと肩を抱かれて二人の身体が少し離され、じっと見つめられて、予感に胸がドキドキする。


「・・キスしていい?」

「・・・はい」


頷くと、驚かせないようにかゆっくり近づいてくる桜城さんに、私もゆっくり目を閉じた。




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