第27話 涙の染みwithファンデ



涙腺がバカになって、ボロボロ零れる涙は全然止まってくれない。

そんな私を桜城さんは「もー・・・(笑)」とか言いながら抱きしめ、赤ちゃんをあやすように背中をポンポンしてくる。


「こんな泣くほどビックリしたかー?っかしーなー」


ポンポンして、髪を優しく撫でられて、それでも涙は止まらなくて、桜城さんのシャツの肩口がぐっしょり濡れてしまった頃になってやっと私は少し顔を上げた。


「すみませ・・・シャツ汚しちゃいました・・」


涙の染みは自分でも呆れるほど大きく

うっすら肌色になってるのは透けた桜城さんの肌じゃなく、私の顔から落ちたファンデ。

別に化粧をしようがしまいがあまり代わり映えはしないけれど、毛穴とかは気になるお年頃で。

さすがにこんなに泣いた後で真正面に顔を上げるのは憚られる。


「うん、すっげえ冷てえ(笑)」

「!ご、ごめんなさ・・・」


慌ててスーツのポケットからハンカチを出そうとしたら


「べつにいいよ。俺の所為なんでしょ」


と笑いながらまた私を腕の中に閉じ込めた。

そして。


「ところでさ」


少し言いにくそうに続ける。


「嫌じゃないのは分かったけど」

「・・・? はい」

「薫が俺の事どう思ってんのか知りたいなーと思ってるんだけど?」

「う、 それは・・っ」


思わず顔を上げれば、たまに見る意地悪な笑顔。

これは・・・。


「・・言わなくても、分かってるじゃないですか///」


大体、告白されて泣くなんて、じゃなきゃ絶対無いのに。

けれど、言い返した私に桜城さんは苦笑した。


「さすがに? 反応でそうなんだろうなってのは分かるけどさ」

「・・・ほら」


別に今更言うのが嫌なんじゃない。

けど、こんな化粧も落ちてボロボロの顔ではちょっと・・・。とか思っていると。


「俺ね、仕事に関しては絶対の自信があるけどさ」

「はい」

「いやソコは返事いらねえから(笑)」

「・・・はい(笑)」

「っは、ヤベぇ。可愛いわ(笑)・・じゃねえ。あのさ?

いくら仕事出来ても、さすがに好きな女の気持ちにまではそうそう自信なんて持てねえのよ」

「・・・はい・・」


そっか・・・。

さすがの桜城部長でも、こういうことは同じなんだ・・・。


「・・・だからさ、ちゃんと薫の気持ちが聞きたいんだけど」




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